名探偵と神の騎士団
当然のように職員室に呼び出される僕たち五人。事情を知らないアグルさんは、僕からの先生への説明に興味津々。身体を前のめりにして瞳を輝かせている。学校内でもお構いなしに襲われる以上、パールのことは伏せても、先生方には状況の説明が必要だろう。
「レンくんのお父様から職員は事情を聞いています。役所での事件に巻き込まれた時に、機械から武器を戴いたらしいですね」
父さんの千里眼にはいつも驚かされる。実際はパールを学校に編入させる時に、僕の隣の席を空けさせようとしたのかもしれない。けれども、今日は父さんのおかげで長い説明をしなくても済みそうだ。
生徒には先生方から説明するということ。僕たちは何か聞かれても先生からの説明までは何も答えないようにという注意。二つの説明を受けた後で職員室から追い出された。
「先生たち全員職員室で会議ですね。私たちは本当なら自分の教室に戻らないといけないんでしょうけど。さっきの説明ではお姉様の正体について説明されてませんでしたよね」
眼鏡の奥に光るアグルさんの目。名探偵アグルさんはパールの能力を目の当たりにしているのだ。先生から聞いた内容で納得しようハズもない。まるで全てを見透かしたかのような表情で僕に詰め寄る。
僕たちはもう一度屋上へと向かった。
屋上に着いた僕たち。パールに椅子を出してもらって腰掛けた。
「さっきも見たんだよね? パールの能力」
僕の問いにアグルさんは頷く。そして眼鏡を外してレンズを拭きながら、鋭い眼光を僕へと向ける。
「お姉様なら体が光り輝いても何ら不思議はありません。むしろ今でも輝いて見えます。ですが、人に頼まれた物を生み出される力。そして先ほどの先生方の説明。パールお姉様の正体は分かりました」
話し終えると彼女は眼鏡を掛け直した。いま僕を見つめるレンズの奥の目は、丸く柔らかなもの。まるでトリックを全て見破り、推理を披露した後の探偵のように。
おそらくパールからの自白を待っているのだろう。
「その通り。私は機械本人だよ」
腕を曲げて両手を肩の高さまで上げ、観念したという表情を見せるパール。カラルの。いや、世界の神様との邂逅にアグルさんは飛び上がった。そして目を潤ませながら口を開く。
「まさか麗しのお姉様が神様だなんて」
満足気な表情を通り越し、恍惚とした表情を浮かべる。気持ちは理解できなくもない。だけど、アグルさんの崇拝の対象は、彼女の反応にドン引いている様子。名探偵でも神様の心までは推理できないのだろうか。
「それで。レンさんが女神の騎士で、しかも彼氏。世界の破滅を目論む悪の組織から彼女を護ろうと日夜戦っているのですね」
物凄く長い時間パールを見つめていた目が僕を捉えると、昼休みの初めとはまるで別物の輝きを放つ。あまりの輝きに彼女の口から出た意味不明な設定が耳に入らないほど。
「後のお二人も聖なる騎士団のメンバーなのですね。そして今日からは私もその一員」
もう好きにして。




