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ロジーナ弟子をとる  作者: 岸野果絵
中級魔術師編
98/101

サーナ、クレメンスの館に到着する

「素敵なとこ!!」

 サーナはクレメンスの館に到着するや否や、大興奮したように両拳を握って叫んだ。

 ロジーナは突然のサーナの大声に驚き、一瞬怯んだが、すぐに気を取りなおして微笑んだ。


「クレメンス先生、初めまして。グリンテル門下のサーナです。よろしくお願いいたします」

 出迎えたクレメンスに向かって、サーナは礼儀正しく挨拶をした。クレメンスは優しく微笑みながら頷くと、ルーカスを紹介した。

 アリアは挨拶と自己紹介を交わす間が待ちきれない様子で、落ち着きなくそわそわと身体を揺らしていたが、一通りの挨拶が終わると、

「サーナちゃん。案内してあげる」

 と、サーナの腕を引っ張るようにして、自分の部屋へと誘っていった。


「ほんと、落ち着きないんだから……」

 アリア達の後ろ姿を眺めながら苦笑するロジーナを、クレメンスは「フフフ」と笑いながら眺めていた。


***


 アリアの部屋についたサーナは、飛びつくように窓へと移動すると、アリアに断って窓を開けた。

 軽く目をつぶり、窓の外に向かって両手を大きく広げ、

「お友達がたくさんっ」

 と、うっとりした声で感嘆のため息を漏らした。

「お友達って?」

 アリアの問いにサーナは満面の笑みを浮かべながら振り向いた。

「動物さんたちです。ここは私のところにはいない種類のお友達がたくさんいます」

 目を輝かせ軽く顔を上気させながらサーナは再び窓の方に向くと、上半身を窓から乗り出し、外の空気を味わうかのように空気をいっぱいに吸い込んだ。

 アリアはそんなサーナの背中をしばらく眺めていたが、ふとロジーナの言葉を思い出し、

「ねぇ、サーナちゃん。村を案内しようか?」

 と、提案した。


「いいんですか!! 」

 サーナは飛びつくように振り向いた。

「うん」

 アリアはサーナのテンションに少し気後れしつつもニッコリ微笑んだ。


*****


「ただいまぁ~」

「お帰りなさい」

 心なしかゲッソリした様子のアリアと、それとは対照的なニコニコ顔のサーナに、ロジーナは首をひねった。

 アリアは無言で、少しヨロヨロと自室へと歩きだす。サーナはロジーナに向かってニッコリとお辞儀をすると、

「この村はとても素敵です」

 と、言って軽い足取りでアリアの後をついて行こうとした。その後ろ姿をなんとはなしに眺めていたロジーナだったが、サーナの足元をみた途端、

「ちょ、ちょっと、サーナちゃん」

 と、慌てて引き止めた。

「あなた、泥だらけじゃない! 靴はどうしたの?」

 サーナの足元は、まるで沼にでもハマったようにドロドロだった。しかも、靴は片方しか履いていない。よく見れば、足元だけではなく、サーナの服はところどころに泥がこびりついていた。廊下には、サーナの足跡がくっきりとついている。

 

「ああ、サーナちゃん。お外で待っててっていったのに……」

 ロジーナが声に振り向くと、タオルを持ったアリアが泣きそうな顔で立っていた。

「とりあえず、お風呂、お風呂」 

 これ以上廊下を汚されてはたまらない。

 ロジーナはニコニコ顔のままキョトンとしてるサーナを持ち上げると、猛スピードで風呂場へ移動させた。


***


「アリア、何があったの?」

 サーナを強制的に風呂に追いやったロジーナは、サーナの着替えを持ってきたアリアに尋ねた。

「サーナちゃん、急に『お友達っ』って言ってタデタ沼に……」

「え? まさか、入ったの?」

 アリアは眉間にシワを寄せながら大きく肯いた。

 タデタ沼は村の外れにある底なし沼だ。見た目は静かに澄んだ湖にみえるが、まかり間違ってハマってしまったら抜け出すことは容易ではない。たまに観光客がハマって大騒ぎになる。村人は絶対に近寄らない沼だった。

「よく無事で……」

「徳丸屋さんが助けてくれて……」

 徳丸屋は村一番の大きな温泉宿で、そこの主は気さくで世話好きな人だ。徳丸屋や仕事柄もあり、よく沼にハマった観光客を救出していた。

 

「後でお礼に行かなきゃ……」

 もしかしたらサーナは、ロジーナが思っていたようなしっかり者ではなく、とんだ問題児なのかもしれない。

 ロジーナはサーナのニコニコ顔を思い浮かべ、軽くため息をついた。

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