1話
我々ーつまり中央研究室の者のうちのリーヴィアを除く4人ーは会議をしていた。
「つまりいうと、半年間もの間中央研究室は生活魔術を研究していないんだ。」
所長が問題を提唱した。
ああ、所長という呼び名だが、旧友の「所長」に雰囲気が似ているというだけだ。
もっとも、本人も近頃は所長で反応するようになったし、呼びかける側と呼びかけられる側が同じ名を認識している以上、個体識別用の名前の最低限の役割を果たしている。
問題はないのだから、由来のよくわからないあだ名だと思ってくれれば良いのだというに。
むう、俺はシルヴァーヌスという呼び名であるところを、彼はシルヴァと短縮して呼ぶ。それと大差は無いはずだ。
いや、そもそも俺の名前の発音はシルヴァーヌスでは正しくないのであり…
今大事な話はそこではなかったな。
「でも、私が思いつくすべての生活に使える魔術は作りました。もうアイデアがありませんよ。」
ふっ、アルカヌスもまだ二流だな。
「アルカヌス、それは違うぞ。アイデアは探すものなのだ。俺は平民の生活の視察を提案する。」
「いいですね、それ!
ではでは、私に視察を任せてください!平民の出なので、より多くの意見を聞かせてくれるかもしれません。」
「勝手に話し合いを進めないように。ただ、視察については私も賛成だ。
あとは誰が行くか、だけど、ルーディス一人だとちょっと心配だね。危なっかしいというか…」
全くだ。
本人は遺憾らしいが。
「私は平民ですよ!いつもあそこで暮らしてますから、危なくないです」
どうやらわかっていないらしい。…仕方ない。教えてやろう。
「でも、仕事を始めてから行っていないのだろう?
その小綺麗な格好で行ってみろ。貴族か、せいぜい成金だと思われるだろうよ。一人で歩いていたら、確実に僻みや金狙いで襲われる。いいか、お前を取り巻く環境は変わったのだよ。
だから、俺が共に行こう。」
所長もアルカヌスも驚いたように固まってしまった。
「シルヴァ、今、出掛けるって言ったかい?」
「シルヴァーヌス君が外出を…?これは面白…いえ、一大事です。リーヴィア嬢にも伝えなくては!」
ふん…遺憾だな。俺だって必要とあらば外出だって辞さないのだ。
と、今度はルーディス嬢が驚いたようだ。
「出掛けるだけでそんな反応をされるなんて、どんな生活をしているんですか?」
「研究室に泊まりきりなだけだぞ。」
「家にすら帰っていないと!?」
驚くと目が丸くなる、というのは本当らしい。今まさに、彼女の目は綺麗な丸だ。
いや、家に帰っていないというよりももはや、
「何、もはやここが家のようなものだ」
ああ、ルーディス嬢も固まってしまったか。
さてと、固まっている者たちは放置して俺は外出の準備をするか。




