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リザの母親が「ノー!」と叫び声を上げ、身をすくめた。
一瞬の出来事だった。
カチャリと撃鉄が起こされる音がして、部屋の中から銃声が響いた。
駆けつけたパトロール警官のドニーが飛びかかり、彼を突き飛ばした。床に倒れ込むと、銃が彼の手から落ち、鈍い音を立てて絨毯に転がった。
ドニーはすぐに立ち上がり、シャツの前を引っ掴んで開け、もう一人の警官に振り返って叫んだ。
「救急車を呼べ!」
もう一人の警官が、階段の下にいる仲間に向かって大声で叫んだ。
「救急車だ!」
階段の下に来た警官は、肩ベルトに取り付けられた無線機のボタンを押し、救急車を要請した。
かすれた無線の声が告げた。
『到着まで、あと5分』
その後、階段を駆け上がって来る音が響き渡り、防弾チョッキを着た緊急班が、拳銃を手にしながらなだれ込んできた。
銃を下ろして聞いた。
「死んでいるか?」
「いえ」
ドニーが振り向いた。
「彼が撃ち抜いたのはロザリオです」
緊急班は小さく肩を落とした。
「自殺を図ろうとするなんて、われわれをこけにするも同然じゃないか」
リザの母親のすすり泣きの声が聞こえる中、押し寄せた警官たちに彼の姿が見えなくなり、彼女は手に持っていたドアノブに、あえぎながらもたれかかった。
気を失った彼は、何の抵抗もしなかった。
ドニーが手荒に彼の肩を掴み、うつ伏せにして手錠をかけた。
総動員された警官たちが、リザの家の周辺の道を通行止めにし、野次馬の前に立ちふさがる。
通りは何台ものパトカーが列をなし、なにごとかと出てきた近所の人でごった返していた。
後ろ手に手錠をかけられた痩せた彼を、ドニーはまるで猫でも持ち上げるかのように軽々と掴み、立たせて外に連れ出そうとした。
そのとき、三ブロック離れた教会では、熱心な聴衆が説教師の声に耳を傾けていた。
その説教の言葉は、いつかどこか遠い場所で誰かの心を動かし、その心の動きがまた別の誰かに影響を与える。
人生とは、そうして回っていくものだ。
まるで、誰かがあなたの髪にそっと触れるように。
説教は、始まったときと同じように突然終わり、聴衆の声が上がった。
続いてハレルヤの手拍子が、町に圧倒的なビートを刻み込んでいく。
そのリズムに合わせて、しばらくの間、誰もがただ音に身を任せ、魂を高揚させていた。
教会から響いてきたハレルヤの手拍子は、町の空気にリズムを刻みつけ、その音は、皮肉なほど無垢で、美しかった。
数年後。
刑務所は、地獄とはまさにこういうところなのかと思わせる場所だった。
人々がひしめき合い、残忍で、慰めになるものなど何もない。
事件当日、僕には判断能力があったと診断された。
一連の出来事はすべて有罪とされ、ここから出られる可能性はほとんどない。
自分が完全に人間ではなくなってしまったのか、それとも他の人たちと同じ普通の人間なのか、それすらももうわからない。
それでも、僕はみんなと同じだと思いたい。
その証として、ロザリオのかけらを今でも胸にかけている。
リザと名づけたそのかけらを指でなぞるたびに、彼女の温かな笑顔が頭に浮かぶ。
そう、僕がどれほど罪深い人間だとしても、彼女との思い出が僕を支えている。
それは、牢獄における僕の苦しみを和らげ、暗闇の中でも生涯輝き続ける星を思わせる。
その輝きは、人生そのものよりも愛しい。
終わり




