終章 chapter02
出勤した社長と相談役を迎えたのは、全社員とコンサルタント・田中優子の拍手だった。4階事務所には全社員の姿がある。代表して植田奈緒美が2人に小さな花束を渡した。
「木賊工業を守ってくれてありがとうございました」
奈緒美の言葉に誘われた涙を堪えながら、治は生還の挨拶をした。公安警察による、襲撃のような家宅捜索を受けた日から約2年。そして逮捕から1年半。社員たちの名誉に傷を負わせたこと、経営悪化により心配をかけていること、いくつも詫びの言葉が並んだ。「お父さんたちは悪くないのに」と彩花は思うが、これが父と祖父の性格だ、仕方ない。
作業着姿の篠原が言う。
「相談役、社長。祭りの準備はできています。といっても今年は相談役の焼きそばと、キッチンカーが1台だけですが……」
「でも社員の家族を中心に参加希望者は80人を超えています」
「何もちっちゃくなることはありません! やりましょう!」
2人の逮捕直前、社内カフェスペースでの小さな決起集会。誰かが言った「俺たちは木賊っていう名前に誇りを持ってるんです」という声が彩花の耳に蘇る。そうだ、これが、じいちゃんが作り、お父さんが育てた木賊工業なんだ。
「じゃあ2年ぶりになるが、決行しよう!」
高らかに治が宣言した。
木賊工業の再スタートにも儀式が必要だ。3週間後のトクサ祭りが、その役割を果たす。




