漢と水着
照りつける太陽。重達は海に来ていた。合宿の息抜きにと企画されたものだった。
「いやーええ天気や。さいこーやな。…むふふ…それにしても今回の合宿のメンツは素晴らしいな。どんな水着やろか。」
風待が下心丸出しで言う。その顔は見るものが見れば即座に通報しているだろう。
「風待君。あまりそんなことを言うものじゃないよ。口は災いの元と言うしね。」
若草が風待をたしなめる。その視線は風待の後ろに向けられていた。
「いやいや、何言うてんの。副会長のすらっとした体、並木ちゃんのロリロリしい体、花凛ちゃんのダイナマイトボディ、後澪ちゃんと茜ちゃんやったっけ?。あの2人は意外と着痩せするタイプとみたな。…見んかったら失礼やろ。てか今思ったけど花凛ちゃん入るまで生徒会って貧乳…」
そこで風待の言葉は途絶えることになる。後ろから寒気を感じたためである。心理的なプレッシャーなどという生易しい感覚的なものでなく物理的に寒さを覚えていたのだ。当然脳裏にある人物の存在が浮かび上がる。
「…若草君の言う通り口は災いの元と言います死ね。そのお口…閉じた方が良いですね。」
「…風待最低。死ねば?。」
「ダイナマイトボディだなんて照れますね〜。」
「「………。」」
女性陣からの抗議の目線と言葉。あまり関わりのない澪、草薙ですら目線で抗議を行う。
「…俺は…自分の理想のためにやったら…頑張れる!。」
その言葉と同時に女性陣の方向に振り返る風待。どうせ折檻は免れないなら恩赦を乞うよりもその眼に水着姿を焼き付けようとの行動だった。漢の中の漢である。
『パキキ…‼︎』
天国を眼にする直前視界が氷に覆われる。いや、正確には覆われているのは視界だけでない。体全体である。
「…おいおい真利谷、生きているのか?。あんな奴だが優秀な奴だぞ。」
その光景を見て創士が言う。
「…えぇもちろん生きていますよ。凍死はしないでしょう。ただししばらく凍っておいていただきますが。」
まさしく氷の眼差しで風待だった物を見つめる真利谷。
「そ、そうか。それなら良いんだ。それより水着、似合ってるぞ。」
話題を変えようと創士が水着についてコメントする。実際黒いビキニは控えめながらも締まっている真利谷の体によく似合っていた。
「あ、ありがとうございます。…少し暑く…なってきましたね。」
そう言い顔を創士から逸らしビーチパラソルの下へ向かう真利谷。
「重君、ど、どうかな?。どこか変じゃない?。」
この雰囲気を好機と見た草薙が重に自分の水着について感想を求める。
「え、…その良く似合ってるよ。ごめんね、こんな事今までなかったからなんて言って良いか分からないや。でも…とても綺麗だよ。」
求められるがまま草薙に感想を言う重。意図せず草薙のハートに突き刺さる言葉を放つ。
「うぅぅ、…はぁはぁ…。」
「ど、どうしたの茜ちゃん⁉︎なんか顔赤いよ?。それに息が…」
草薙の異変に気付き重が駆け寄る。しかしそれは当然逆効果である。水着姿の重を近場で直視し草薙の鼓動は跳ね上がる。
「重さん。大丈夫です。ですからここは私に任せてください。…茜ちゃんちょっとこっちで休もう。」
澪が間に割って入り草薙を真利谷がいるビーチパラソルの下へ連れて行く。
「なんだが悪いことをしちゃったかな?。」
草薙からの好意に気づいていない重が2人を見つめながら言う。
「あ?大丈夫だろ。寧ろ逆つうか…まぁいいか。…そんで花凛?なんで俺の前でポーズをとってるんだ?。」
「ふふふ、私のナイスバディを見せてあげてるんだよ。どう?。」
花凛が剣の前で自らの体を見せつけるようにポーズをとる。長身な上にメリハリのある体。その体にオレンジ色のビキニを纏った花凛は風待が見れば飛びつかんとするであろう光景だった。しかし、
「はいはい、それより重泳ごうぜ。」
「ぞんざいな扱い⁉︎。むー!…もういい。泳いでくる。」
剣のつれない態度に業を煮やした花凛は海に向かって走って行く。
「剣いいの?あんな扱いして。」
「ん?あぁ大丈夫だ。どうせ夜になったら忘れてる。」
「海冷たい!。気持ちいい!。」
花凛の声が響き渡る。
「ほらな?もう頭の中に無いっぽいだろ?。」
「花凛ちゃん…」
「俺らも行こうぜ。いい加減暑い。」
「そうだね。」




