深まる絆
100話突破しました。これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。
「剣君!。用意は出来たかい?。」
若草の声が響く。時刻はすでに昼を大幅に過ぎ夕方に差し掛かっていた。
「うっす。取り敢えず出来たっす。なんか忘れてる物があったら送ってもらうことにしますよ。」
「忘れるぐらいだからそんな大事なもんじゃないだろ。捨ててもらえよ。」
剣と重が荷物を持ってやってくる。何気に重の腕を気遣ってか剣が重の分の荷物も持っている。
「お前…荷物捨てていくぞ!。」
そんな荷物を放そうとする剣。
「俺の指示があったから片付いたんだろ?。それぐらいしてもバチは当たらないぞ。」
そんな剣に重が反論する。重はこの日の戦いのことを考えて前日に帰宅の用意を整えていた。
「はいはい…分かったよ。確かにお前のお陰ってのはあるしな。」
「ふふふ…相変わらず仲良しだね。良いことだね、切磋琢磨出来る親友が近くにいることは。お互いに大事にした方が良いよ。」
「…うっす。」
「はい。」
お互いに喧嘩はするが尊重し合う2人。その姿はかつてその実力ゆえに孤立した若草にとって眩しいものだった。そしてその大切さも知っている若草はその関係が長く続くことを願って言葉をかけたのだった。
「さて…とそれじゃあ2人とも荷物を積み込むといいよ。そろそろ出る時間だ。」
「後…剣君。君にとってはどうなんだろうね。花凛がバスで待ち構えているよ。」
若草が告げる。行きのバスでも剣は花凛の相手をしていて工程のほとんどを費やした。その結果かなりげっそりした。
「げっ…はぁ〜また寝れないのか。」
全てを悟り諦めたような顔をする剣。
「…ぷっ…頑張れよ…剣。」
「ごめんね剣君。僕には止められないんだ。あんなに楽しそうな顔の花凛を見てしまうとね。その代わりと言ってはなんだが…寮に帰ったら晩御飯は期待してくれて構わない。」
そんな剣の顔を見て笑いを堪え切れない重と花凛を止めたいが止めれない兄としての面を見せる若草。
「…はい。」
その後皆疲れで眠るバスの中花凛と剣だけが最後まで起き続けていたのは当然のことである。
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「ふぃ〜ただいまー。」
3日間の合宿を終えて全星寮に帰って来た。
「ただいまです。楽しかったですね。」
「…ただいまっと。…結局寝れなかった。」
「…………」
寮に帰って来て三者三様の様相を見せる1年生3人組。その様子を微笑ましげに見つめる若草。
「ん?大樹さんどうかしたんですか?」
そんな若草の様子を不思議に思った重が尋ねる。
「いや、…君達は何気なく言ったと思うんだけどね、『ただいま』と。それが嬉しくてね。」
若草が自分が感じたことを話す。今まで全星寮としてやってきたが重達がただいまと言ってくれたことによって本当の意味で1つになれた気がしていた。
「ふんっ、心配しなくてもここになんの文句もない。間違いなくここが俺達の帰る場所だ。」
「そうですよ大樹さん!。」
「私達の家です。」
ひょんな事からさらに結束が強まった全星寮。そんな全星寮の夜は更けていく。




