The later story23
「異世界から本部、海外支部から大学部まで…」
「ちょっとした旅行でもした気分でしたよ?」
「アハハハハハ!ゴメンね」
「ちょっと挨拶回りを、と思ってさ」
「そのせいでプチ旅行ですよ…」
「「約束」は、どうなったんですか?」
「…覚えてるよ」
「しかし、良いのかい?」
「もう、覚悟は出来てます」
「流石だね」
「だが、俺が聞いているのは君じゃない」
「GL、お前だ」
「え…?」
「コレは成功するだろうね」
「イトウさんのお墨付きだ」
「しかし、お前は良いのか?」
「…言ったでしょ」
「コレで良いの」
「…今の状態じゃ、成功する物も成功しなくなる」
「俺は席を外そうかな」
「え!?ちょっと!!」
「何処に行くのよ!!」
「お前の気持ちに整理が出来たら呼びに来てくれ」
「喫茶店でコ-ヒ-でも飲んでる」
「そんな…」
「じゃ」
「…行っちゃったね」
「でも、GLは何か悩みが有るの?」
「…」
「…う-ん」
「僕も、喫茶店で待ってるよ」
「GLの気持ちが…」
グイッ
GLが秋雨の服を引っ張る
「…待ちなさいよ」
「で、でも…、僕が居たら邪魔じゃない?」
「待ちなさいよ!!」
「えっ!?」
「待ちなさい、って…」
「私の悩みは…、その…」
「アンタの事なんだから…」
喫茶店
「すいませんねぇ、無理なお願いして」
「テメェのせいで、異世界からケイジと和風を呼ぶハメになったぞ…」
「報酬料、請求してやるからな!」
「まぁ、それは払いますよ」
「でも、どうして、あんな提案を?」
「確かに不可能じゃないけど…」
「実践した事は無いですよ」
「俺達は向こう側の世界で、何度か見てる」
「成功はするが…、受ける方に多大なダメ-ジが残る」
「下手をすれば廃人だ」
「だが、秋雨には能力があるだろ?ガルス」
「確かにそうだが…」
「彼の能力は「強制変換」です」
「恐らく、そのリスクすら自分に都合の良い様に変換してしまうでしょう」
「反則だね」
「反則ですよ」
「その気になれば森羅万象の法則すら、ねじ曲げられる」
「…本人がマトモな人間だったのは偶然か、必然か」
「どちらにしろ、有り難いね」
「ヤグモみてぇな馬鹿に付いてたら、面倒くさかっただろ-な」
「人の事は言えないだろ…」
「何でだ?」
「自分で考えろ…」
「…どうして、こんな事を?」
「君自身は良いのかい?」
「俺は…、もうGLの能力者じゃないですよ」
「元能力者だ」
「責任放棄とは言わないが…、それに似た行為だよ?」
「むしろ、責任転換だな」
「彼は1つの能力をすでに持ってる」
「君の提案通りの事をすれば…」
「それを可能にするのが秋雨の「強制変換」だろ?」
「…なるほどね」
「能力を複数持つ事は不可能じゃない」
「だが、その分のハンデも背負う」
「秋雨君には、その「ハンデ」がない」
「…俺には、もうGLの能力者である権利はない」
「だからこそ、彼に託します」
「…それで君は良いのかい?」
「俺に決める権利はありませんよ」
「あの2人に委ねます」
「ケッ!責任転換も良いトコだな」
「…どう思われようが、構いません」
「しかし、その「責任転換」とやらは、俺からすれば「次の世代に託す」という意味でもあります」
「ジジイか、テメェは」
「まだまだ若いだろ?」
「大学には行けてませんけどね」
「トイレの清掃員だもんな」
「酷い妹も居たモンだ」
「実の兄貴をトイレの清掃員に任命するか?普通」
「…ですよね」
「否定しろよ…」
「漫才は終わりだ」
「で、どうする?」
「何が?」
「秋雨君がGLを得るのは駄目だろう」
「教員として止めるべきだと思うが?」
「何で「駄目」なんだよ」
「2つの能力は使い様に困るし、もしGLが秋雨君の能力になってしまったら?」
「治療委員会の会長は誰が務める?」
「他にも…」
「細けぇ事、グチグチ言ってたらハゲるぞ」
「洗髪には、人一倍の拘りを持ってる」
「伊達にサラコン(サラサラヘア-コンテスト)で優勝してないさ」
(サラコン…)
「…後の事を決めるのは彼等次第」
「俺達が口を出す事じゃないな」
「しかし、ガルスが言う事にも一理ある」
「じゃ、止めろってか?」
「そうは言ってないだろう?」
「今「一理ある」って行ったじゃねぇか」
「「普通の」教員ならね」
「俺達は喫茶店の「従業員」だ」
「「教員」では有るが、教員じゃない」
「よって、柳舞君が行っていた事は「教員には報告したが、従業員には報告しなかった」」
「そういう事になるんじゃないかな?」
「悪知恵がよく回りますね?」
「金田だからな」
「テメェがロシア支部の時に俺達を頼ってきた時と同じだな?」
「…はい」
「あの時と違うのは…」
「テメェの眼だな」
「「眼」?」
「寝不足ですかね」
「違ぇよ」
「テメェには、その「眼」の方が似合ってる」
「?」
「「自分さえ良ければ」っていうクソみたいな眼より、「皆が良ければ」っていうクソみたいな眼の方が良い、って話だ」
「どっちもクソじゃないですか…」
「自己中心より自己犠牲の方が幾分マシだって事だ」
「どっちもクソだがな」
「…アナタだったら、どうするんですか?」
「そん時はそん時」
「臨機応変ってヤツだな」
「…自由な人だ」
「昔からだよ、コイツの自由さは」
「だからこそ、俺達は俺達で居られる」
「…良いですね」
「何が」
「…コレだから馬鹿は」
「あぁ!?」
「落ち着きましょうよ」
「2人とも、大差ないですって」
「「あぁ!?」」
(漫才か…)
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