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『人間はただ一度しか人を愛さない。それははじめての恋である』ジャン・ド・ラ・ブリュイエール
逢えない人に
ハイウェイを走っていたマイクロバスがカリフォルニア郊外を抜け、どこか田舎にさしかかったころ、隣に座っている留学生のショウが、身じろぎひとつせず、景色にも目を向けずに神妙な顔をしているのに気づいた。
その様子が気になって、思わず彼の顔を覗き込んだ。
「どうした? おい、大丈夫か?」
ショウはぽつりと言った。
「さっきのタコベルで、食い過ぎたかも」
まもなくショウは、シートバックネットから嘔吐用のエチケット袋を取り出した。
それを見た瞬間、僕は思わず声を上げた。
周囲にいた者たちが、一斉にこちらを見た。
ショウはエチケット袋を両手で握りしめ、その中をじっと覗き込んでいる。
「先生! ショウが……」
前の席のドナが声を上げ、運転していた先生もバックミラー越しに叫んだ。
「ショウ! 大丈夫か!」
僕は必死に声をかけた。
「お前の好きな果物、何だ? 日本の梨だろ。みずみずしい梨だ。違うか?」
気持ち悪さを少しでも紛らわせるため、無理やり別のことを考えさせようとしたのだ。
だが、ショウの顔はみるみる青ざめていった。
「だめだ……気持ち悪い」
友達とはいえ、バスの中で吐かれるのだけは勘弁してほしかった。
ショウは口を固く閉じ、必死に吐き気をこらえている。
「ショウ、お願いだから吐かないで!」
ドナが言った。
「これからタコスを食べるたびに、ショウのゲロを思い出しちゃう」
その言葉を聞いたショウは、さらに顔を青ざめさせた。




