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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
ⅰ-4.ジャルニエ城攻略戦
33/327

Chapter 29.Black armor killer (1/3)

タイトル【ブラック・アーマー・キラー】

ジャルニエの城は侵攻してくる兵隊を少しずつ狭くなっていく通路によって流動を止め、一網打尽にできる構造となっている。跳ね橋があがっている以上、戦車部隊は城内に入ることができない。



下ろされたとしても戦車たちは装輪車両やBMPと比較し重量も桁違いに重い。



橋が崩落する可能性も大いにあるため、跳ね橋を下ろしたとしても城内に直接乗り付けるのは輪をかけて困難であった。


攻撃から城内を遮断する防壁も厄介な存在であることに変わりはないだろう。



テロ組織や麻薬密売マフィアの拠点に対してはいくらか戦車砲を浴びせて体制を崩したところで一気に突入をかけて皆殺しにすれば良いこと。

しかしハリソンのものと比べてはるかに強固に固められた壁に向けて砲弾を撃ち込んでも効果は薄い。



崩せたとしても弾薬を大いに消費することになるだろう。



 そのため少佐の率いる部隊は城内に直接砲弾を撃ち込みOV-10に弾着を確認させながらヘリボンを行う安全地帯を作り、そこから制圧チームを降下させるのだ。






———






BMPを除いた車両たちが後退して定位置に就くと、無慈悲な砲撃が始まった。


その照準は強固な城壁に向けられたものではない、仰角を可能な限り高く取ることで壁を飛び越えて内部に榴弾を撃ち込む。



詰め物がされた棺桶のように狭苦しいT-55の中で装填、手は爆薬が詰まった砲弾を引きずり出してからようやく装填が可能となる。

ねじ込むようにして装填すると、照準を定めた砲手が引き金を引く。



——ZBooooM!!!



想像を絶するような轟音と共に大量の白煙が吐き出されると、再び振り出しに戻る。

戦車は城内に入ることができない今、やれることはこうして敵に砲弾をぶつけてやることくらいである。


【こちらOSKER01弾着確認、右75上110に修正、一部監視塔に着弾あり】


しばらくすると火力支援を行う少佐たちに無線が飛び込んだ。

無差別に城の内部を破壊しつくす砲撃ではあるものの、弾薬の浪費をしては意味がない。


一部のものは防壁同様の強固な監視塔に着弾しており修正の旨を知らせていた。






———






 突如として隕石のように降り注ぐ爆発に外に晒される部分では兵士の展開ができずにいた。魔法ではないこの重い一撃、聖堂などに食らってしまえばひとたまりもない。



さらに兵士の報告によれば防火の施されていない庭園で火災が発生している始末であり、味方に燃え移りでもしたらかき集めた兵力が無駄になってしまう。



全力でここをつぶそうと企む反乱軍に対抗できる戦力を失うことを恐れた将軍は城の弓眼や敵に侵入される恐れのある施設内に待機するように命じた。



司令室を揺るがす爆発と火災にホーディンは疑念を抱いていた。



爆発魔法は爆風のみを与えることができるが、火災までは起こせるほど便利な代物ではない。資金を絶たれ始めたレジスタンスごときに火薬を飛ばす技術などあるものか。


その上あえて城壁を避けて攻撃している。明らかに寄せ集めの軍団では不可能な芸当である。



相手にしているのは反乱軍ではないかもしれない。将軍はそう考えていた。

その最中、一人の男が司令室にやってきた



「外部迎撃隊の撤退、城内迎撃隊への編入が完了しました」


騎士将軍エイベルである。彼はそう報告を上げるとホーディンはヘルムを一度外してからこう命じたのだった。


「ご苦労。反乱軍の連中はこちらと数が同等か、あるいはそれ以下の数でこちらにやってくる。城のあらゆる施設、部屋に誘いこみ、数を的確に減らせ。乗り込んできた敵は弓眼から狙撃せよ。徒労させ狩り尽くすのだ」


