父の想いとパールの決意
フレアさんとの修行は毎日あるが、起きてすぐに修行開始という訳ではない。休日は昼食の後からという約束。なら起きてから昼までの間は自由時間。パールの願い、いや僕たちの願いも叶えられるだろう。
「じゃあ次の休みは早めに起きて二人で出掛けようか」
僕の言葉でパールの顔に輝きが戻る。彼女の喜びは僕の喜び。今日一日の疲れも吹き飛ぶ。なんて惚気たことを考えながら、玄関のドアを開く。
僕たちが帰ってからすぐに両親も帰って来た。そして一家団欒の時。四人で食卓を囲んで今日の出来事を話す。フレアさんに修行をつけてもらったこと。そして、彼のお祖父さんのことを。
「例えば僕の倒した相手にも家族はいるし、その人たちは僕を恨んでいるかもしれない。フレアくんの言うように、救えなかった人々もいる。戦争は綺麗事で済む訳がないんだ。だから彼の言う通り、戦争は避けなければならない」
話さなければ良かったのだろうか。いや、フレアさんの話は父さんには無関係とは言えない。父さんの様子からしても、救えなかった人たちのことを考えたことはあるようだ。
父さんの武器。いや、僕のイメージソード以外の武器では、相手を殺さずに倒すのは至難の技。しかも戦争となれば一対一の戦いという訳にはいかない。僕が戦場に立ったとして、今のような戦い方ができるだろうか。
「だから僕たち警察も、レンや役所に護衛を付けて、戦争を避ける手段を探す。できればエレバーに攻め込まなくて済む方法をね」
優しい笑顔を僕とパールに向ける父さん。フレアさんや警察の人が父さんを慕う理由が少し分かった気がした。
「なぁレン。今後敵が総攻撃をしてこないとも限らない。そのときには、私はカラルを守るバリアを置こうと思う」
ベッドの中でパールが僕を見つめながら話す。フレアさんや父さんの決意に思うところがあったのであろう。彼女が僕たちを大切に思ってくれるのは嬉しい。だけど戦争になったとしても一方に助力するというのは、彼女の今までの想いや努力を無駄にすることなんじゃないか。
「パールは今まで強い力を持つことを禁じてきたよね。どちらか一方に助力したら、君の今までの努力が」
僕の唇にパールが指を置く。彼女は悲しげな表情。だけど優しく微笑む。
「攻撃の手段じゃなくて、あくまでも守りのための力だ。この星の人がなるべく傷付かないために必要な物。だからレンが心配しなくても、大丈夫。ありがとう」
話し終えるとパールの表情はいつも通りに戻った。彼女は大丈夫だと言うけれど。悲しませないためにも僕にできることをしよう。
新しい決意を胸に、僕たちの新しい日常の初日は幕を下ろす。きっと守り抜くんだ。僕が、大切な友達と共に。




