加減
まさかの二回戦目。前回の模擬戦から一日しか空いていない。もしも全力で来られたらまたしても瞬殺されるだけだろう。
「昨日よりも人数が多いのでもう少し本気で行きます。しっかり防御してくださいね」
フレアさんが踏み込む。稲妻のような速さで接近。そして一太刀で全員が撃沈。
と、想像上ではなったのだが。フレアさんは昨日と同様に全速を出さない。女の子たちにも見えるスピードで接近。ゆるりと突きの動作を見せる。そしてフェイントもなく放つ一太刀。まるでお遊戯会のような早さの突きは、セイラちゃんに難なく躱された。
次の斬り払いは小学生のスイング並み。セイラちゃんはまたも難なく回避。しかし次に繰り出されたのは、フレアさん本来の一撃。
「まさか。一日でこうも上達するとは」
フレアさんの斬り下ろしに対して、セイラちゃんは剣で防御。苦しそうな表情は浮かべているが、なんとか防ぎきれた様子。
「では今日の模擬戦を開始します」
口を閉じると穏やかであったフレアさんの雰囲気は一変。そして彼の足は走り出す。
さっき接近して来たときとは段違い。重い鉄の塊を持っているとは到底思えぬ速度。しかし僕以外のみんなにも見えているようで、全員フレアさんの動きを目で追っている。
僕とフレアさんの視線が合った。一人目の標的は僕か。なら前回のリベンジといこう。
一歩踏み込む度にフレアさんの速さは増している。左右に動いていた彼が、剣を左脇に寄せた。そして僕に向けて突進。僕の右から水平に迫り来る剣。
受け流すにはタイミングが難しく、防御をするのですら間一髪。しかし。手加減されているにしても、受け止められた。
「油断しない」
フレアさんが口を開く。同時に繰り出される左拳。またもなんとか見切れるスピード。
フレアさんのパンチは僕の頭を掠め、僅かに触れた部分が熱を帯びる。今、彼の拳は僕の肩と頭の間。絶好のチャンス。
「顔に出過ぎです。戦闘中には意識して隠すように」
挟んで身動きを奪おうとしたのがバレた。フレアさんは剣と拳を引き後退。次の僕たちの出方を窺っている模様。
「レンさんとの一対一という訳ではないのですから、先程見せた連携を自分にも試してみていただきたい」
フレアさんは話し終えると、風刃剣もないのに迎撃の構えを見せる。キハの連射くらい叩き落としてやるという意思の表れ。
僕は前方に風刃剣を展開したままでキハに視線を移す。すると彼と、隣のセイラちゃんが頷く。幼馴染み三人の、息の合った攻撃をお見舞いしてやろう。
「まずは俺から」
防御されること前提の連射。狙い通り動かずに叩き落とすフレアさんをセイラちゃんと僕が左右から囲む。そして風刃剣で砂を巻き上げて彼に叩き付ける。
「左右から斬り掛かるだけかと思ってましたが、考えましたね」
僕とキハの攻撃を嫌えば、僕たちの弾道を見切ろうと距離を取るハズ。作戦通りなら、セイラちゃんの攻撃でトドメ。
すると予想を裏切り、砂を被るのも構わずにフレアさんは突っ込んで来る。彼は攻撃範囲まで近付くと、またも左脇から右に向けて斬り払う。そして防御した僕に向けて、背筋に悪寒が走るほどの凄みを利かす。
「今の自分には三人では不足。六人で連携を取ってギリギリ勝てる程度なのですよ」




