ロジーナ、ダウンする
朝、アリアがいつものように朝食の準備をしていると、クレメンスがやってきた。
「アリア。すまないが、なにか消化の良いものを作ってはくれないか?」
アリアはキョトンとした顔で首をかしげた。
「ロジーナの体調がすぐれないのだ」
クレメンスは少し視線を落とし気味に言った。
「え?お師匠様が……。お風邪ですか?」
そういえば、昨晩のロジーナはどことなく元気がなかったような気がする。
「いや……」
クレメンスは視線を逸らす。
「どうやら食あたりらしい」
「食あたり?」
「昨日、納品の帰りに買い食いをしたらしい」
クレメンスは少し言いにくそうに言った。アリアは無言でうつむいた。
買い食い……。何を食べたのだろう。疑問がわいたが、すぐに消えた。クレメンスが来たということは、ロジーナは立ち上がるのも大変なくらい体調が悪いということだ。どんな様子なのだろう。大丈夫なのだろうか。
「大丈夫だ。心配はいらない。2.3日もすれば回復するだろう」
クレメンスはアリアに優しく笑いかけると台所を後にした。
アリアはおかゆを持って部屋をノックした。クレメンスがドアを開けてくれた。
「アリア。ありがとね。そこに置いといて」
ロジーナの声にはいつもの元気はない。
「大丈夫よ。いつものことだか……おぇぇ」
ロジーナは手にした袋に顔を突っ込む。クレメンスはロジーナの背中をさすってやる。
「お師匠様」
「あ、近寄らないで。感染るヤツかもしれないから」
ロジーナは手をフルフルと振る。
「ふぅ。もう吐くものもないのよ……」
吐き気が治まったロジーナは力なく仰向けになる。目の周りが軽く落ち窪み、げっそりした顔をしている。
「アリア。拾い食いしちゃダメよ」
ロジーナがポツリと言う。
「お前が言っても説得力がないだろ」
クレメンスが苦笑いする。
「あら。私が言うから…説得力があるのよ。こんな風には…なりたくないでしょ。ねぇ…アリア」
ロジーナは力ない声で途切れ途切れにいう。アリアはどう反応していいか戸惑い、曖昧な笑みを浮かべる。
「まったく。その様子では心配はいらないな」
クレメンスはため息をつくとゆっくりと立ち上がった。
「アリア。今日の訓練は私が行う。準備してきなさい」
「はい」
アリアは返事をすると勢いよく部屋から出て行った。クレメンスもゆっくりと出口に向かう。
「悪いわねぇ。よろしく~」
ロジーナはそのままの態勢で、手だけをフリフリ振った。




