第20話 「箱に入れてしまっておきたい」
「ん〜最高だったな。」
「ええ、本当に。
火山もありますからね。硫化水素の濃度が濃く...色の濃い白濁食の温泉ですからね。傷や疲れにはもってこいなんですよ。」
「ん〜そうなるとあの辺の大気的に野菜って大丈夫なの?」
「ええ近いとはいえ火口からはかなり離れていますから影響は少ないです。標高が割とあるため気候も涼しく温泉が流れてしまっている川とは別の真水の川が近くにありますしそういった面でもあの風土になりやすいのかと思います。」
「ほええ。すげぇさすが地学と歴史学の専門家〜。」
「あはは、まぁもうその権限はないので元でしかありませんけど。」
「まあまあ俺みたいに料理バカよりも知識があるということだけは間違いない!お!つーかそろそろギルドの依頼が更新される頃じゃないか?シャル達も来てる頃だろうし行ってみようぜ。」
「それもそうですね。」
依頼板の前でシャルが居てこっちに手を振る。
「おー!戻ってきたか!おかえりー!」
「シャル!おまたせー!ってあれマカフィは?」
その質問は彼女の顔を曇らせた。
「しらねぇ。」
およ?喧嘩かしら。めんどくさいよぉ。
「そ...っか。」
「....。」
シャルは俯いてしまう。
き、きまじ〜。
「何かあった...?」
「別になんもねぇよ。」
「...そうでもないでしょ...嫌じゃなかったらさ教えてよ。」
俺は、なるべく丁寧にシャルの瞳をのぞき込む。
「...。あいつが悪いんだ!俺のせいじゃねぇ!」
シャルは顔を真っ赤にして大きな声出した。
「喧嘩か?」
「まぁそんなところだ!とにかく!あいつは来ない!今日はあいつ抜きで行くぞ。」
弱ったな。めんどくさいぞ、かなり。
「そういう訳にも行かないだろ。」
「...あいつは来ねぇよ。今頃高級外で買い物でもしてんだろ。」
「...シャル。探しに行くぞ。」
「...行きたきゃお前たちだけでいけよ。」
「ったくしょうがないね。一旦そうしてみるからお前はここにいるんだぞ。」
「ッチ...わーったよ。」
一人で依頼に行かれて無茶をされて死なれたらたまらん。
「あ、ハルート、すまないけどシャルと居てくれる?フープルで移動するから魔力的にもいつまでもつかなって思ってさ。」
本当はシャルが心配だったからだけどハルートならそこを汲み取ってくれるだろ。
「ええ、かまいませんよ。あ、それじゃシャル、せっかくですから美味しいランチでも食べましょうか。シャルが好きそうな肉の丸焼きが美味しいお店があるんですよ。」
「おぉー!すげぇ!いくいく!」
さっすが〜。ハルートは俺のこともシャルのこともよく分かってるぅ。
...はぁ俺何してるんだろ?レストランから遠ざかってない?大丈夫??
と心の中で一抹の不安を抱えながらもこれも仲間のためと思い直しフープルで高級街へ向かった。
ばっちいカッコできてしまったので店の中は愚か街を歩いても浮きそうだけどそんなことは気にしたら負けなので迷い込んだ冒険者か浮浪者のフリをしてフラついてみる。
そんなことをしているうちにマカフィはすぐ見付かった。
時計塔の下にあるベルが売っている店の前に居た。
「やぁお嬢さん。」
俺はそれとなく声をかけてみる。
マカフィは少し女の子らしい普段着を着ていた。
「...なんだ、ダイゴか。」
「ダイゴか、とは何かね。探したのだよ。」
「シャルに言われて来たの!?それなら僕帰らないよ!」
「あはは...そりゃ困ったね。まぁいいや。帰りたくないならせっかくオシャレしてんだし俺とデートでもするか?」
無理に引き戻しても逆効果かとおもったので俺は思い切ってふざけた提案をしてみた。
「何言ってんの!そんな浮浪者みたいな格好でこの場所にいたら通報されちゃうよ!」
「もちろん、下町の方での話だよ。」
「....ねぇダイゴ...僕可愛い?」
マカフィは一旦俯くと....瞳を潤ませて俺の裾を掴んで俺を見上げる。
俺は思わず抱きしめそうになるのを必死に抑えながらぶっきらぼうに答えた。
「あぁ可愛いよ。」
「....複雑、僕はシャルのお婿さんになるから男の子みたいにしなきゃ行けないのに。」
...ああ可愛いむり連れて帰りたい箱に入れてしまっておきたい。
「...僕本当は可愛いものも大好きだし、甘いものだってすきなんだ。ダメなんだよこんなんじゃさ...。」
「...マカフィ?俺に捕まって。」
「?」
