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原初の星  作者: 煌煌
第九話 歓喜の刻
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一夜明けて

 世界中でパールだけが持つと思っていた特殊能力。なのにエレバーには少なくとも二人は魔法のような力を扱える人間がいる。僕の知る中ではカラルにはいない能力者。もしも敵側には当然のようにいるのだとしたら。今までとは比べ物にならないほどに過酷な戦いになるのだろう。

 不安の中にも僕は、思春期が故か少しだけ興奮を覚えていた。




 朝の日差しとパールの寝息。目を開くと、今日も輝いている僕の彼女。時計が鳴る数分前に目が覚めた僕は、握っていたパールの手を放すと起き上がった。


「なんで? どこにいくんだ?」


 床に足を着けた瞬間、背中にパールの声。


「起こしちゃったかな? 昨日は歯磨きもお風呂にも入れずに寝てたから。早く目が覚めたから済ませておこうかなって」


 振り返りながら話した僕の目に映るパールは、ベッドの上で眠い目を擦っていた。


「んぅ。なら私も下に行く」


 寝惚け眼の彼女はベッドから起きると欠伸を一回。右手で口元を隠す仕草が可愛い。




 パールにシャツの裾を掴まれながら階段を下りた。両親は既に起きていて、下りてきた僕たちを見つめて呆れ顔。


「今日も私たちの子供たちは熱々ね」


 右手を頬に当てて話す母さん。父さんは肩で笑うとテレビに視線を移す。




「役所の警備に九割の人員を割いているが、昨日のレンの様子を考えるともう少しこっちに人を付ける必要があるな。ゴランさんにも護衛の任務をお願いしておくよ」


 お風呂から出てきた僕に父さんがいつになく真剣な表情を見せた。気絶した僕は覚えていない。いや知らないが、きっと父さんも母さんも心配してくれたのだろうな。


「私も早めに帰れるように時間調節するからね。パールちゃんのいない装置の整備にもみんな慣れてきてるし、オートウォークの修理にも目処が付いたからね」


 先ほどの冗談をやっていた表情から一変して、真剣な顔を見せた母さん。真面目な二人の様子からも昨日の情景が目に浮かぶ。


「ありがとう。あっ、そうだ。ゴランさんにも修行を頼みたいんだけど。できたら父さんからも一言伝えておいてもらえないかな」


 もちろん僕の口からも直接頼む。だけど、事前に連絡をしておいてもらえればスムーズに事が運ぶかと思うのだ。


「昨日のうちに頼んでおいたよ。レンの様子もそうだけど、僕たち二人より慌てていて、心配そうに看病していたパールちゃんを見ていたら、何もせずにはいられないからね」


 座って朝ごはんを食べていた僕は、隣に座る彼女に視線を移す。


「それは言わない約束だろうグレン」


 慌てたパールは持っていたトーストを振り回した。彼女の反応からも容易に昨日の様子が伺える。


「まるでレンと一緒に学校に行きたいってダダを捏ねた時みたいに、この世の終わりみたいな顔してたんだから。あんまり心配掛けないようにしないとね?」


 学校に行くのを提案したのって、父さんと母さんのハズじゃ。


「なんで? どうして今バラすんだ? 二人して大馬鹿者だぁー」


 さっきまでのお通夜状態が嘘のように消えた食卓。僕の彼女も両親も、やっぱり最高。


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