序
取り敢えず、道化師もののデータがサルベージできるまで、こちらの方をホイホイ行かせて頂きたいと存じます。
宇宙ものです。ロボットものです。やりたかったジャンルの一つです。
暇つぶしがてらの気楽な気持ちで、ご笑覧頂けると幸いです。
宇宙・・・・・・・・それは、人類最後の開拓地。
結構大昔、そんな出だしで始まった創作物のドラマが流行った事があったと、大きな図書館にでも行かない限り映像記録を閲覧することができないこの時代。
人類は夢の超空間移動法を実用化し、宇宙へとその居住圏を拡げていた。
説話も交えた記録によると、人口の充満した地球においてある日、『こんな地球にゃ住み飽きた!』と誰かが言い出し、『宇宙へ飛びだそう!』誰かが吠えるように応えたらしい。
『さあ行こう!さあ行こう!みんなで力を合わせ!』と、瞬く間に人々の間に宇宙へ飛びだそうとする空気が広がると、人々は口々に、『合い言葉は!』と挨拶代わりに連呼するのが一時期流行ったらしい。
その合い言葉は、今となっては記録として残っているのが鳥獣戯画的に動物が擬人化された言葉しかないため正確なことは分からないが、時代の空気に合った崇高な言葉であっただろうと学者の間では推測されている。
ちなみに記録に残っている当時のスローガンとも言うべき合い言葉だが、猫と犬と蛙とアヒルがめいめい鳴き叫ぶという訳の分からないものだった。
それはとにかく、地球を出て他の惑星を開拓しようと意気込んだ人類は、最初期は普通の噴射式推進機関による極超高速飛行によって惑星間を駆け巡り、太陽系を開拓していった。
太陽系の開拓が半分以上終了した辺りで、百花繚乱の如く様々な超空間飛行法が開発、発見、改良され、今度は太陽系外に生活圏を拡げていった。
超空間飛行法の中には、船体の前方の空間に存在するヒッグス粒子を人工的に除去して無質量の場を形成、そこに質量のある船体を前方向に落として飛行するフォーリンラブ航法(略称FD。フロッピーディスクの略ではない)などの意味不明な航法もあったと言う。
そして太陽系から数パーセク(天文の距離の単位、1パーセクで、大体3.26光年。㎞に直すと三十兆余㎞)まで生活園が拡がった時、今までの超空間飛行法のイイトコ取りしたような超空間移動法、Dnaが開発された。
Dnaは、俗にドライブナビゲーションシステムの略称とは言われているが、正確な事は全く分かっていない。
人類が宇宙へ生活圏を拡げてから不定期に発生が記録されている、宇宙空間で発生する時空震により、資料が散逸してしまったりしたからだ。
時空震については、発生のメカニズムから発生周期、被害範囲に至るまで原因も分からず、なぜ地球にいた時代に観測されなかったのかなど疑問も尽きない。
だが、原因は分からなくても、それは幾度となく厄災として人類に降りかかり、発生の度に記録が散逸、収集不可能な状態になったりして、断片的に地球時代へ歴史を遡ることはできるが、体系的にきちんとした形で残されている資料が少なく、推測混じりの資料だけで憶測するしかないというのが現状だ。
しかも、開拓時代特有の、過去のことより今、そして未来が重要だという時代の空気には逆らえず、資料の散逸に拍車がかかっている。
そのため、今となってはDnaの正確な語源は誰も分からなくなって久しい。
だが、そんな事は関係ないと言わんばかりに、人類は今日もDnaを使って宇宙を駆け回り、開拓に、物流に、移動手段にと活用し、その生活圏の拡大と繁栄を創り出していた。
そして現在、人類が拡がった開拓地を便宜上、古い順に区分けし、最新の第八開拓区が設立されて四半世紀が過ぎた。
最新の第八開拓区以外の人々はそこで子を産み、育て、死んで行くには充分な時間が経過しており、それなりに愛着や郷土心、ナショナリズムが育っていた。
そんな時代の宇宙の片隅、第七開拓区にほど近い第八開拓区の一角で、騒動が起きていた。
ちなみに、文頭のくだりは、略称でTNGとかDS9のシリーズがある人気のドラマの第一作、それのオープニングの日本語訳。合い言葉云々のくだりは、子供の頃聞いてインパクトを受けた歌で、どちらも子供の時の曖昧な記憶を元にしてます。。