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本物の温度  作者: 幽鬼
『名前しかない少女』
14/14

閑話『名もなき村人』

三十代後半か四十代前半くらい。


薪を背負った男がいた。


裕福ではない。


でも貧しくはない。


辺境の村で普通に暮らす。


妻と息子がいる。

生活は苦しい。


毎日、

朝から森へ出かけ、


自然の恵みを採取し、

自然に感謝して狩りをする。


そして、

夜が暗くなる前に家に帰る。


そんな生活を、

毎日毎日、享受する。


それが幸せだと感じる。

そんな男だった。


その日、いつものように森を歩く。

そこで、男は発見した。


小さな子供だった。

遠くに倒れていた。


心臓がドクンと鳴る。声が出た。

だが、すぐに走った。


子供の服装が目に映る。


見たことのない服だった。


見たことのない鞄だった。


王都の子か。

あるいは貴族の子か。


だが男は、迷わなかった。


不敬罪になるかもしれない。

そんな言葉が脳裏をよぎる。


だが、

男の人が最初に口にしたのは。

もっと単純な言葉だった。


「大丈夫か?」


それから。


「生きてるか?」


「怪我はないか?」


ただ、それだけだった。


優しいからではない。


きっともっと単純な理由だ。


困っている子供がいた。


だから声をかけた。


それだけ。


それだけだった。



森で倒れている子供に、


名前も知らずに声をかける村人がいた。


その優しさの上に、


後のアレシアという国が立っていた。


ナナシは

聖名王国アレシアという国の辺境にある村。


その近くの森に、

倒れていた。



そこに、英雄でも神官でもなく、


薪を背負った名もなき村人


が、


ナナシと接触した。

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