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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season7 ― 家族システムのアップデート ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season7 ― 家族システムのアップデート ―
10/10

エピローグ 風の記録 ― ありがとうの場所 ―

全てが終わったあと、なぎくんは再び屋上へ。

風と光と香りが、あの日と同じように包み込む。

午後の陽射しが、やさしく屋上を包んでいた。

風に揺れるハーブの香りが、どこか懐かしい。

美鈴みすずガーデン”のプレートのそばに立つなぎは、

静かに空を見上げた。


遠くに見える海が、光を反射してきらめいている。

手すりの向こうには、季節を告げる白い雲。

――その全部が、母と過ごした記憶と重なって見えた。


「母さん。

 “ありがとうが響く場所”を、ようやく作れたよ。」


風がひとすじ、頬をなでていった。

まるで「聞いているよ」とでも言うように。


「失敗もあったけど……

 でもね、母さんの声があったから最後まで進めた。

 父さんも、兄さんたちも、少しずつ笑ってる。

 病院の空気が、ほんの少しあたたかくなったよ。」


しゅうたまきが屋上の入り口に姿を見せる。

環が手を振りながら言った。

「凪くん、風が気持ちいいですね。」


凪は振り返って笑った。

「はい。……まるで母さんが吹かせてるみたいです。」


「だったら、あとはもう心配いらないな。」


「はい。

 僕の中で、ちゃんと“風”が流れていますから。」


3人で並んでベンチに腰を下ろす。

屋上の隅で、風鈴が小さく鳴った。


「……なんだか、ぽかぽかですね。」


「そうだな。

 やっぱりこのチームは、風通しがいい。」


凪は微笑んで空を見上げた。

「母さんの“支え合う心”が、ここまで届いたんですね。」


陽光が、3人の肩をやさしく照らす。

その光の中で、凪は静かに目を閉じた。


――データの中の声も、風の中の想いも、

全部、今につながっている。


遠くで誰かが笑う声がした。

たぶんそれは、あの“voice_log”の中の笑顔のひとつ。


凪は胸の奥で、もう一度そっとつぶやいた。


 >「ありがとう、母さん。」


風が吹いた。

ぽかぽかとあたたかく、

それは“記録”ではなく“生きている声”のように、

彼の頬を撫でていった。


――そして物語は、静かに次の季節へと進化していく。

「ありがとう、母さん。」

その一言が、すべてのシステムをやさしく再起動させた。

――風は続く。ぽかぽかと、あたたかく。

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