初めてのラブレター
「お仕事中なんですけど。」
ここは街の西門。門番として私たちはここに立っている。
「いやどうせ暇だろうと思いまして。」
郵便屋さんの男がイヤミを言ってくる。
「ヒマはヒマだけど、忙しいの!」
双子の妹であるベルが口をとがらせる。
そうそう。私たちには暇つぶしという大義があるので、邪魔しないで。
「特に問題がなさそうなので、これを渡しておきます。」
ベルは封筒を受け取った。
封筒はハートマークで綴じられている。
「あ、それラブレターじゃない?」
そうなのだ、ベルは結構男にモテるのだ。
私も同じ顔なのに……なんでなんだろう。
ベルは封筒を開ける。
「えっと、はいはい。好きですからはじまってどうのこうの。」
「ベル。どうするの?」
「ファル。いつも通り1週間も付き合えばげんなりするんじゃない?」
「日中デートできないものね。」
いつも通り勝手に好きになられて勝手に離れていく。男は勝手だ。
「でも嬉しいんじゃないの~?この、この!」
私はおじさんの様にベルを茶化した。
「嬉しくないことはないけど、あんまり嬉しくない。」
「いや~、贅沢な悩みですなあ!」
私はラブレターなんて貰ったことないよ。いいなほしいな。
「お姉さんの方にも郵送物がありますよ。」
「え、なんでしょう?もしかしてもしかして?」
舞い上がる私に郵便屋さんは封筒を差し出してくる。
「税金の支払い通知書です。」
クソが!
私にくる手紙なんてこういう事務的なモノばっかりだよ!
ふざけやがって!
私もベルみたいにぽわぽわした世界で生きたいの!わかる!?
税金とかその他もろもろの請求書なんて欲しくないの!
ちょっと早く生まれたってだけで世帯主になってるよ私!
「あとこれで最後の郵便物です。」
郵便屋さんが私にハートマークで綴じられた封筒を渡してくる。
「え?あ?うそ、これって……」
心臓が突然跳ねる。呼吸が乱れるし汗も出てきた。いやいやこれって……
「見ての通りです。では私は次行きますんで。」
「え、あ、はい。お仕事お疲れ様です?」
私は生まれて初めて貰うラブレターに困惑していた。
これどうすればいいの?
「ファル。」
「なに、ベル。」
私は口をとがらせるとベルは続ける。
「ようこそ、こちら側へ……」
いやお前うるせえよ。こっちは困惑してるワケ。
それともベルってこういうの貰うたびにこんな複雑な感情を展開してたの?
ああもうわけわかんない!
とりあえず開けて中身を……
『好きです。今宵、月が出たら貴女をお迎えに上がります。』
うっわー!
恥ずかしいー!
月が出たら貴女をお迎えに!お迎えに!
よく恥ずかしげもなくこんな文章書けるなー!
……いや、こういうところがダメなんだろうな私って。
でもこのいまひとつダメっていう評価も、今日で返上ですよ!
ふはは、私の物語はここから始まるのだ!
私は気もそぞろで仕事をこなす。
今日はまったく集中できません!仕方ないですね!
そして日没。私たちの仕事が終了する。
月はもう出ている。
私はうきうきで西門のクランクを回して、格子門をゆっくりと下す。
街に向かうとした私たちの目の前に美しい男性が立っていた。
「ベルさん、お迎えにあがりました。」
あーあ、ベルってこんなキレイな男性にモテるんだよなー!
これで私の方は超絶ブサイクだったらちょっと嫌なんですけどー!
目の前の美しい男性は優しくベルの手を包む。
「仕事をする女性の手の美しさよ……私は魅了されてしまいました……」
ん?仕事をする女性?もしかしてこいつ無職パターンか?
「ええと、失礼ですけどあなたご職業は?」
「ファルさん。私はあなたにも会いたかった……」
は?なに言ってるのこいつ。
私の手を包み、目の前の男性は続ける。
「二人とも合格です。私の夢の為、スポンサーになっていただきたい。」
え、二人とも?夢の為?スポンサー?なに?
情報量多くない?
つまりこの無職が何らかの夢を追うために私の給金を目当てにしてるの?
しかも二人?合格ってお前……
なんの試験だよ。
私とベルは同時にうなずき、二人で男の顔面をぶん殴った。
「ベル。評価をどうぞ。」
「顔は大変良いですが、年下を財布にしないでいただきたい。25点。」
「25点って結構高くない!?」
「私の採点は見た目がMAX25点です。」
「あんまり嬉しくないって言われた意味わかるわ……」
このあと二人でチキンステーキを食べた。
いつもより雑談が盛り上がったような気がする。
今日は豊かな一日だった。悪くない。
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