エピローグ
その後、何とか私達は南軍残党や逆卍党の残党を包囲し確固撃破して、撤収が終わると飛行戦艦はどんどんと、地の底に沈んで行った。
カグラの処遇については結局の所、フジオカ隊長に死刑は免れるようにと進言して引き渡す。
私の事を茫然自失した彼女は、それでも怨念の籠った目で見ていたけど……まぁ、殺さないと決めたのなら、やり遂げるだけよ。
……そして今、私はハワイのパールハーバーに居る。
軍事基地があるため、軍人である私たちは適当に書類を作れば簡単に入れる。
青い海に椰子の木が至る所にあり、赤道近くのため肌を真夏のような日の熱が刺激する綺麗なビーチだ。
そんなビーチで私達はバカンスを満喫していた。
「……隊長!蟹、蟹が居ますよー!」
学校で着るような色気のない水着を着た来夏がそう言って、岩礁のある場所からこれまた子供のように手を振ってはしゃぎながら私に示す……私は海水に触れたら体が錆びそうという理由で海は禁止されてるから……海で遊ぶ来夏やリチェットの姿は、うらやましくはある。
まぁ、一度死んだようなものだったし贅沢は言わないし言えないけど……
「はいはい、海で溺れないようにね」
日傘に隠れ、シートの上に座った私は来夏に返す。
私は日陰から、さまざまな事を考えた。
私の体の事、MAOSの事、そして、店長さんが作ったと思われる文明が、何で今の形になったのかということ。
まぁ大災害があってこうなったのは確実だろうけど……
そんな事を思案していると、私の隣に人の気配がいきなり現れた。
気配の方に私は首を向ける。
そこに居たのは、店長さんの姿だった。
「……久しぶりね、店じまいをしたみたいだから、てっきり会えないかと思ったわ」
「ええ、私も追われていたから、不本意だけど店を別の場所に移すことにしたのよ」
「借金取りから?」
私は店長さんの冗談めいているようで、真剣な言葉に対し、冗談のように返す。
「現実からよ」
「現実、ね、要点はぼかすのが趣味なの?」
「昔からの癖よ、曖昧な言動を好むのは」
「それに何の意味があるのかしら?」
テンポのいい皮肉と冗談の応報に、自然となってしまっていると私は認識する。
「もしここに盗聴器が仕掛けられた場合、私の居場所がバレることになるわよ?」
冗談めいた言葉、でも彼女の表情は真剣そのものであった。
「バレる、ね……ところで、貴方昔の人よね?何で貴方が作った文明が滅びたか知らない?」
「知らないわよそんなこと、寝てて起きたら滅んでただけよ」
素っ気無く彼女は返す。だけど、彼女の足元を見ると『これ以上深入りするな』そう、砂で文字が書かれていた。
過去に何があってこうなったか、彼女は知っている、けど、話すことは恐らくない。
知りすぎることは幸せとは限らないという信念に基づき、私のためを思ってるのだろうか。
それとも、言えない理由があるのだろうかと私は考える。
「まぁいいわ、私の力で調べるから。それで、挨拶しに来ただけ?」
私はこれ以上の話はナンセンスだと考え、自分の意思で調べると意思表示を行った後、話を別のところに移す。
「そうね……MAOSの調子はどうかなと聞きに来たって所かしら?」
店長さんは少し呆れた顔になった後、間を置いて表情が明るく、柔らかいものに変わる。
「まぁ、結構便利に使っているわよ……ところで店長さん、貴方、結局何者なの?それぐらいならぼかさないでも大丈夫よね?あんなでっかい機械を作ったり、この文明が生まれる前から存在していたりするけど……」
「……人間よ、尤も、貴方より高度な機械化をされた人間、だから不死に近い状態になっているだけ、ただのわがままで、身勝手などうしようもない人間よ」
店長さんはちょっと申し訳ない表情を私に浮かべる……
「そう、じゃあ泳げるの?」
私は彼女の記憶を思い出す……海に入る時は大抵、強化服を着てたわね……生身で泳げるのかしら?
「……強化服を着れば何とか、宇宙遊泳なら簡単だけど、そもそも体が水に浮かない性質だから泳ぐのは苦手よ」
「……同じようなボディに改良してもらいたかったのに」
そう、私は残念そうな顔を浮かべ冗談を言う。
「開発機材なんて全部どこかに捨てたから、そういう事はできないわよ」
「捨てたの?」
ちょっと驚く、便利そうなものが多いから、てっきり保管してるかと思ったわ。
「ええ、今の私はただの何かに追われる変なお店の店長、そのMAOSも渡しちゃったから、本当にただの女の子ね」
「ただの女の子、ねぇ……」
「ええ、だからこそ私に頼らないで済むようにあんな船を作ったわけだけど……でも、それにより血が流れる結果となった……それについては本当に、私も悲しいし、申し訳ないと思ってるわ」
「それを止めるために私にMAOSを?」
私は考える、たぶんだけど、イドリスは天才的な頭脳を持っている、ならそこまで計算した上で、私にMAOSを渡したのかしら?
