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疲労

天使と悪魔が俺の笑みに一瞬、動揺したように言葉を失う。



「知ってんだろ?早く教えろ。日が暮れる」



日が長くなったとはいえ、もう空は薄く色を変えようとしていた。

遅くなると母さんに言っていたから別に急がないけれど、なんだか疲れた……



「では、今から頭の中に順路を送ります」



輪廻が言い終わってすぐ、掛上の家までの道が頭の中に早送りで鮮明に流れる。




終着地点の掛上の家は白壁の平屋で、柴犬が玄関前の犬小屋に鎖でつながれ立っていた。

そして、その横で掛上が小さな庭の水場のホースから水を出し、裸足になった足を洗っている。

柴犬が俺の視線を察知したように吠え始めた。




「……これって、もしかしてリアルタイムか?」



頭の中のイメージを振り払うように輪廻を見た。



「ええ、犬に気がつかれてしまいましたね。さすが犬……」



珍しく悔しそうに輪廻が頬を歪め、イメージが完全に俺の頭から消える。



俺はため息をつき、二人に声もかけず歩きだした。



「岸辺はん!」



転生が俺の歩みを止めようと声をあげる。



「………」



返事はしない、振り向かない、けれど足は止めた。

ひどく疲れているんだ……



「あ、あの、掛上つばめには……気をしっかり持ちなはれ。あの子は……」



「転生……」



輪廻が言葉を遮る。




「事実が知りたければいつでもお教えします」



俺はついに振り向くと、輪廻は転生と姿を消していた。



きっと転生は俺に輪廻がさっき言ってきた事実とは違う種類の事実を言いたかったのだろう。


───心情を考慮した事実を……




俺は前を向き、歩きだす。



約10分後、掛上の家に到着すると柴犬が意外にも尻尾を振って出迎えていた。


庭の水場は濡れたホースがきちんと巻かれて、掛上の姿はなかった。



掛上のリュックを握り直し玄関のチャイムを鳴らした。







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