四対一
「僕は戦いの中で強くなれた。きっとレンもフレアくんや僕との訓練で強くなれるさ」
父さんの予測通りフレアさんとの訓練は僕たちを強くした。僕だけではなく、全員を。
たった一度の模擬戦で抜群の効果。きっと身体能力の向上との相乗効果だろう。いつもなら頼もしい限りたが、今回に限っては厄介でしかない。前回と同じ結果になるかも。
右から左へ水平に斬り付けたアグルさん。いくら偽物で殺傷能力はないとはいえ、鉄の塊なのだから結構な重みがある。なのに細身の彼女が何度も振り回せるのは、一度付けた勢いを殺さずに上手く扱っているから。
だとすれば、一度リズムを崩せば立て直すのに時間が掛かるハズ。丁度良いタイミングで大振りの横薙ぎが来る。前回と攻略法が同じなのは少し気になるけれど。
風がアグルさんの剣を捉えた。彼女に大きな隙を作らせるため、僕は全力で上へと受け流す。
「うっ」
鋭い痛みに漏れる呻き声。堪らず体勢を崩す。思わぬ反撃に隙を見せたのは、僕。
彼女は隙の多い大振りを弾かれると予測した上で、予め本命を蹴りにしていたのだ。
しかしアグルさんは空中にいる。着地までの無防備な間に反撃しなければ。
「反撃などさせませんわ」
左側からイオンさんの声。いや、囲まれている。だけど前回から成長しているのは彼女たちだけではない。僕だってやってやるさ。
左右から襲い掛かる薙ぎ払い。今の角度からすれば腹部への挟み撃ち。当たれば間違いなく大怪我。僕は想像剣を逆手持ちし、背面跳びで二本の剣の間を縫う。
「うそッ」
セイラちゃんとイオンさんの驚きの声が聞こえる。だが、いくら動揺させられても背中から着地したのでは隙を曝すだけ。
「すまないレン。私たちの勝ちだ」
後ろにいたパールの斬り下ろし。しかし、空を切る剣。当たる直前に僕は風刃剣を右へ向けて体当たりを決行。セイラちゃんは風圧で転び、イオンさんは僕の体の下に。
体重が掛かると危ないので着地の瞬間に僕は体を浮かせた。尻餅を突いたセイラちゃんも無事な模様。なんとか二人とも怪我させずに倒すことに成功。しかし、身動きできない僕の頭上にはパールとアグルさんの剣。今回も僕の負けだな。
「私を放っておけばレンさんに勝機がありましたのに。全く。お優しいんですから」
仰向けに寝転がったままで身をくねらせるイオンさん。立ち上がるセイラちゃんに手を貸していたパールからの視線が痛い。
ゴランさんの訓練二日目が終わりを告げ。
「みな良い戦い振りであった。次のフレアくんとの六対一の試合もその調子で」
聞き間違い。だよね。




