それぞれの目標
「さてそれではお互いの自己紹介といこうか。と言っても知っているやつもいるだろうけどな。」
槙野が運転するバスの中創士の仕切りで自己紹介が始まる。先陣を切ったのは若草であった。
「そうですね。僕に関しては全員と面識がありますけどね。2年若草大樹です。」
「おいおい、名前だけと言う訳にはいかんだろう。そうだな…目標と後はこの合宿で誰と戦いたいかを言ってもらおうか。」
名前だけを述べ簡潔に済ませようとした若草を創士が咎める。
「ん〜そうですね。目標は…楽しく過ごすこと。死ぬ時に良い人生だったと思えるような過ごし方をすることですね。今の所順調と言えるでしょう。後は戦いたい人ですか…そうですね…そろそろ獲りたいと思っていたんですよ、上の輝きを。だから…お2人とやりたいですね。そして心置き無く卒業していただきたいですね。」
ここで言う2人とは創士と真利谷のことである。普段あまり戦いに重きを置いていない若草にしては随分と大きな発言である。
「ふむ、なるほど。非公式でも構わないから俺達に勝っておきたいと言うことか。楽しみにしておこう。…っとついでに俺が続こうか。3年生徒会長創士貫介。目標は…誰でも良い、俺を目標に魔道士を目指す子が出来るような人物になる事だ。戦いたい相手は全員だ。俺にかかってきてくれ。」
若草に続き創士が自己紹介をする。そして生徒会のメンバーの方に手を出す。ここから順番にさせる為である。
「3年生徒会副会長の真利谷氷雨です。よろしくお願いします。目標は…尊敬する人と隣で戦える力をつける事。そして隣で生きる事。戦いたい人は火祭剣君、八神重君、そして若草君。次代の力を見せてください。」
真利谷が続く。尊敬する人とは…創士の事である。。そして全星寮勢との戦いを望んでいる事を明かす。澪が入っていないのは前回戦ったからである。
「2年会計の〜風待訡や。よろしゅうたのんます。目標は女の子に囲ま…何もないです。嘘です。えーと戦いたい人は…八神重君やな。聞いたで水野ちゃんに勝ったんやろ?。しかも火属性で。是非俺と一戦交えて欲しいわ。」
風待が軽い調子で話す。目標を話している途中真利谷からの冷たい視線を浴びて訂正を加えた。そして重の方を興味深げに見ている。
「最低…。2年書記並木楓。目標は強くなる事。戦いたい人は若草君。」
風待とは一転して言葉少なく自己紹介をする並木。しかし眼には闘志が溢れていた。
「1年総務若草花凛です。目標は友達100人作る事。戦いたい人は〜剣君かな〜。私の友達第1号だし。」
花凛が前の席の剣の肩を叩きながら言う。女性にしてはかなり大柄なのでそれなりに威力がある。
「痛い!痛いからやめろって。…そうだ、大人しくしてろよ。あとで遊んでやるから。えーと1年火祭剣。目標は…誰にも負けない事、つまり1番強くなる事。やりたい相手は…真利谷先輩っすね。どこまでいけるか試したいっす。」
花凛の襲撃を防ぎながら剣が言う。この2人実はちょくちょく遊んでおり中々仲が良い。そして剣が戦いたい相手は真利谷。自己変化に対抗する訓練のためである。
「仲がいいですね。…1年の矢沢澪です。よろしくお願いします。目標は…折れない心を持つ事です。強い意志を持って戦いに臨めるようになりたいです。戦いたい方は皆さんです。」
澪が剣と花凛のやりとりを微笑ましく見ながら言う。相変わらず自分に対して自信がなさげなセリフだが全員と戦いたいと言うところに変化がみられる。以前なら戦う事を遠慮していたかもしれない。
「えーと最後ですね。1年八神重です。目標はこの学園のトップに立つこと。なんで戦いたい人は先輩達全員ですね。先輩達から色々学びたいと思ってます。」
最後に重が話す。この学園のトップに立つ為には当然ここにいる全員に勝てなければならない。今の自分の位置を測るいい機会だと考えていた。
「ふむ、ひと通り終わったわけだが…どうするか。…9人なんだよな。だから必然的に1人余ってしまう。」
創士が見回しながら言う。とそこへ、
「あぁそれなら大丈夫だ。さっき学園長から連絡があって草薙が合流するそうだ。なんか八神と約束があったって言ってたぞ。女の子との約束を反故にするなんてダメだぞ!。」
槙野が連絡事項を話す。
「え⁉︎ん?ん〜ん?。…そんな約束してたかな?。」
草薙との約束について考える重。しかしいくら考えても思い出せない。当然である。草薙が咄嗟についた嘘なのだから。
((あぁ…草薙〔さん〕重〔さん〕に会いに来たんだな。…間に合わなかったんだな。))
剣と澪は心の中で草薙の行動の意味を理解していた。同時に間の悪さに驚いていた。
「それは良い。なら数もバッチリだな。」
そんなことなど知らない創士の声が響いた。




