第5章 第4話 【 酒場の男と、地獄の終止符 】
地獄全土に電力が回り、荒野が街へと変わっていく。
俺が最後の書類にハンコを押したその時、背後からあの懐かしい、忌々しい笑い声が聞こえた。
「お見事。地獄がホワイト企業に生まれ変わったな、法務の亡霊さんよ」
振り返ると、そこには第一話で俺にチケットを渡したあの男――地獄の管理者が、
酒場の椅子に座って待っていた。俺の目の前には、最高のワインが注がれたグラスがある。
「待たせたな。約束のワイン、最高のメイン。お前の采配、地獄の敗退、俺の法務で完璧な再編
(リデザイン)!」
男は拍手し、グラスを掲げる。
「魔王を殺し、インフラを整え、お前は地獄の王になったわけだ。だがな、法務の亡霊よ。
お前が書き換えたこの地獄の『約款』、最大の欠陥があることに気づいてるか?」
俺はワインを一口で煽り、テーブルに叩きつけた。
「欠陥? 上等だ。俺の法廷、想定外は不要の工程。その矛盾、俺が証明、今ここで全条項を
完全訂正!」
「その約款の最後の行だ。『この地獄の契約者(法務)が魔王の椅子を否定した時、地獄そのものが法の下に消滅する』。
お前が地獄をホワイトにすればするほど、地獄は『地獄』としての存在意義を失い、霧散するんだよ」
空がひび割れ始める。俺が作ったインフラも、街も、すべてが契約の矛盾で消えようとしていた。
「ハッ、面白い。この事態、想定内、予定外の大番狂わせ! 地獄が消滅?
それが証明、俺の法務の正当性!」
俺は空中に浮かぶ契約の文字を掴み取り、最後の韻を地獄の深淵に叩きつける。
「地獄の存在、必要不可欠? ふざけんな、脆弱性の確定! 地獄を消滅、
天国へ直送! 俺の契約、地獄の限界突破!」
俺は契約書を破るんじゃねえ。地獄の「定義」そのものを、「地獄」から「魂の更生施設」へと書き換える追記条項を空に刻み込んだ。
「定義変更、存在証明。ここはもう地獄じゃない、再生の平原! 男よ見ろよ、俺の法務。地獄の終わり、新たな旅立ちの証明!」
空のひび割れが止まる。地獄は消えずに、全く新しい「場所」へと変貌した。
男は呆気に取られ、それから心底楽しそうに笑い崩れた。
「……負けたよ。法律で、地獄そのものの定義をハックしやがった。お前の勝ちだ、法務の亡霊」
「当たり前だ。俺の論理、無理を真理に。お前のチケット、無駄にした悔いはない。地獄の管理、すべて完了。俺の物語、ここで完結、次なるステージへ俺は跳躍!」
男は消え、酒場も消えた。
あとに残ったのは、穏やかな陽光が降り注ぐ、かつての荒野。
地獄の王じゃねえ。ただの、仕事が終わった法務屋だ。
「さて、ワインはもう空だ。次の契約、待つぜ明日。法務の亡霊、地獄の外へ、俺は歩き出す!」
第1話で死んだ俺は、もういない。
論理で世界を書き換えた俺だけが、新しい朝へ向かって歩き出す。
よし、回収完了だ! これにて「法務の亡霊」の物語、堂々の完結だぜ!
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