穴があったら落ちました
「あーあー今日もかったるいなぁ。学校サボっちゃおうかなぁ⋯⋯はぁ。でも駄目だよなぁ。」
私、岡本ゆあ は、高校に向かいながらダラダラと渋谷の駅のホームを歩いていた。
たくさんの人の中、ダラダラと。
もうすぐ期末試験だし。
2年生はそろそろ進路を決めなきゃいけないし。
あーあー!何も考えられないよぉ⋯⋯。
ひとまず勉強だけしてるけど。焦るだけ⋯⋯。
でも、高校生で、やりたいことを見つけるってむずかしくない?!
はぁぁぁ。
本日何回目になるか大きなため息をついた。
その瞬間。
え?!
足元がスカっと⋯⋯
ん?
恐る恐る下を向く。
「きゃぁぁぁぁ穴っ?!」
なになになに!穴?!
足元に穴!
うそだよね?!ここホームじゃん!
そんなとき授業中に担任のコッシーが、くだらない話をしてたのをふっと思い出す。
『宝くじの1等があたる確率は、乗ってる飛行機が落ちる確率と同じくらいなんだって。
飛行機なんか日本のジャンボだと、ほぼ落ちないんだよ。で、歩いてて穴に落ちる確率は、それより少し高いんだよ。
雷に打たれるよりは高く、車にはねられるよりは遥かに低いみたいな。』
何言ってんだ?って思ったけど。
「あたし今それー!!!穴に落ちてるんだけどー!!!!!どんだけ高い確率なのよぉー!聞いてるのと違うー!!」
ぎゃぁぁぁぁ〜!!!!
下に向かってどんどん加速して落ちていく。
目の前は真っ暗。
体はどんどん加速してるみたいな感じで、でも、もう何も考えられない!!!
すると、目の前が急にあかるくなった⋯⋯。
目が開けられなくなって。
あたしはギュッと目を閉じる。
もう駄目だ!!
私の人生も10代でおしまい。
この光のさきはきっと。
⋯⋯天国⋯⋯。
「ぶふぇっ……!?」
ドスン!と豪快に尻もちをついたのは、駅のホームのコンクリート⋯⋯ではなく、ふかふかの青々とした草の上だった。
「痛たたた⋯⋯お尻割れたかも⋯⋯って、元から割れてるけどさ。」
頭を振りながら立ち上がり、周囲を見渡した私は、言葉を失った。
目の前に広がるのは、渋谷の街並みでも、地下の排水溝でもない。
「何ここ。原っぱ⋯⋯。」
どういうこと?
は!!!
んーとちょっと待って。
落ち着けあたし!!
辺りを見回すと。
向こうにジブリ映画に出てくるような巨大な風車と、見たこともない色鮮やかな花畑。そして遠くには、中世のお城みたいな三角屋根の街並みが広がっている。
「⋯⋯は? え、どこ?ここは?天国?まじで⋯⋯。」
混乱する私の目の前で、突然空から
「ヒューーーン!」
と激しい音が響いた。
?!なななななに?!
見上げると空に人。
はぁ? 鳥人間?!
2人の人が空高く浮いてる。
1人はマントを羽織った金髪、もう1人は遠くて見えないけど⋯⋯黒い⋯⋯鎧みたいなのを着てる?黒しか見えない⋯⋯。
金髪が手からど派手な炎をぶっ放した!
ひぇぇぇ〜。
すると、黒い人が水を手から出して⋯⋯。その火を相殺した。
えええ?!
「ひぇぇ!?アニメみたい! 魔法ってこと!? ほんものの火出てるじゃん!!」
映画の撮影⋯⋯? ううん、CGじゃない。熱気がここまで伝わってくる。
どどどどういうこと?!
すると、パニックになるあたしに気づいたのか、その金髪が、空中からふわりと舞い降りてきた。
ええっこっち来ちゃった!!
「人がいるぞ!いったんやめ!!」
金髪は黒い人にそう言うと、私の目の前に立つ。
わ!金髪イケメン!!
「君は?なぜこんなところに?」
わ!話しかけられた。
オドオドしていると、
金髪イケメンの頭の上に、まるでカラオケの歌詞表示みたいに、半透明のテキストがふわっと浮かび上がったのだ。
【今日のパンツ、前後逆にはいてる】
「⋯⋯え?」
パンツが後ろ前だと?!
私が不審者を見る目で金髪イケメンを見たのがわかったのか。
金髪イケメンは、私の顔を覗き込んで。
「大丈夫か?何があった?」
優しく問いかけた。
「え?その⋯⋯えっと。」
何て答えたらいいのかわからず。戸惑ってしまうあたし⋯⋯。
「大丈夫だ。ゆっくり話しなさい。どうしてここに?」
金髪イケメン⋯⋯パンツ後ろ前の人はそう言って優しく微笑む。
「⋯⋯後ろ前履き替えたほうがいいかも⋯⋯。」
はっ!!つい⋯⋯。
私のボヤキに金髪イケメンは、ハッとした顔をして。
「ん?君⋯⋯なんでそれを?」
てか、わかってて逆かーい!履き直せ!なんですけど⋯⋯ね?
すると
「なにをやっているんだ?カーク。」
上から声。
見上げると。黒い人。
私の前にストンと降り立った。
黒髪に、黒い瞳。わ!こっちもイケメン⋯⋯
ふっと
頭に目がいく。
すると、同じように半透明のテキストがふわっと浮かび上がったのだ。
【今日のパンツ破れてる。今日着たら捨てよう。】
!!!何?!⋯⋯お前もか?!
なんなのこれ〜!!!!
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