「いいえ、ぶっちゃけてしまえば貴方を見てやな予感がしたから渡しただけよ」
「……私が居なかったらどうしてたつもりよ」
「まぁ、AIがあるし一応大丈夫だったはずよ……あの子寂しがり屋になってそうだから、臨時ユーザーの命令でも従順について行きそうだったけど……まぁ、そうなったらその時はその時よ……まぁ、MAOSを渡した人に頼んで、止めてもらうかしら?」
「あはは……」
私は苦笑いする、何千年も生きてる『ただの女の子』が自分が作った古代兵器を止めるために選ばれしものと一緒に旅する姿を想像したら……これただのファンタジー小説じゃない。
「……今回は本当にありがとう、貴方のおかげで一旦一応は世界の危機は去ったわ……それじゃあ、また、寂しくなったら遊びにでも来るわよ」
そう言ってイドリスは立ち上がり、私の背後に向け歩み始め、去っていく。
私が振り向くと、そこにはイドリスの姿は消えていた。
そしてまた青い海を見る。
すると、リチェットが泳ぎ終わり、上がり近づいて行く。
水着は派手なビキニで、胸も大きいリチェットにお似合いよね……あの胸はやっぱり少しうらやましい。
「……さっきの子は、知り合いですの?」
「ええ、まぁ友達よ、変わり者だけど、悪い子じゃないわ」
「軍人には見えませんでしたけど……まさか、密航させました?」
「そんな事する訳ないじゃない、確か父親が軍人だって言ってたから、そのコネじゃないの?」
私は笑いながら、それっぽい嘘をつく……実際どうやって来たのかしら……テレポート?
そう考えていると、今度は水着じゃなく、研究用の白衣のマッドナー博士が近づいてくる……彼がイドリスと出会ったら、イドリスが泣くまで色々質問しそうね……三日ぐらい。
「あら、どうしたの博士?」
「軍本部から入電が来た、どうにも今度はワシントンでテロが行われると情報を掴んで、こちらも行かなければならないと言う話だ」
「なるほど……休暇は長く続かない、と言う事ね」
まぁ、合衆国市民の命を守るのが私の仕事、仕方が無いって言えば仕方が無いけど、苦笑したくもなる。
「敵組織は?」リチェットだ。
「詳細は不明、ただ今度は世界赤化同盟とかそういう名前の連中だ」
「詳細不明ね……まぁ油断しなければどうにかなるわよね……来夏、仕事よ!」
私はそう、岩礁地帯で遊んでる来夏に向け叫ぶ。
「あ、はーい!」
そう言って来夏は駆け寄ってくる、完全にここだけ見ると子供ね……
「さてと……全員集まったわね、それじゃあすぐに着替えて行くわよ、出発予定時刻は2時間後の15時、それまでに支度を終えて頂戴」
私が命令を下すと仲間は「了解!」と返し、私は立ち上がる。
アレンや逆卍党との戦いは終わった、だけど私の軍人としての日々は終わりを告げてはいない。
まだこの事件には黒幕だっているし、店長……イドリスさんの言ってた事も気になる。
だから私はまだ戦わなきゃいけない、軍人として、そして一人の力を持った人間として。
力を嫌悪し、自分が無力である事を選ぶ事もできた。
だけど、私はその道を選ばなかった、それは最初は復讐の為。
でもそれが終わった今、何の為だと言われたら、市民の為なんていう月並みな理由しか答えられない。
けどまぁ、そんなもので別に私はいいのだ、市民の為に戦って働いて、たまに広告塔みたいな事をしたり、世界に蠢く影を独自に調査して、そうして日々を派手かつスリリングに暮らす。
軍を辞めたくなったら適当にやめるけど、まだまだやる事は多いし、辞めるのは当分後になるだろう。
でも私は深刻ぶらず、悲劇にも酔わない。
人生を面白おかしく楽しく暮らす、どんな状況でも幸せと思えば幸せだ。
なら私は今の状況を気楽に過ごせるときは過ごそう、そう考える。
何故なら、それが私流のたった一つの冴えたやり方だからだ。
これでこの物語は完結です。
ここまでご覧になって下さった皆様に誠に感謝の意を示します。
ありがとうございました。
この物語はこれで終わりですが、次回作で何らかの繋がった世界観での物語を考えてます。
次回作はどうしてほしい、こうしてほしいなどの要望があったら遠慮なく感想フォームに記入していただければ助かります。




