繰り返し
消えた敵が現れるとすれば、背後。昨日のフレアさんのときには通用した想像剣を利用した加速戦法。今回は振り向くためだけに使う。完全に振り向く前に奴の足が見えた。だけど衝撃波は感じない。
「散々コケにしてくれたからなぁ。実力差を思い切り見せ付けてから倒さねぇと気が済まないんだよ」
また消えた。しかし奴が次の攻撃を避けるつもりならば勝ち目はある。回避できない技を出せばいい話。
「みんなにバリアを張って!」
パールが僕の言葉に反応した。即座に張られたバリアの中に僕も逃げ込む。
相手が攻撃した瞬間がチャンス。最大限の一撃を見せてやろう。
「またこれか。さっさと潰す」
男がバリアを蹴り飛ばす。何とか一撃目は防げた。次は僕の番。
突き出したダイヤの刃を、辺り一面覆い尽くすほどに大きくした。周りの建物や壁のギリギリで止まる巨大な刃。当然敵の逃げ場はない。
気絶しているハズの相手を捕まえようと、僕はバリアの外へと足を出す。すると、真上に影。奴の足が僕の頭へと直撃。
「まずは一回目だ。三度も恥を掻かされたことへの復讐のな」
敵の言葉を聞き終える前に、僕の意識は遠退いた。
気付いたらベッドの上。蹴られたことまでは覚えているのだが。
「気が付いたか。三時間くらい気絶してたんだぞ」
心配そうなパールの顔が近付く。彼女を笑わせる冗談どころか、返事の言葉すらも浮かばない。
「ごめん。負けちゃった。けど、どうやって家まで戻れたの?」
僕がやられた後で戦えるのはキハ一人。しかし銃が有効な相手とは思えない。なら、何があったのか。
「レンを倒した奴は、あと二回だって言って消えたよ」
僕に負けた回数。二回遭遇する前に、何とか対策を練らなければ。
「次までにできることを考えないとね」
焦る気持ちとは反対に働かない頭。フレアさんの修行の他にもできることを考えよう。ならやはり、父さんとゴランさんに師事すること。
「まだ戦うつもりなのか! あと二回って敵の言葉を真に受けたらダメだ。次はレンが殺されるかもしれない。そんなの嫌だ」
泣きそうな顔をされた。彼女に幸せになって欲しくて戦うのに。今のままだと戦っても心配させるだけ。なら、二人で逃げようか。
「もし逃げたくても、どこに行けば安全で、君は心配することなく幸せになれるのさ」
働かない頭が導き出した言葉。何も考えられないからと言えば許されるだろうか。いや例え彼女が許しても、僕自身が許せない。
「パールごめん。自分の無力さに腹が立」
強く抱き締められた。柔らかい彼女の肌。心地よい感触が伝わり、僕の気持ちを穏やかなものへと変化させる。
「レン。もしもレンが私のために死ぬようなことがあれば、私にはもう役目しかなくなるんだ。だから、絶対に死なないで」




