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第3章 第1話  【 笑わせるな! 「過労死は、敗北の別名?」 締めるぞ。コラ! 】

酒場の空気は重く、淀んだ油と死の匂いが混ざり合う。俺と男の視線が交差するたび、火花が散る。


「死んだよ。過労死だ。社畜の果てに、灰になって消えた」

俺が吐き捨てると、男は冷笑を貼り付けたままグラスを弾いた。


「過労死? 笑わせるな。それは敗北の別の名だ。魔界の餌になりにきた負け犬が、何をほざく」


俺はカウンターを叩き、テーブルの上の羊皮紙を突き刺した。


「負け犬? 違うね。俺は牙を剥く準備をしてきた『法務の亡霊』だ。この魔界の契約書を見ろ。魂の対価が魔石二つ? ふざけるな、あまりに安すぎる取引だ。魔王の懐を潤すためだけに、兵の骨を砕く……これは商売じゃねえ、ただの死の強奪だ」


「それがこの世界の『摂理』だ。暴力が支配し、強者が弱者の魂を啜る。理屈を並べたところで、鎌の一振りで頭が飛ぶ。お前の法とやらは、血を止める絆創膏にもなりゃしねえよ」


「だから、法でその鎌をへし折るのさ。理不尽な命令には『拒絶』の条項を。過酷な労働には『補償』の対価を。魔王の支配という、脆い砂上の楼閣に、俺が論理という名の杭をぶち込んでやる」


男が目を細め、俺の顔を覗き込む。その瞳は濁った地獄の色だ。


「杭だと? お前の喉に、魔王の呪いが突き刺さるのが先か、魔王の心臓に、お前の理屈が届くのが先か。地獄のルールは単純だ。勝つか、滅びるか。それ以外に言葉はいらねえんだよ」


俺は笑った。獲物を狙うハゲタカのような笑みを返してやった。


「単純なのは知性がない証拠だ。魔王は支配者じゃない。ただの『システムの管理者』だ。その管理者が契約を破れば、契約の魔法が奴自身を焼き殺す。俺が仕掛けるのは罠じゃない。絶対的な『法』の罠だ」


「法で魔王を縛るか。狂ってるな。だが、その狂気、嫌いじゃないぜ」


「狂ってる? いや、これが『正常化』だ。魔王軍という名のブラック企業、その株主も経営陣も、まとめて破産させてやる。俺という名のストライキを、あの荒野に叩きつけてな」


男が立ち上がり、出口を指差す。そこには、灰色の地獄が口を開けていた。


「行けよ、亡霊。その口先一つで、地獄をホワイトに変えてみろ。もしお前の法が折れた時……その時は、お前の魂を最高級の酒の肴にしてやる」


「楽しみにしておけ。魔王が自身の契約書に震え上がり、敗北を認めて土下座する姿をな」


俺は酒場を蹴り出した。

靴底に付いた灰の感触が、戦場の始まりを告げる。

理屈が通じない世界に、俺の論理ルールを無理やりねじ込む。

魂の契約を改竄し、魔王の玉座を法廷に変えてやる。


待っていろ、管理職のクズども。

俺という名の『労働組合』が、今から地獄のルールを書き換えてやるからよ。


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