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戦いの終わり夏の始まり

「う…うん、…ここは…?。」

 目を覚ました澪が辺りを見渡す。白い壁、白い灯、横を見れば真利谷。


「あら、目が覚めましたか。ここは保健室ですよ。」

 そんな澪に気づいた真利谷が声をかける。戦いの場とは違った優しい表情をしている。


「え⁉︎、真利谷先輩!。私はえ、えーと確か…」

 澪が記憶を遡り現状を把握しようとする。


「確か…先輩の魔法で凍らされて…そこで私の意識はないですね。」


(…あの時、最後の魔法は無意識下での行動ということですか。成る程…謙虚な言動の裏にそこまでの熱い心を隠していたとは…今回の件がその心をさらけ出す要因になってくれればいいのですけど)

 凍る生命を解除した際真利谷に掴み掛かり魔法を発動した澪。その時の記憶はないようである。


「そうですね。あの時点で勝負がつきました。また、夢坂君は会長に敗北しました。唯会長は夢坂君を褒めていましたよ。」

 敢えて凍る生命を解除した時の澪の行動については触れず結果を伝える真利谷。


「…そう…ですか。夢坂君はすごいな…。私は…」


「あと!。…貴女に言わなければいけないことがあります。」

 澪の発言を遮るように真利谷にしては珍しく声を張り上げる。


「当初貴女に対して負け犬と言ったことは撤回します。貴女は勇敢に戦った。私に強く熱い心を魅せてくれました。貴女と戦えて良かったです。」

 表情は一切変えずにしかし少し頬を赤く染めて言う真利谷。


「は、はい。…こちらこそありがとうございます。」

 その事についていけない澪はただただ呆然とし慌てて返事を返す。


「…それでは私はそろそろ失礼します。夏休みにまた会いましょう。」

 そう言い残し保健室を去る真利谷。


「…?。あ、はい、失礼します。今日はありがとうございました。」

 真利谷の発言に疑問を抱きつつも真利谷に対して今日の礼を澪が述べる。


『バタバタバタ…』

 廊下からは何人かがこの保健室に走ってくる音が聞こえたのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お前は保健室によっていかなくていいのか?。」

 創士は目の前にいる夢坂に向かって話しかける。その夢坂はふらついてはいるものの自分の足で立っている。


「俺は別に大丈夫です。まぁ、魔力切れだけですからね。…次は負けませんよ。」


「楽しみにしておこう。と言ってもあまり時間がないから早めに頼むぞ。…あーあ、これから生徒会の仕事だ。夏休みなのにな。…お前が入ってくれれば良いのにな〜。」


「遠慮させてもらいます。そういうのあまり興味ないんで。それじゃあ失礼します。」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「お疲れ。澪ちゃん!。」

 保健室まで迎えに来た重達と共に全星寮に戻った礼を待っていたのは若草謹製のご馳走だった。


「はい、ただいまです。」


「いやー素晴らしい戦いだったね。澪ちゃんの素晴らしい成長を見れて僕は嬉しいよ。」

 若草が微笑みながら言う。


「そうだね。澪ちゃんめっちゃ強くなってるね。俺ともやって欲しいよ。」


「待て重。それは俺のセリフだ。矢沢、次は俺とサシでやってくれ。」

 重、剣が澪を取り合う。


「ふふっ、大丈夫ですよ。いつでもお相手させていただきます。でも…私も…負けませんよ。」

 以前にはない少しの自信を覗かせる澪。


「…そう言えば…真利谷先輩が夏休みにまた会えるって言ってたんですけど…」

 保健室でのやりとりを思い出し澪が尋ねる。その視線は若草の方を見ている。


「おや?…聞いてしまったかい?。そうだね、言っておこうか。実は夏休みに生徒会と全星寮での合同合宿を催す事になったんだよ。」


「日程は…夏休みの後半だね。君たちが帰って来てからだから安心してくれて良いよ。」

 若草が重達に説明する。催す事になったと言っているが生徒会に話を持ちかけたのは勿論若草である。


「合宿って何をするんすか?。」

 剣が若草にさらなる説明を求める。


「それはまだ話がついてないね。まぁ楽しみにしといてよ。」


「はぁ…、まぁいっか。」

 ついに考えることをやめる重。


「まあまあ、取り敢えず夏休み突入と澪ちゃんの健闘を祝って乾杯しようじゃないか。」


「「「「カンパーイ!」」」」



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