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その男…強者

 重達は照りつける日差しのもと海での遊びに興じていた。


「ふぅ、そろそろ疲れてきたね。一回上がろっかな。」

 重が提案する。ちなみに今重の周りにいるのは剣、澪、草薙、花凛である。創士と真利谷の2人は浜辺で寝転がっており2年生2人は遠泳の真っ最中である。風待は未だ氷の中である。


「んーそうだな。意外に海の中は疲れるからな。今はテンションで感じてねーけど。腹も減ったし上がるか。」

 重の意見に剣も賛成する。


「そうですね。少し…体も冷えてきました。上がるべきですね。」

 澪が体に腕を巻きつけるようにしながら言う。遊んでいる時は気にならなかったが少し止まると肌寒さを感じている。思ったより体は冷えているようである。


「私もそれで構わない。」


「えー…まぁお腹が減ったのは事実だし…私も上がるよ。」

 3人の意見に賛成する草薙とまだ物足りなそうな花凛。しかし花凛も空腹には勝てないようで休憩することを承諾する。そして一同連れだって海から出ようと浜に向かって行く。その時浜から圧倒的なプレッシャーを感じた。


「な⁉︎…くっ、これは…剣!。」


「分かってる!。半端じゃない!。何かが起こってる。行くぞ。」

 重と剣は女性陣を残し浜に向かって走り出す。


「はぁはぁ…L2『火炎』×100…『火拳』。」


「…L3『黒土の槍』、L3『風槍』合成…『風纏螺旋槍』。」

 2人はそれぞれ魔法を発動し海から飛び出す。その発動した魔法の種類から2人が受けた圧力の大きさを計り知ることができる。その2人の目に対峙する人影。片方はもちろん創士と真理谷。創士の手にも刀が握られており真利谷の周りには氷の蔓が生い茂っていた。もう片方も男女の2人組であった。


「…ん?あの人って…」

 重がその2人組を見て反応を示す。


「…どうした?知り合いか?。」

 剣が警戒を解かないまま尋ねる。


「いや…知り合いっていうか…」

 言葉を濁す重。とそこへ…


「ん?お前は…確か…八神重だったか?。」

 2人組のうち男の方が重の顔を見て反応を示す。


「…八神重知り合いか?。」

 創士が視線を男から離さず重に問いかける。


「…えーと、はい、そうですね。その人は…」


「俺の名は如月花月。この国で…最強を自負する男だ。」

 重の言葉を遮り如月が名を名乗る。その名を聞きその場にいる全員が動きを止める。如月花月の姿こそあまり出回っていないが名前は国家魔導師を目指すものなら耳にする。その衝撃故だった。


「…っ、その如月さんがなぜここに?。」

 いち早くその衝撃から立ち直った創士が如月に尋ねる。正確にはあの男と同時だったが。


「その前に…そこの岩場に隠れてるやつ魔法を解けよ。俺は何もしねーよ。」

 如月が自分の斜め後ろにある岩場に視線を向け言う。


「…やはりバレていましたか。やけにあっさり後ろを取れたと思っていたんですよ。」

 若草が姿をあらわす。強烈なプレッシャーを感じ、いつでも先制できるようにと背後に回っていたのだ。


「ん?お前も…見たことがあるな。…お前確か遅延魔法を使う奴だろ。学園で見かけたことがある。」

 若草の顔を見て如月が言う。以前学園長に言っていた興味がある生徒とは若草のことであった。


「ええ、そうですが…目的を教えていただけませんか?。なぜここに?。」

 改めて若草が尋ねる。この国最強を自負する男がこんなところに何をしに来たのか?。その答え次第では合宿どころではなくなるかもしれない。


「…実は…」

 勿体つけたようにタメを作る如月。そのタメにつられて全員が前かがみになる。


「ただ休みに来ただけです。」

 隣にいた女が答える。身長は平均的ながら金髪を腰の高さまで伸ばした女。きっちりとした服装がどこか真面目そうな印象を与える。しかしその行動にほぼ全員が『お前が答えるのか!。』と心の中でツッコンだのは仕方のないことだろう。


「…おいおい雅、俺のセリフを…」


「と言いますか我々は星光学園の学園長に連絡はしていたはずです。もちろん許可は得ています。それなのにこの人は強そうな人がいると言って魔力を解放して…余計ことを。」

 如月に雅と言われた女はその外見に似合わず毒舌を吐く。


「…はぁ〜、…こいつは国家魔導師付き魔導師の木暮雅(こぐれみやび)。一応俺のパートナーだ。」


「よろしくお願いします。…ところで我々の来訪をご存知ないようでしたが…学園長からは生徒会長に連絡をしておくと伺っていました。」


「…ん?俺?。…うむ、どうやら携帯電話を携帯していないようだ。そこに何かしらの連絡が入っていたのだろう。」


「…会長、携帯電話は携帯する物だとあれ程…もういいです。どうやらこちらの不手際のようで申し訳ないございません。」

 真利谷が創士に対して呆れを見せるが気をとりなおし如月と木暮の応対に移る。


「いえいえ、お互い抜けている上司を持つと苦労しますね。」

 木暮がここでも毒舌を発揮。創士と如月にダメージを与える。


「立ち話もなんですのでどうぞこちらへ。」

 真利谷が2人を宿舎の方へ案内する。こうして国家魔導師が合宿に参戦したのだった。

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