第23.4話 静けさの中で、息を整える
本作品は、
小説家になろうにて掲載中の
『異世界転生した理系男子が、地味スキルで冒険者をやっていたら、なぜか誰からも攻撃が当たらない件』
の年齢制限部分を、
別作品として掲載したものです。
ぜひ、本編もお楽しみください。
第23.4話 静けさの中で、息を整える
ミアはベッドの上で体を横にした。
その動きに合わせて、布がわずかに揺れる。
寝台が静かに沈み込み、
すぐに元の形に戻った。
コーイチは少しだけ様子を見てから、
ゆっくりとその隣に腰を下ろした。
ベッドが小さくきしむ。
その音が、妙に大きく聞こえた。
二人の距離が近づいたことを、
部屋そのものが知ってしまったような気がする。
ミアは仰向けのまま、
視線だけをコーイチに向けた。
「……ねえ」
「はい」
ミアは少し笑った。
「そんなに構えなくてもいいのに」
コーイチは小さく息を吐いた。
「そう見えますか」
「うん」
ミアの指が、そっと動く。
コーイチの服の端を、軽くつまんだ。
強く引くわけではない。
ただ、そこに触れているだけ。
コーイチはその指先を見た。
力は弱い。
本気で引けば、すぐに離れてしまいそうなほど。
それでも、
離してほしくないと思っている自分に気づく。
ミアが少し体を起こした。
肩にかかっていた布に指をかける。
するり、と布が落ちた。
柔らかな布がベッドに触れる小さな音。
コーイチは一瞬だけ息を止める。
それから、ゆっくりと自分の服に手をかけた。
布が擦れる、かすかな音。
急がない。
丁寧に。
コーイチはミアの服にも手を伸ばす。
布が外れるたびに、
小さな音が静かな部屋に落ちていく。
やがて二人は裸のまま、向かい合っていた。
胸の鼓動だけが、やけにはっきりしている。
コーイチは喉が少し渇いた気がした。
そして、ミアとコーイチの視線が重なる。
それだけなのに、
ふたりの間の空気が少しだけ変わった。
コーイチはゆっくりとミア身体に手を伸ばした。
触れるか触れないかの距離で、一瞬止まる。
ミアは逃げない。
むしろ、ほんの少しだけ体を寄せた。
指先が肩に触れる。
ミアの呼吸が、わずかに乱れた。
その温かい息が、コーイチの胸に触れる。
「……」
小さく息がこぼれる。
コーイチはその反応を見て、
少しだけ様子を確かめるように手を動かした。
ミアは目を細める。
それから、小さく笑った。
「コーイチって、ほんと……真面目」
「そうでしょうか」
「うん。でも……嫌いじゃないよ。」
ミアは体を少しだけ動かした。
距離が、またわずかに近づく。
呼吸が同じ空間の中で重なっていく。
ミアもコーイチも、
もう何も言わなかった。
ただ同じ距離のまま、
同じ夜の中にいる。
静かな時間が、
少しずつ流れていく。
夜は、まだ続いていた。




