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久しぶりに会ったショウは、昔と少しも変わっていなかった。東京の閑静な住宅街で、両親と三人で暮らしていた。
両親は息子のことをよく知っているように見えた。けれど、ショウが何を考えているのかとなると、ほとんど何も知らないようだった。
三歳年上の姉は、十六歳で家を出て、結婚していた。
「ただ家から出たかっただけよ。ねえ、ここに家庭だと思える場所があるって、すごくいいわ」
そう言っていた。
その言葉は、家族の中に存在する見えない裂け目を浮き彫りにしていた。ショウの両親には、人生にとって大事な何かが欠けているように思えた。
また、ショウは、僕を決して両親に会わようとしなかった。そのことを、僕にはっきり示していた。
ショウの親が知っているショウ。僕が知っているショウ。そして、ショウ自身の三種類にわけとくんだ。
それぞれは、人格と人格のはざまで暮らし、振り子細工のように揺れていた。おそらく、激しい羞恥心や繊細さが、そうさせていたのだろう。
だが、実際には、自己中心的な計算や冷徹な分析が、彼をそうさせていたのかもしれない。
ある日の夕方、歌舞伎町を歩いていると、男に声を掛けられた。
「60分3000円。キャバクラ、いかがですか?」
僕はたちどまり、ショウの顔を見た。
ショウはすぐには返事をしなかった。男の顔を見て、それから店のほうに目をやった。
「本当に60分3000円?」はじまった。頭がかたいんだ。
「ええ、大丈夫ですよ」
男はそう言った。
僕はショウに言った。
「60分3000円なら、試してみようぜ」
ショウは少し考えてから「わかったよ」そう言って、男についていった。
僕たちは雑居ビルに入り、エレベーターで上へ上がった。
ドアが開いて中に入ると、男は、
「お客さまご案内!」
と言い残して、そのままエレベーターに乗り込んで去っていった。
店内には、僕たちしかいなかった。
ショウは店の中を見回した。
「これ、ヤバいな。ぼったくりじゃないの?」
それを聞いて、ぼくはちょっとたじろいだ。
「大丈夫だろ。60分3000円って言ってたんだから」
僕がそう言うと、ショウは黙った。
自分が損をする可能性を考え、相手の言葉を疑い、状況を冷静に見ていた。
そういうところも、ショウという人間の一部だった。
それで、二人でうまくやってきたんだ。




