第二話 『正気を疑う』
――お前達にはこれを使ってもらう
ガウル教官が指を指したそれは、到底兵器には見えない代物だった、菱形で先端にアンカーが付いており、人が二人乗れるくらいのスペースしかない、鉄の塊だ。
――なんだこれ
そんな感想しか出てこないがどうやら他の訓練生も同じことを思ったらしい、自分の隣に並んで立っていた、身長175ほどの白髪の男は同じことを言った。
「なんだこれ、何に使うんだ?」
教官はその声が聞こえたのか、ざわつく訓練生の前で手を叩いて静かにさせた。
「先ほど話したがオブジェクトが生み出すオブジェクトは破壊しても意味がない、破壊したところで巨大な、いやランズ・オブジェクトという最初に生み出されたオブジェクトが壊れたオブジェクトを回収し再生成されるだけだからだ」
「そこで開発されたのがこの強襲型転移装置だ、通称は降下ポットと呼ばれている、簡単に説明するが現在計画実行されている作戦はこの降下ポッドでランズ・オブジェクトに直接降下し降下ポッドをアンカーによりオブジェクトに固定、そしてオブジェクト内に侵入し探索又はコアを破壊し降下ポットで転移し帰還する作戦だ」
そんな無茶苦茶な作戦の説明を聞いていたら、隣の男が手をあげた。
「質問を希望します」
「いいだろう、質問を許可する、名前はなんだ?」
「ラング・ブラウンです、この作戦って訓練生以外ではもう実戦で使われているんですか?とても正気とは思えないですけど」
周りにいた訓練生もそうだそうだと、うなずいていた、そりゃそうだ帰ってこれるかもしれない、とはいえ鉄の箱に乗って特攻して来いと言われるのだ、計画立案したやつはバカなんじゃないのか?と思わずにはいられなかった。
「訓練生たちの疑問も当然だが実践ではすでに使われているし、それなりに結果も出ている。降下ポッドでやることの主な目的はオブジェクトの探索と破壊だがそれだけじゃない、降下ポットを使いオブジェクト内部から資源を回収し天空に持ち帰る役割もある、人的資源に損害を出さず資源を回収するにはこれが限界なのだ」
それほど人類はオブジェクトに対し打つ手がない、資源の少ない天空では資源回収も重要なファクターなのだ、十一年前のような飛行船を何隻も使い大規模な作戦を実行するような余力はもう人類にはあまり残されていないようだった。
「さて、訓練生には少し荷が重い話だったかもしれんが今日はまだ初日だ、この後は各自割り当てられた部屋へ戻り荷物の整理をし自主トレーニングなどするよう、訓練は明日から開始する以上だ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
部屋に戻どり、家から持ってきた道具を片付けていると、さっき教官へ質問していたラングが部屋にやってきた、どうやら相部屋だったようだ。
ラングはこっちに気づくと部屋のベットに腰を掛け話しかけてきた。
「お、あんたさっき俺の隣だった奴だよな、俺はラング・ブラウンよろしくな!」
さっきの話を聞いた後だというのに元気なやつだな、最初の印象はそんなところだった。
「さっきぶりだな、俺はマルク・ユニフル、マルクでいい。そういやあんた、あの話を聞いてる最中でよく質問しようと思ったな」
あんな無茶苦茶な作戦の話を聞いてる時は驚きすぎて周りは固まっていたから、あんな中で質問したラングは意外に図太いやつなのかもしれない、そう思った。
これから同室ということもあり訓練等も一緒になるだろうから少しでも同居人の事くらい理解しておこうと思い、話しを振ってみた。
「ラングでいいよ、俺は父親を十一年前に亡くしてるからな、あれだけ犠牲が出るような作戦しといて今度は特攻みたいな事言い始めたから、つい...まぁそれだけだ!」
一瞬表情が暗くなったがまぁ、特段珍しくはないこの世代は片親や両親がいないのもざらだ。
「俺は両親共亡くしてるから...まぁ、気持ちはわかる、だが暗い話はやめにしようぜせっかく軍に入れたんだしよ」
今後の先行きが不安なまま今日は荷物整理と自主トレーニングをして終わった。