将軍はこう言うと、再び縦長の兜をかぶりさらに続けた。


「何者であろうと、反乱軍は所詮人間の範疇を出ない。血が出るならば殺せるはずだ。

何としてでも撃退せよ。私は屈しない、一人になろうとそれは同じこと。」


ホーディンは槍を取ると器用にくるりと回し、石突を床に突き立てた。

血のように真っ赤な鎧に隠れた眼はするどく、そして覚悟が乗っていたのである。



絶滅寸前の反抗分子が再びこの帝国にのさばらせてはならない、この国家の新しき栄光を掲げるために。






———






 砲撃によってハインドが乗り付ける安全地帯を作ることに成功した。

ただこれは序章に過ぎない。



地上の兵士が居なくなっただけで、屋内や弓眼の内部にはまだ敵が多く存在しているのだ。

次の段階はその敵を排除しつつ、重要参考人の救出と居所のしれない敵司令官の無力化が待っている。


OV-10によってもたらさられた航空写真を基に矢が飛んでこないような遮蔽物に囲まれた地点を探し出し降下地点を決定すると、ついに降下がはじめられた。


——VALLLL…


ガンシップが城に急接近すると、ローターが空を切り刻む轟音が響き渡った。それと同時に大嵐が訪れたかのようなダウン・フォースが吹き付けはじめた。


ホバリングするスキも与えないかのように空飛ぶ怪物めがけ凄まじい数の矢が降りかかったのだ。強烈な下降気流が吹き荒れる中、矢は虚空へと消えていくが、一部はこの異形の怪物めがけて突き進む。


しかし空飛ぶ戦車の異名をほしいままにする装甲の張られたボディに古典的など一切通用するはずもなく、ハインドはゆっくりと弓眼の方向へと旋回していく。


石壁に隔てられた先に居るアーチャーは恐怖した。あれだけの矢を放ったにも関わらず当たらないばかりか、命中したとしてもアーマーナイトのように無残に弾かれる様を。


「化けモノだ…」


アーチャーの一人はこうつぶやいた。すると怪物は恐ろしげ大きな竜とも蟲ともつかぬ気味の悪い顔をゆっくりと向けはじめたのだ。こんなモノ、反乱軍、抵抗軍のそれではないと彼は悟った。だがあまり遅すぎた。


——BLASHHHHH!!!!!!


ハインドは原始的トーチカに向けてポッドが空になるほどのロケット弾を発射したのである。丁寧に弓眼の一つ一つ、ノミをつぶすが如く破壊しつくすと機体は空中へととどまった。その中からは全身を黒く染め、異形の武器を持った人間が次々と降りてきた。


これから制圧が始まるのだ。



———



10機から構成されるハインド中隊に詰められた特殊部隊はジャルニエ城への降下準備を整えた。


それぞれAからHまで降られた8チームがめぼしい施設、家屋や部屋に至るまで制圧するのが目的である。最初に城内部構造把握のため4チームが前地点、敵司令官及び重参救出の役割を担うことになっている。


ガンシップたちは着陸ができないため突入地点近辺にてホバリングを続け、突入指示を待つ。


屋内に無数に潜むと推測される重装兵対策のために各々が対戦車火器を携行し、作戦が始められた。今までの砲撃はただの前座であり、送り込んだ特殊部隊にすべてがかかっていたのである。


 【こちらMOSKVA-2。突入準備よし。】


降下準備の完了を確認すると、隊長は無線を飛ばす。その頃には各隊も同じように準備が完了しており、指示を仰ぐのみになっていた。


【MOSKVA-LEADERよりLONGPAT。突入準備よし。】


【LONGPAT了解、MOSKVA各機は扉を破壊し突入を開始せよ】


【MOSKVA-LEADER了解。】


ヘリ部隊の隊長機から突入予定地点の扉へ対戦車ミサイルが発射され、頑丈な扉が轟音と共に粉砕される。

爆煙が晴れると、扉の残骸だけがそこにあった。


【MOSKVA-LEADERより中隊前段各機。突入地点周辺に敵影なし。降下を開始せよ。】


隊長機からの合図により、ハインド側面のハッチが開き、ワイヤロープを伝って特殊部隊が降下する。3分と経たずに降下は完了し、人員の確認を済ませた部隊から扉の残骸へ殺到していく。



