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知った弱さを力に変えて

「………っは!。ここは…。痛てて…」

 重がベッドで目を覚ます。腕には包帯が巻かれている。木暮との戦いでギリギリまで魔力を消費したうえに放った双砲火によって焼けたのだった。


「まだ寝てろ、重。お前は魔力切れなのに無理矢理あの魔法を撃ったんだよ。そんで腕はそのザマだ。てかなんだよあの魔法。初めて見たぞ。」

 剣がベッドの隣にある椅子に腰掛けながら言う。


「ん…あぁ、そっか。あの魔法は近接以外になんかないかと思って考えた魔法なんだ。でもまぁまだダメだな。反動が大きすぎて全く制御出来なかった。…そんで?どうなった?。あの時ずっと意識あっただろ?。」

 重は剣がやられたふりをしていることに気づいていた。


「…ダメだったな。結局えげつない魔法とさらにえぐい魔法を見せつけられて終わっちまった。不覚にも魅入られたぜ。…てかよ!お前…あの時はめっちゃ焦ったんだぞ。いきなり俺の名前を呼びやがって。」

 木暮の魔法を前に抵抗することさえ忘れ見入ってしまった剣。さらに如月の魔法はその魔法を切り裂いた。そのことで改めて自分との距離を知った。しかしそれで絶望などしない。距離を知ることができるということは手が届く可能性があるということなのだから。


「剣が起きてるのは知ってたからね。フェイクに使うついでに木暮さんの意識から完全に外させる目的もあったんだ。」

 重が自分が考えていた事を話す。木暮に隙を作る必要はあった。そこで剣を使った二段構えの策を練ったのだ。


「まぁあのおかげで不意をつけたんだがな。それでも…ダメだったが。」


「…そうだね。本当に強いよね。でもいい経験になった。この合宿に来てよかったよ。」


「ん、右に同じく。」

 2人の時間は過ぎていった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お!八神重、目を覚ましたか。」

 目を覚ました重と剣が連れ立ってリビングに向かうとその途中で如月と木暮に出会った。


「あ、はい。」


「…その腕…ぱっと見だが大人しくしていれば一週間ぐらいで治るはずだ。ちゃんと治るまでは大人しくしておくことだな。」


「わかりました。…あの…」


「ん?あぁそうか。…前に言った通りその怪我は戦いでは致命的だ。多少は火拳とやらは改善してたようだがまだダメだな。さらに双砲火だったか?あれは…俺は認めない。あんな自爆みたいな魔法を使う奴を信用するのは難しいわな。自分の手札で勝ち筋を探れる奴、そういう奴は結局強くなる。現にお前は一週間強くなる機会を喪失してるしな。いい機会だ。色々考えろよ。」

 如月が重の顔を見て言う。以前忠告した火拳の使用について。さらに自分を傷つける魔法を使用した、それは認められない。その理由を重に説く。


「そんで火祭剣。お前は…少し賢すぎるな。頭で考えすぎている。相手の事を知ろうとしすぎだな。だから一歩めが遅い。戦いで初撃が鍵を握ることもあるんだぜ?。それなら相手に自分を知られることもねーしな。。」

 剣は三属性を使用できる万能型である。その為に常に相手を観察しその上で魔法を使用する傾向にある。それ故に相手の初撃を受けやすい。そのことについて忠告していた。


「…あなた方は私の想像を超えていました。焦らず邁進してください。」

 そんな様子を見ていた木暮が重、剣に言う。勝ちに焦って身を削る重の気持ちも色々考えてしまう剣の気持ちも理解できる。それはかつて自分が通った道だったから。


「…んじゃ俺らはもう行くわ。なーんか暴れられることねーかなー。」


「あなたが暴れられる事件などそうそう起こってもらっては困るのですが。あぁそうそう、あなた方が用意が出来たら学園に帰ると言っていましたよ。そろそろ出ないと今日中に学園に着かないでしょう。」

 如月、木暮の2人は宿舎を出て行く。その後ろ姿を重と剣は眺めていた。


「おや?重君目を覚ましたかい?。起きたばかりで悪いのだけど帰る用意をしてくれるかな。もう出るから。」

 そんな2人を廊下に出て来た若草が発見し言う。タイミング的に重を起こしに来たのだろう。


「あ、はい。…って言ってももう用意は出来てるんですけどね。こんなこともあろうかと昨日のうちにやっておきました。」


「え⁉︎ずりーぞ。ちょ、ちょっと待っててください。おい!重、手伝えよ。」


「えー、俺手こんな状態なんだけど…」

 重の言葉に焦った剣が重を引き連れ自室に戻る。剣の部屋は初日に花凛の襲撃を受けみんなで遊んで散らかっている。それを放置していたのでかなり乱れていた。その整頓に向かうのだ。


「ふん、相変わらず騒がしい奴らだ。だがまぁそれで良いがな。あの程度で落ち込んでいては始まらん。それにあれでは奴らにも力になってもらうことになるだろう。」

 創士が重と剣の騒ぎを聞きつけリビングから出てくる。


「そこまで彼らを評価してくれているのは寮長として嬉しいですね。」


「無論貴様にもその力を奮ってもらうぞ。」


「分かっています。僕だって負けるのはあまり好きではないので。」

 2人の会話。その内容が明らかになるのは少し先の話である。



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