俺はマカフィを連れて星の村があった跡地から近い高丘にフープルした。
「...?ダイゴ?」
「あぁいきなりびっくりしたよな。ごめん。ここなら落ち着いて話せそうだと咄嗟に思ったんだ。」
「...そっか。
でも、僕さっき泣きそうになってたし正しいかも。あのままあそこで喋ってたら本当に通報されちゃうかもだし。」
マカフィは目に涙を溜めたまま俺に笑顔を向けた。
「はは...。良かったら聞かせてくれないか?お前たち2人の事さ。何も知らないままじゃ偉そうにアドバイスするのもおかしいだろ?」
「...うん。」
マカフィは返事をするとしばらく黙ったまま丘から遠くの方を眺めてショートカットの短い髪をゆらゆらと風に靡かせていた。
俺は彼女が話し始めるのを待つことにした。
ほんの少し沈黙が長れマカフィはゆっくりと口を開いた。
「 僕とシャルはね同じ教会で生まれたんだ。教会は聖騎士団を率いるこの世界でいちばん大きな教団なんだ。
それでそこの法王の息子として生まれるはずだったのが...僕。
騎士団長の娘として生まれたのがシャルなんだよ。
法王は男の人しかなれなくて...だから父上は僕を男として育てた。
小さな頃からお前はシャルとお前は将来結ばれるんだよと言われ続けてきて...。
物心着いたばかりの頃は苦しいとか嫌だなって思ってたんだけどね。
シャルは...お前が男になるのなら俺も男になるからって...ずっとそばに居てくれたんだ。
そうしてある程度大きくなってからシャルは聖騎士団に入った。才能があった彼女はみるみる腕を上げて...君も見ただろ?ふたつの剣技を使い分けていたのをさ。
あれは本来騎士団の高位の者しかやってはいけないことなんだ。
騎士団にはチームがあってそこのチームの長に選ばれた者またはそれ以上とされているんだよ。
だから彼女は既に騎士団でそれくらいの位置にいたということ。
約束された将来...仕組まれた僕たちの結婚。
僕は運命を受け入れてそれでいいと思っていたんだよ。でもね...ある日シャルは外の世界へ行こうと僕を無理やり連れ出したんだ。
それはご法度に近い行為ですぐに連れ戻されたんだけど、
修行の旅を二人だけでさせてくれとなんとかこじつけの理由で期間限定ならと許可を取ってボクが嫌ですという間もなく飛び出してきたんだ。
...で、本来僕たちは一年くらい前に帰らなければならないことになっていたんだけどシャルはそれを無視した。
僕もシャルと一緒なら怖くないって思ったから...そうしていたのだけどね。」
「....。あぁ。」
「使者がやってきたんだよ。ついこの前君たちとパーティを組んだ時にさ。僕は...父上がどんなに恐ろしいかを知っているから...戻ろう...と言ったんだ。
でも...シャルは帰るつもりはない、俺とお前がいるべきはこの場所だろうが!と言われてしまったんだ。それで毎日少しづつ言い合いするようになって...それで今朝大喧嘩しちゃったの。
そしたらさ僕も気持ちがわかんなくなって...。
じゃあいっそ自分がしたいカッコをして好きなことをしてみたらシャルの気持ちが分かるかなと思ったんだ。
...でベルがちょうどないからこのベルとか売ってる雑貨屋に可愛いのあるかもと思って目の前まで来たんだけど...やっぱり葛藤があって...僕は男らしく居ないと...シャルを守らないと...って気持ちになって中々入れずに入口にいたんだ。」
「そうか...おまえはすげぇな。」
「...すごくなんかない!今もこんなに弱音吐いてウジウジして!本当なら男らしくして強がらないといけないのに。僕は君に助けてと言いたくてたまらない。弱く脆くて情けない!」
「...。強いよ、おまえは...そして誰よりもすげー頑張ってる。お前もシャルもな。」
「...頑張ってなんかない!」
マカフィは大粒の涙を流して俺に叫んでいる。
「...法王はさお前を法王にしたい理由があったのかな?」
「...それは僕が魔力が強いことと生まれながらにして回復魔法の適性が異常に強かったから...百年に一度生まれるか生まれないのかの奇跡だから...。」
「...そうか、おまえはそんなもんまで背負ってきたのか。すごいな。」
「すごくない!僕はすごくなんかないよ。」
「...シャルも同じように背負ってきたんだな。お前と自分の運命をさ。」
「...。」
「なぁマカフィ?俺はさ本当はこの世界の者じゃないんだよ。」
マカフィーは俺の一言に目を丸くした。




