決勝始まる
「おいおいなんだよその顔は?。俺がここにいなければ、って言うのがわかるぜ。だが残念だな。俺はここにいる。」
如月が学園長に向かって言う。
「…はぁ、わかりました。それでは手を出してください。このブレスレットをつけていただきます。これは着けた者の魔力を十分の1にする道具です。」
学園長が如月に銀色の無骨な輪っかを渡す。それは本来魔法を使った犯罪を犯した者に使用される拘束具である。通常人は突然魔力を十分の1にカットされると日常生活を送ることさえ難しくなる。
「かっかっか、本当に着けさせられるとはな。まぁいいがよ。ほらよ、これでいいんだろ。」
そのブレスレットをなんのためらいもなく着け平然としている如月。
「…それではついて来てください。私から離れないように。」
予想していたのか特に反応せずに歩き出す学園長。
「はいよ。それにしてもこの学園は広いな。ここなら思いっきり魔法を撃てるだろうな。まぁ、精々良い魔道士を育ててくれよ。この国のためにもよ。」
あたりを見回しながら如月が言う。そしてしばらく歩いていると…
「ここの闘技場を横切っていくのが近いですね。」
ある闘技場に差し掛かる。
「うーん、なるほどね、闘技場に入った瞬間に空気が変わったな。これでダメージを魔力減算に変換してるわけか。」
「…学園長!。…実は…」
1人の教師が近づいてくる。そして学園長の耳元で何かを囁く。
「…そうですか。…仕方ないですね。如月さん、申し訳ありませんがここでしばらくお待ちください。少し可及に済まさなければならない用事ができました。」
「ん?あぁ俺は構わんぞ。どうぞいくと良い。」
「…ひとつ約束していただきたい。ここから一歩も動かないでいただきたい。もしその約束を聞き入れていただけるのなら…模擬試合でよければ私がお受けいたします。」
如月が動かないように制約を求める学園長。
「ほぅ…あんたが相手をしてくれるのか。それは良い。わかった。俺はここを一歩も動かないと誓おう。俺の名に懸けてだ。」
学園長の提案に乗る如月。
「それでは…。すぐに戻ります。」
学園長は教師を引き連れて去っていく。
「…俺はついてる。何もせず立ってるだけで俺とやりあえる奴と戦う権利を得れるんだからな。」
そう言い後ろにある壁にもたれる。
「だがそうは言ったものの…退屈になったな。ん?…あれは…」
暇を持て余した如月の前には走る生徒が。
(あいつは確か…昨日見たぞ。…一歩も動かないか…。良し、)
「おーーーい。」
その生徒めがけて声を出す如月。しかし聞こえてないのか立ち止まる気配がない。
(聞こえてねーのか?。)
「おーーーい。」
もう一度呼びかける如月。
しかし反応はない。
(…ちっ、)
「おーーーい。つってんだろ。」
魔法で針を生成し投げつける。
「な⁉︎……」
反応を見せる生徒。
(やっと反応したか。…さて時間を潰そうか。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ところ変わって決勝戦
「L4『風斬りの大剣』。L3『黒土の盾』。
片手剣のように大剣を構える剣。それは日頃の鍛錬の賜物だった。
「剣君。今日はあの魔法は使えないからね。矢沢さんに持っていかれちゃう。だ、か、ら、L4『轟の鉄槌』。今日はこっちでいくよ。」
幻を見せる魔法は水属性の為、澪が帝になると支配されてしまう。
「2人とも複数属性か。楽しめそうだ。さてこちらもいこうか。『体雷化』。」
「いきます。『体水化』。」
「いっくよー。うぉりゃー。」
花凛が大鎚を横薙ぎに振り切る。
「自己変化をなめるない方が良い。『電撃』。」
夢坂の姿が搔き消え花凛の後ろに姿をあらわす。そして電撃を纏った拳を振るう。
「やらせるかよ。『ガンッ』。L4『華炎陣』。」
剣が間に割って入り防ぐ。そして華炎陣で切り返す。
「炎は通しません。L3『水陣壁』。…L4『水獄』。」
澪が水の壁を張り防ぐ。そして花凛の水で捕らえようとする。
「危なっ。L4『斬大地』。ッとと。」
自分の足元から槍を出し水獄の範囲から抜ける花凛。
「まだだよ。『矢雷』。」
夢坂が花凛に向けて指を指す。その指先から雷が走る。
「ヤバっ……なーんてね。私だってお兄の妹なんだから使えるんだよね。遅延。『パチンッ』」
花凛が指を鳴らす。
「?…ぐっ……」
夢坂に向かって地面から大きな拳が飛んでくる。その為花凛に向けていた指先が外れる。
「聞いてた通りだな。お前は常には雷でいられない。だから狙うならカウンターだ。」
剣が花凛の横に立ち言う。
「…へぇー、やってくれるね。」
夢坂は笑みを浮かべるのだった。
「だろ?。そんでこれがお前を貫く槍だ。『風纏螺旋槍』。」
盾を捨て魔法の合成を行う剣。そして夢坂に向かって駆け出す。
(あの槍に触れるのは辞めとくべきだな。なら回避。、つっ…)
雷化して回避しようとする夢坂の足元には鎖が巻きついていた。
(…抜けるのに雷化したら次が躱せないな。ならば…撃とう。)
両手を前に掲げ構える夢坂。
「その槍でこの魔法を貫いてみろよ。『雷公砲』。」
夢坂の手から雷の熱線が放たれる。それは恐るべき速さで剣に向かっていた。
(なんで…剣さんは真正面から斬りかかったんでしょう?。まるでそこに…!)
「夢坂君‼︎。それは…偽物です‼︎。」
澪が何かに気づき叫ぶ。
「遅い。」
『ズシュッ…』
後ろから剣が夢坂を貫いた音が鳴り響いた。