御守り
側面も貼り付け、おじさんが運んでくれた夕飯も食べて配信時間の夜の10時に備える。
「テストやるから、手伝って。」と優に簡易デスクまで呼ばれた。
もう外の神棚の前へ出ようとしてた淳は「?」と言う顔で近付く。
「手を握って大丈夫!って言ってくれる?」と優に頼まれた。
優の手をしっかり恋人繋ぎで握る。
「大丈夫だよ。優なら絶対うまくやれるから!
私が保証する!」淳が優の顔を見つめて微笑んだ。
「よしゃ!やれる!」と言いながら優は、淳の手に軽く口づけた。
淳は胎内洞の外に出て神棚に祈った。
「私達を出会わせた御神さま!
どうか成功するように!お願いします!」と心で祈った。
思えば元彼と10代から10年近く付き合ったけど、この3日より薄い内容だった。
元彼は自分のために悩んだり苦しんでも、淳の悩みは1言で片付ける。
誰か自分以外の人間のために心を砕くことは無かった。
キツイ言葉は言わないが、優しいかと言われると当り障りが無い言葉を選んでるだけで…
だから優と島に着いた時みたいに頭をグシャグシャにしたり首絞めたりケンカした事も無い。
不機嫌になったらダンマリを決め込む。
それで1ヶ月くらい平気なのだ。
結局、淳が折れる。
それでも悔しいのか?事あるごとに「女らしくない。
自分の立場をわきまえない。」とか講釈を垂れてきた。
思いやりはないが、説教のためには言葉を尽くす男だった。
優は全然人に説教しない。
話術で金を取れるレベルの人は、人に説教しないのだ。
「結婚しなくて良かった。あの人の為に何かしてあげる人生なんて嫌だ!
だったら亡くなった友達のために頑張る優を応援したい!」神棚を見上げながら思った。
「彼と別れさせてくれて、ありがとうございます!
もう少しで私は人生を棒に振るとこでした!」と心の中で感謝した。
さっきの御守りみたいな関係も無かった。
だいたい元彼は、何にもチャレンジしなかった。
人の悪口ばかり。頑張る人をバカにしてた。
だから、10年付き合っても、あんなシーンは無かった。
「たった3日で10年より濃い繋がりってあるんだ…エッチもしてないのに…」このまま家に帰っても、思い出すのは優だ、元彼は…すでに心に居ない事に気付いた。
2時間後、優はフラフラしながら出てきた。魂が抜け落ちたような顔だ。
「伝えたい事は言えたと思う。後は界さんに頼もう。
配信中に新しい情報も知らせてくれたよ。
稲葉がこの2年間ヨーロッパとアメリカの画商の所へ何回も足を運びクリスティーズにも出入りしてたって。絵を買いにじゃなく出品していたと。」クリスティーズとは、有名な絵画の売買オークションである。
最近では、値段が決まった瞬間に裁断されるパフォーマンスがバンクシーによって行われたので有名なオークションハウスだ。
「お疲れさま。良く頑張ったね〜」と言いながら優を抱き締めた。
亡くなった友人の魂が少しでも浮かばれた気がした。
もしかすると友人は、優のこの性格を知っていて後を頼んだのかもしれない…が、それは言わないでただ背中を何度も撫でた。




