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原初の星  作者: 煌煌
第九話 歓喜の刻
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五人の輪

「やったなレン。よく倒せた」


 耳元の嬉しそうなパールの声。そして彼女の柔らかい身体が傷付いた僕を癒す。僕自身の体にはあまりダメージはないが、既に鎧はズタボロで、相手の攻撃の激しさが窺える。おそらくあと数発受けていれば、いま感じている程度の痛みじゃ済まなかっただろう。


「そうだキハは?」


 キハの倒れていた場所に目を遣るとセイラちゃんが座り込んでいる。僕に背を向けているため、彼女の表情は分からない。


「どうして。なんでよ、キハ」


 一言一言間を置いて話すセイラちゃん。明らかにいつもとは様子が違う。敵の連打を受けたキハ。スピードの乗っていない状態の攻撃とはいえ、ただで済むハズもない。

 まさか、死んだというのか。




「いやぁ。まさかセイラがあんなに怒って敵を斬り付けるなんてなぁ。嬉しいぜ」


 キハの声が聞こえる。しかもとても元気そうな。親友の死によって霊の声が聞こえるようになったとでもいうのだろうか。


「だって。キハが死んじゃうと思ってぇ」


 セイラちゃんと会話が成立している。ということは彼女にも聞こえているということ。僕の想像ではあり得ない方向に腕が曲がっていて痛々しいキハの姿。

 意を決してセイラちゃんの陰に隠れているキハの様子を窺う。彼女の涙に濡れるキハの身体。地面に伏している彼の体には傷一つない。むしろいつもよりも笑顔が輝いている。


「なんで無傷なのよぉ。恥ずかしいよぉ」


 セイラちゃんの泣き声が辺りに響く。




「私が着けているのと同じペンダントを二人にも渡しておいたんだ。少しくらい攻撃されても痛くも痒くもないさ」


 少しどころではなかったと思うけど。なんて考えながら僕がキハに近寄った時。


「レンさーん。皆さーん。大丈夫ですかー」


 遠くから聞こえる大きな声。フレアさんの声だ。公園の時と同じように大きく手を振りながら近寄って来た彼。


「警報が鳴ったから来たのですが。みなさんご無事ですか?」


 結局一番ダメージを負っているのは僕。だけど全く痛くない訳ではなくても、昨日のことを思えば何ということはない。自信を持って大勝利だと言える。


「誰一人大怪我をしなくて勝てました。これもフレアさんの指導と、ここにいる四人のおかげです」


 僕は良い師匠と仲間に恵まれた。今日会ったばかりのアグルさんも、僕の中ではもう仲間の一人。


「いい仲間に恵まれましたね。それもレンさんの努力の結果かもしれませんね。そういえば襲ってきた敵はどこですか?」


 フレアさんに言われて思い出した。いくら言動が許せなくても、殺してはいない。校庭の隅に倒れているハズ。だった。

 叩き落とした砂場辺り。砂場近くの芝生の上。念のために校庭の隅から隅まで見渡す。念入りに何度も。だけど見当たらない。


「転送装置か!」


 すっかり忘れていた。折角みんなで力を合わせて倒したのに。逃げられたのでは喜んでいる場合ではない。




 また襲われることになるのか。脚の力が抜けた僕は腰から倒れ込む。

 見上げた昼下がりの空は、お昼休みの時と変わらず晴れ渡っていた。


「今日の稽古はナシにしましょう。学校が終わればそのままお帰りください」


 残念そうな顔で敬礼したフレアさん。校門まで下がると、部隊に指示を出している。




 午後の授業に戻ろうと校舎を見上げると、驚きの表情を僕らに向ける生徒たち。全ての窓から注がれる視線は、今までに感じたことのないもの。



「パールちゃんの彼氏とは違う意味で有名人になったんじゃないかな? これは」


 声がして振り返った僕の目に映るのは、何故か嬉しそうに僕を見つめる四人の顔。


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