人助け?
「…というか、いつになったら人里に着くの?歩き始めて少なくても1時間はたったのに、人っ子一人見えやしない。まぁ…時計持ってる訳でもないから時間なんて適当なんだけどさ。」
俺は刀を抜き、型を思い出しながら練習しつつ、一直線に歩いていた。
これまでに映画やアニメで見た光景を目の前の草原に向けて投影しつつ、再現していく。
なんでこんな事出来るのか、よくわかなかったけど。昔から頭に思い描いた映像を再現できたんだよな…。大会でそんな技で1本奪うと他校の生徒や親御さんたちから盛大な拍手が起きることもあった。まぁ…監督やコーチからはふざけるなって度々怒られたけどさ。
あの頃は剣道で自分がどこまで行くことができるのか…そればかりを考えていた。誰よりも強くなるそればかりが俺の目標だった。
…ふと、目の前を見ると1台の馬車が微かに見えた。貴族の物というよりも、輸送用の民間の馬車に思える。
…よ〜くみると、何かに襲われているようにも思える。俺は不意にある光景を思い出した。俺が剣道を辞めるきっかけにもなった出来事…
高校三年の全国大会が終わり、強敵に挑んで惨敗した後…俺は居合刀を刀袋に入れて、帰路にいた。
雨が降っていた。傘もささずにずぶぬれなりながらただ家に向かっていた。
剣道を辞める決意をして、明日から何をしようかと思いにふけっていると目の前から叫び声がした。
かすかに残っていた正義心に駆られて走り出すと路地裏に殴られたのか倒れている高校生の男と複数人の不良に弄ばれている女子高生が見えた。
俺は思った。
これが剣道を辞める試験なんだと。
かつて剣道の師匠に言われたことがある。まぁ…強敵ってのがその人なんだけど。剣道は喧嘩の道具じゃない。喧嘩に使うときは剣道をやめるときなんだと…
これで本当の意味で剣道から離れられる。
そう思った俺は刀袋から居合刀を取り出していた。俺は、刀を抜くと脇構えを取り、近づいていく。
不良の一人が俺に気づき、怒鳴ってきたが、俺にはすでに聞こえていなかった。俺の中にあるのは、彼女を助けたい…その思いのみ。
俺は即座に走り出した。
そいつも鉄パイプを握りしめて俺に殴りかかってきたが、相手が悪かったな。
俺はやつの顎に向かって刀を振り上げた。
切れはしないが、やつの顎にヒビがはいったのが手に伝わる。
そして腹に一撃加えると奴は失神して前屈みに倒れ込んだ。
その光景をみていた不良達は、じりじりと下がっていく。
俺は部員達から怒った時の目が獣のようだと言われたことがある。その目を奴らに向けた。
大したことのない奴らは逃げていった。
俺の最終戦にしては、呆気ないものだった。
積み上げてきた道のりは長かったが、崩れるのは一瞬だった。
俺は救急車を呼び、その場を離れた。
その光景を思い出した。
今回の相手は人ではないようだが、関係ない。今の俺にはコイツがいる。そして、ここは日本ではない。銃刀法違反なんて…無いよな?
俺はあの時のように刀を抜き、霞の構えを取ると走り出した。
俺に反応して、何体かがこちらに向かってきた。ゴブリン?緑色の気色悪い小さい生物が迎え撃とうとしている。
相手がなんだろうとやることは同じ。狙いは首。第二次世界大戦に行っていたじいちゃんが言っていた。銃弾がなくなって、アメリカの兵隊を軍刀で倒したんだと。敵の首の第一関節を狙って切ったと。
小さいけどおそらくここだろう。
俺はその数体を一撃で葬ると刀を振って、血糊を落とした。
そして、その光景をおびえた様子で見ていたゴブリンへ視線を向けた。
ゴブリン達は怯えた様子で一目散に逃げ出した。
すると馬車から一人のおじさんが慌てて近づいてきた。




