澪の戦い 決着
「L5『水帝』。」
澪が口にした言葉。自己変化型の最終形態へと至る言葉。自ら帝を名乗る覚悟のいる言葉。その言葉には必勝の責任がつきまどう。
「何を言ってるのかしら?。水帝?。あなたはそこに至れていないはずよ。そもそも帝まで至れるのは希少な自己変化型の中でも更に少ないの。私ですら至れていないのだから。」
水野が澪の言葉に対しバカにしたように言う。あくまで自己基準でものを語る。
「それは見ればわかります。L4『白浪』。」
澪が唱えるとその姿が消える。
「⁉︎どこに行ったの?。…L3『水陣壁』。」
澪を見失った水野は自らの周りに水の壁を張る。防御を固めるためである。
(姿が消えるだなんて…。でも何をしようが私の天海で即座に切り返してあげるわ。)
「………。」
それは突然現れた。水野の目の前水陣壁との間に腕が現れた。そしてその腕が魔法を放つ。
「嘘でしょ⁉︎。くっ…」
水野は咄嗟に立方体に手をかざし瞬時に壁を張る。
「…そういえばその魔法がありましたね。」
澪が姿をあらわす。
「…どうやら本当に帝のようね。…でもそんなことは関係ないわ。私の天海であなたを倒してあげる。そして若草くんも。」
「…大樹さんがあなたを受け入れなかった理由がわかりました。」
「大樹さんは私にこう言いました。強さは関係ない。だけどここはみんなで高めあうところだから蹴落とす人は要らないと。」
「あなたは蹴落とす人です。自分の価値観でしか物事を測れない。そんな人に私は負けない。L4『白浪』」
そう言うと澪は再び姿を消す。
「あなたが何をしようと無駄よ。」
天海に手をかざしいつでも魔法を発動できるようにする水野。
「あなたに自己変化型の本当の力をみせてあげます。」
それは澪が真利谷と交わした言葉だった。
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「あなたは自己変化型の長所はなんだと思う?。」
真利谷に尋ねられた澪。
「それは…属性ダメージ以外を無効化できることでしょうか?。」
「そうね。それも正解。だけどそれだけじゃないのよ。最大の長所は広域殲滅能力。自然を支配しての破壊的な魔法。それが売りなのよ。」
「…破壊的な…魔法。」
「そう、あとはあなた次第。使い方次第。」
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「本当の力?。偉そうに!。L4『乱水粒』。」
水野が唱えると無数の水の礫が周囲に飛び散る。
「消えてても存在はしているはずよ。」
水野は攻撃をしながら待っていた。澪が攻撃に移るのを。その瞬間に切り返してカウンターで決めるつもりだった。
「………。」
水野の考え通り空中に澪の腕が現れ魔法を放とうとする。
「くくく、バカね。いくわよ。天海。」
してやったりと立方体に手を伸ばす水野。だが
「……嘘…。なんで…。」
水野が触れると立方体は崩れ去ってしまった。
(そんなはずは…さっきからあの子が使っていた魔法の魔力も吸っていたはずよ。)
動揺する水野。自分の切り札が消え失せたことに慌てふためく。そこに、
「その魔法の支配権は私がもらいました。」
澪の声が響く。
「自己変化型の本当の力。自然を支配する力。同じ水属性なら支配できます。」
それは水野にとって絶望的な言葉だった。自分の切り札すら相手の支配下に置かれてしまうのである。実際には自然を支配下に置くのは容易だが相手の魔法ごと支配するのは簡単ではない。この場合相手の切り札をはじめに封じ心を折りにいった澪の作戦勝ちである。
「…どうやら私の負けのようね。まさか本当に帝とは…。やっぱり私では若草くんといるには力が足りなかったのかしら。」
帝に至るレベルでないと若草とはいれない。
そう思った。
「問題はそこではありません。私も初めは弱かったです。でもみんなと一緒にいたいと思って強くなりました。」
「そう…そこが私とあなたたちの違いなのね。」
どこか寂しそうに言う水野。過去の自分を悔いているようでもある。
「ふぅ、もういくわ。…一応謝っておくわ。色々ごめんなさい。」
そう言って水野は去っていった。
「……疲れました。」
澪は1人崩れるのだった。