いざ城内に侵入すると、真っ暗闇でぽつぽつと明かりが点在していた。内部の魔力灯の火を消しているためだ。このままでは裸眼での戦闘は困難な状況である。


隊長を含むメンバーは一斉に暗視ゴーグルをかけ、ライフルのセーフティーを解除すると素早く内部へと進んでいった。


裸眼での戦闘は入り口以上に困難な状況であった。

互いが背中合わせになりながら城内を進んでいると、突如火球が飛来した。


「10時から11時方向から敵襲を受けた!」



隊員のウェイグは声を上げると、チームはまるで群れたイワシのように遮蔽物へと駆け込んだ。魔導士隊との交戦が始まったのであった。


 Bチームは無数に飛来する火球に対して既に対策を取っていた。


火球が直線状に進む以上、それは銃弾と大差ない。暗闇ではその弾道の予想は容易であるためにこれ自体が特段厄介ではなかった。


では厄介に至らしめるものは何か、火球にまぎれて矢が飛来してくることである。


着弾位置から射手の特定をしようものならスキを与えないよう、矢が飛んでくるばかりかその間に火は異様なほどに早く消えてしまい、振り出しに戻ってしまう。



床や壁が非常に燃えにくい素材で塗られているためだ。


すると連中は遮蔽物に逃れたことを察知したのか、曲がる稲妻でこちらを徹底的に排除しようとしてくるのだ。


「クソッ」


隊長らは狙いが甘いことを見抜き、壁を盾にしながらうまく回避することで何とか損耗が出ないようにしていた。壁にはスパークがほとばしり、暗闇にわずかな明かりをもたらす。


次第にこちらを狙う精度は少しずつ高くなってゆき、壁を利用するのが難しくなってきている。

銃は心で撃つものだが、彼らにとって、それ実行する敵がいるなど想像外であった。


まるで一か所に追い詰め一網打尽にするつもりなのである。


一度突入したはいいものの、このまま引き下がるわけにいかなかった。彼らはプロである。この状況を打開するため、隊長ジェイガンは冷静に判断を下した。


「フラッシュを焚け。各員、暗視装置を切れ」


「了解」


その一言で皆それぞれヘッドフォンを装着し、暗視装置の電源を落とした。


準備ができたことを見計らったウェイグはフラッシュ・バンをポーチから取り出すと、火球が飛び交う先へと力いっぱい放り投げた。


暗闇に核爆発めいた光と音と認識できぬほどの波長が濁流と化した津波のように襲い掛かった。間髪入れずにジェイガンはヘッドフォン越しでも聞こえるよう大声を上げる。


「move!」


再び暗視装置の電源を入れ、鉄砲水のように隊員たちが躍り出た。まさに今、反撃の狼煙があげられようとしていた。


フラッシュ・バンは闇に適応していた魔導士とアーチャーに対し効果は絶大だった。


制圧する暇もないチームは気絶している敵が居ようと、よろめく敵が居ようとも脳天に銃弾を着実に命中させ、進んでいった。



あまりの爆音と閃光にひるんでいるある敵に銃口を向けた瞬間だった。暗視装置に人影が一瞬だけ映ると同時に、ホワイトアウト。



「ァ”ア”ア”ア”ァ”ァ”ァ"ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッ!!!!」


隊員の絶叫が深淵に響き渡った。まだ戦闘ができる状態の魔導士が残存していたのである。遮蔽物もなく丸裸に近い敵に魔法を当てることなど造作もなかったのだ。



「この野郎ルゴールをやりやがったな!」


すかさずジェイガンとウェイグがライフルで敵に向けて引き金を引いた。


だが得体の知れない存在は足に被弾でもしたのか血痕を残していた。それをたどると近くの柱に隠れたようだった。



目の前では信じられない光景が起きていた。


筆舌にしがたい光と音に苦しんでいると、まるで銃を雨のように連射するような敵を前に戦友がバタバタと倒れていった。目と耳がつぶされた人間など戦場ではまるで赤子と同等なのである。


