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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season7 ― 家族システムのアップデート ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season7 ― 家族システムのアップデート ―
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第8章 再構築 ― 支え合うシステム ―

夜明けのアークシステムズ。

仲間とともに、新しい「心のシステム」を描く夜。

夜明け前のアークシステムズ。


窓の外にうっすらと白い光がにじみ、

モニターの青い光がオフィスを静かに照らしていた。


(しゅう)がコーヒーを片手に、(なぎ)の隣に座る。

(たまき)はデスクの端にそっと腰をかけ、

手元のメモを見ながら微笑んだ。


「……お母さんの声、聞けたんですね。」


(なぎ)は頷き、モニターに映るフォルダを開いた。


画面には“voice_log”の文字。


もう、赤いエラーの点滅はどこにもなかった。


「母さんが残した言葉……

 “ありがとうが響く場所を作りたい”って。

 それが、今ようやく形にできる気がします。」


「それをどう形にする?」


「“声を記録する”んじゃなくて、“心が届くルート”を作るんです。

 患者が医師に“ありがとう”を送ったとき、

 そのデータが院内ネットワークを通ってリアルタイムに可視化されるように。

 数値じゃない、“温度”の流れです。」


(たまき)はその言葉を聞いて、そっと目を細めた。


「……ぽかぽかですね。」


(しゅう)が笑いながら言う。


「さすが“ぽかぽかの生みの親”だな。」


(なぎ)は少し照れくさそうに笑った。


「柊先輩の“自由設計”思想をちょっと拝借しました。」


「ふっ……いいだろ。著作権フリーだ。」


「じゃあ、“ぽかぽかライセンス”ですね。」


3人の笑い声が、静かなオフィスにやわらかく響いた。


その空気の中で、(なぎ)は新しいコードを書き始めた。


キーボードを打つ音。

風のように軽やかで、確かなリズム。

画面の上には、新しい設計図が現れる。



 > “HeartSync System Ver.2.0”

 > — 人をつなぐ、心の記録 —



「……いい名前だな。」


「この“Sync”は、システムだけじゃなくて、

 “想いを同期させる”って意味も込めてます。」


(しゅう)は満足そうに頷き、

「よし、今日の昼にはテストだ。病院に戻るぞ。」


「……うまくいきますよ。」


「うん。母さんの声が、今もちゃんと聞こえるから。」


窓の外の空が、ゆっくりと白から金色に変わっていく。

夜を越えた光が、アークシステムズのロゴを照らした。



◇◇◇



(なぎ)メディカルクリニック・午後]



再構築されたシステムの運用テストが始まった。

院内の各端末に、患者とスタッフの“声”がリアルタイムで流れ始める。



 > 「先生、ありがとうございました。」

 > 「今日も笑顔で来てくれてうれしいです。」

 > 「お疲れさまでした。」



そのたびに、画面に小さな光の波が走る。

スタッフたちが自然と笑い、

兄たちの顔にも、わずかに柔らかな表情が浮かぶ。


匠翔(たくと)

「……これは……」


奏翔(かなと)

「患者の反応データと同期している?

 まさか、感情ログを可視化しているのか?」


(なぎ)

「はい。

 “言葉を介した感情の共有”をネットワーク化しました。

 誰かが“ありがとう”を言えば、院内すべてにその光が届く仕組みです。」


匠翔(たくと)はゆっくりと息を吐いた。


「……悪くない。」


奏翔(かなと)

「理想論かと思っていたが……現実に動いている。

 “理想”も、設計できるものなんだな。」


その言葉に、(なぎ)は小さく笑った。


背後から父・陽一(よういち)の声がした。


「よくやったな、陽翔(はると)。」


「……父さん。」


「人を救うのは医療の力だけじゃない。

 想いを伝える仕組みもまた、医療の一部だ。

 おまえは、それを証明してくれた。」


村中澪(むらなかみお)も微笑んで頷いた。


美鈴(みすず)も、きっと同じことを言うわ。

 “ありがとうが響く場所”を、本当に作ったのね。」


海翔(かいと)が肩を叩く。


「さすがハルだな。

 母さんの“風”を、ちゃんと形にした。」


(なぎ)は少し照れながら答えた。


「母さんの記録が、僕を導いてくれました。

 だからこのシステムは――“母さんの声”でもあるんです。」


画面の中で、小さな光が波のように広がる。


まるで病院全体が、ひとつの心で呼吸しているかのようだった。


「……これが、僕の“ぽかぽかシステム”です。」


(たまき)が微笑み、(しゅう)が静かに言う。


「アップデート、完了だな。」


窓の外の風が、カーテンをやさしく揺らした。


その風の先に、微かに母の声が聞こえた気がした。



 > “寄り添う心は、いつか誰かを救う。”



(なぎ)は空を見上げて、小さく呟いた。


「……ありがとう、母さん。」


――そして、優しい風がまたひとつ吹いた。

“HeartSync System”――人をつなぐ心の記録。

母の言葉がデータとなり、家族の想いが光となる。

寄り添う心は、確かに存在していた。

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