コーネリア、引っ越しする
ロジーナは居間でくつろいでいるコーネリアの隣に座った。
「お部屋探し、難航してるの?」
コーネリアは驚いた様子でロジーナをみた。
「忘れてたぁ~」
「え?」
ロジーナはポカンと口を開ける。
「ごめん~。居心地良すぎて、すっかり忘れてたの~。すぐに探すから、もうちょっと」
コーネリアは手を合わせて肩をすくめた。
「そ、そうなんだ……」
ロジーナはホッと息を吐いた。
*****
コーネリアは荷物を足元に置いた。
「クレメンス先生。お世話になりました」
ペコリとお辞儀をして、ロジーナの方をむいた。
「ロジーナちゃん、ホントにありがとねぇ~。また遊びに来てもいい?」
コーネリアは微笑みながら小首をかしげる。
「ええ。いつでも」
ロジーナもにっこり微笑んだ。
「アリアちゃん。また遊ぼうね~」
「さびしいですぅ。コーネリア先生。絶対来てくださいねぇ」
アリアが甘えた声を出した。
「ルーカス君。試験頑張ってね~」
「はい。ありがとうございます」
ルーカスは深々とお辞儀をした。
「コーネリア、送るわ」
ロジーナはコーネリアの荷物を持とうとする。
「ううん。大丈夫ぅ」
コーネリアは、ロジーナが持つ前にさっと荷物を持ち上げた。
「ほんとに、ありがとうございました。それじゃあ、またね~」
コーネリアはそう言うと姿を消した。
「ずーっといればいいのにぃ」
アリアは頬を膨らませた。
「そうもいかないの。アリア。食事当番、あんたでしょ」
ロジーナは少しきつめの声で言った。
「はーい」
アリアはふてくされた声で返事をし、てけてけと台所へ向かった。
「ったく。かわいくないわね」
ロジーナは舌打ちをしながらいうと、ふとルーカスの方をみた。
ルーカスは先ほどまでコーネリアがいた場所を見つめていた。
ロジーナは、どうにもいたたまれない気持ちになった。
やっぱり、ルーカスはコーネリアに恋をしている。
そういう目で見るから、そう見えてしまうだけなのかもしれない。
それでも、そうとしか思えない雰囲気がある。
今、ルーカスの心の中は複雑な想いに揺れ動いている。
ロジーナはルーカスに何か言ってやりたいと思った。
でも、言葉が出なかった。
「ルーカス行くぞ」
クレメンスの言葉に、ルーカスははっとしたようだった。
「はいっ」
返事をして、慌てた様子でクレメンスの後を追っていった。
ロジーナはそんなルーカスを眺めながら、はぁっとため息のような安堵のような息を吐いた。
ルーカスの気持ちを考えると、とても複雑な気分だった。
いけない。
気持ちを切り替えなくては。
ロジーナは首を振ると、気合を入れて歩き出した。