幸運の女神が舞い降りたのか、ひどい耳鳴りはするが目だけは辛うじて人影にまぎれていたためにしっかりと生きていた。


奴らも油断したのか一発アドメントをお見舞いしてやった。

こんな時に女神に愛されているなど、クソにもほどがある。魔導士はそう思っていた。



役に立たない耳の代わりに床に手のひらに着けながら敵の接近を探り、打開策を考えていた。片足からはあの武器によって貫かれたためか、焼かれるような鋭痛がいつまでも続き鮮血があふれ出していた。


柱の向こう側には敵がいることくらい彼には分っている。


この状況を打開しなければならないが一人でも逃したとしたら着実に殺されるだろう。


火の弾幕を張ろうとしても連中の火力には及ばない。ファントンもあれだけの鎧を着こんでいるのだ、減退して使い物にならないだろう。


最後の手段、爆発魔法(ヴァドム)を使わねば生き残れない、そう決断した魔導士は激痛が走る腰に掛けられた魔導書を取り出した。指を押し付けて隣のページを燃やしながら暗闇で呪文を黙読し始めた。


[汝、神から頂戴しその魔導は天と空を揺るがし力を与えん——]


詠唱に集中し、放とうとしていたまさにその時だった。

カタツムリの目をした見たこともない敵兵士が、こちらに武器を向けている様がこちらに近づき、命を狩り取ろうとしていたことを。





———





こちらに一撃を見舞った敵を射殺し終わっても突入チームの制圧はなおも続いた。

ジェイガンは文字通りの雷撃を受けたルゴールに待機を命じ、先へと進む。


一時間にわたる戦闘が終わった。Bチームは魔導士によって構成された迎撃隊を打ち破ることに成功したのであった。


最深部に捜索要員を残すと、隊長とその付き添いのウェイグが行動不能に陥った彼の救援へと向かう。

 


「ああ畜生、クソみたいなパーティグッズでいっぱい噛まされたぜ…」



彼らの足跡を聞きつけたルゴールは壁に背をつけながら声を上げた。ライフルを放り投げ、まともに立ち上がれそうにない。銃弾と違い数倍質が悪いようだ。



「ルゴール、今はどんな状態だ。戦闘を続行できそうか」



隊長は床に膝をつき彼の状態を聞く。触診を始めると火でも当てられたかのように熱せられており、時折握りこぶしを作ろうとしているのか指が動いていた。


「——あぁ…ジェイガン隊長か…——御覧の通りライフルすら握れねぇ。それに体がろくに動かねぇ。ゴミみてぇに動きや…しねぇ。おまけにタバコでも押し付けられたかのうに熱いときてる。クソッ。こんなんじゃあまともに戦えやしませんぜ」


想像以上に傷は深刻であった。電気事故のように通電したような痕跡だけではなく抵抗熱による火傷と麻痺が残っていた。銃創であれば一発程度では辛うじて動くことができる。



ルゴールの様子から見るに真っ黒い壁を背もたれにすることくらいが精いっぱいな程動けなくなるのだ。隊長はこれ以上の行動は不可能と判断するとすかさず無線を飛ばした。


【こちらBチーム、制圧完了。重傷1発生。収容を要請する】


【こちらLONGPAT了解。直ちに救援は出せない。】


【了解】


激しい戦闘中の兵員収容は困難を極めていた。着陸できない地形とただ一つの着陸可能地点を破壊された以上不可能に近い。

されども戦闘は続くのだった。



登場兵器


ハインド

正式名称「Mi-24V」

硬くてミサイルやロケットポッドと殺意を込めた上に、歩兵まで詰める。

不条理極まりない悪役面のソ連製攻撃ヘリコプター。

設備を積み過ぎたお陰で機動力燃費に難がある。

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