昼休み
昼休み、水原がいつものように中庭で昼飯を食べようと俺を誘った。
ベンチが何台か置かれ、芝生が整えられた中庭はすでに賑わっていてレジャーシート持参の者や、芝生にそのまま座っている者、ベンチはすでに仲良しグループや恋人同士で埋まっていた。
水原と俺も芝生にそのまま座って、購買のパンを頬張る。
暑いくらいの陽気にブレザーを脱いできて正解だった。
「あーもー帰りてぇ……」
空になった弁当箱を眠たそうに眺め、水原がぼやく。
「もう食ったのか」
水原は食べるのが早い。
俺はまだ一つ目のパンをかじっている。
「眠い……」
芝生に水原が寝ころぶ。
弁当箱が膝から落ちた。
「十分経ったら起こして……」
言い終わる前に水原が目を閉じる。
俺は転がった弁当箱を拾い、ふたをした。
周りの女子達が水原の寝顔を嬉しそうに盗み見ている。
スマホを取り出そうとしていたので、俺はそれとなく座る位置を変えて邪魔をした。
ちぎった草を何回か投げられ、諦めてもらう。
いつもの昼休み、今まで通りの昼休み。
水原、俺、いつまでもは居ないからな。
予鈴が鳴って、水原を揺すり起こすと、「いつも近い」と、文句を言われた。
まだ気だるげな水原と教室に戻る廊下で担任に呼び止められる。
「岸辺、掛上が具合悪くなって帰ったの登校中だったよな?」
一応、朝のホームルームで担任には報告していた。
「あ、はい。貧血みたいで、帰りました。連絡ありませんでした?」
「おお、家に連絡しても誰も出なくてな……」
担任が短く刈り込んだ襟足を撫で上げ、口をへの字に曲げる。
家……ね……
「ほいほい。了解」
片手を上げ、担任が職員室の方へ歩いていく。
軽く会釈して俺達も歩きだした。
「……家にちゃんと帰りついたのか?」
水原が独り言のように呟く。
「………」
俺は答えない。
本当は具合は悪くないし、あの状態で家に帰らず外をうろついてるはずもないだろう。
水原は何か言いたげに唇をすり合わせていたが、結局、それ以上は何も言わなかった。
水原は俺が掛上に対して思うところがあると勘ぐっているようだ。
間違いではない。
俺は
俺は───
掛上つばめを許せないのだ




