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勇者タカユキと七人の少女~異世界パンツ英雄譚3~  作者: 月見七春
第八章 未来は僕らの手の中
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第七十話

 



 レオとルナが無事に出国手続きを終えて門を通る。

 ペロリとクロちゃんも二人で手続きを迅速に済ませて後を追いかけます。

 門を抜けるとすぐにルーミリアの帝都が見えるよ。

 魔王の侵略を受けていた時には荒れ地にしか見えなかったそこは、クロフォードさんの手腕でいろんな花々が植えられて緑が生い茂っている。華やかな道になってる。


「人間世界の玄関だからな。こういう演出も大事だ」


 ローブを一緒に纏って周囲を見渡すクロちゃんは感心した様子だ。

 周囲を探すとルナがはしゃいだ様子で走り回っている。レオは退屈そうに見渡していた。


「おはなとか、いいわけ?」

「きれいだもん」


 飛んでいる蝶を見たルナが手をかざす。指先に止まった蝶に微笑みかけるルナはすっごく可愛かった。思わず魔界特製カメラでぱしゃり。ペロリはぬかりないので、コハナお姉ちゃんにお願いして音が鳴らないように改造済みですよ。ふふふ。

 十歳過ぎていたらちょっとはどきっとしたかもしれないけど、五歳のレオにはまだルナの愛らしさは早かったかな。退屈そうに空を見上げているだけ。


「いこうよ。よるになっちゃう」

「……ん」


 ルナも指先の蝶を息で吹いてそっと追いやると、歩きだすレオにくっついていく。

 とことこ歩く二人。レオは地図をしっかり見ているだけじゃなく、ピジョウを目指して歩いてくる人に挨拶をして、綺麗なお姉さんを見かけたらなぜか俯いて足早に歩き、おじさんとかに目的地がどこか尋ねていた。

 クラお姉ちゃんが何かを言いつけたっぽいなあ。いつものレオなら「ちちー! しりー!」とかいって抱きつくところなのに、今日はずいぶん大人しい。


「今日のレオ、へん」


 よくいった! ルナ、よくいった!


「どうしたの? だいじょうぶ?」


 ストレートな問い掛け、いいよ! ペロリすっごくいいと思う!

 レオは最初こそなんでもないと答えていたけど、ルナがあんまり心配するから俯いて言ったの。


「ママが……ほんめーがいるなら、いちずになるときもひつよーだって」

「レオ、意味わかってる?」

「……うわきはだめだって」


 五歳児が何か話し合ってる。


「おれ、すきなやつがいるから、がんばるんだ」

「ふーん」

「す、すきなやつっていうのはー」

「きょうみないです」

「……ううっ」


 かわいすぎか。鼻血でそうだよ!

 はしゃいで地団駄踏みたくなるペロリをクロちゃんが抱き上げた。

 あうんの呼吸ってやつだね。おかげで音を立てずにすみました。


「と、とにかくいくぞ。ペロちゃんの結婚式、てつだうんだ」

「ペロちゃんのためならしかたないよね」

「ペロちゃんは至高だからな」


 ええ……なに、二人とも。帰ったらちょっといいお菓子あげちゃうよ。


「こっちもなんか、そぼく? でいいね」

「にんげんせかいは、まかいみたいに機械ないから。きょーしゅー? をさそうんだってママが言ってた」

「ねえ、ルナ。クルママの言うことむつかしくない?」

「……ちょっと、そうかも」


 かわいい。終始でれでれするよ。子供たちが拙い舌っ足らずな声で親の話してるのとかもうそれだけでずるいよ。


「クラママもいいよね。レオ、うらやましい」

「ええ? おっかねーよ。おこるとき、きれるもん。ぷちって。ちょーおっかねーよ」

「でもあふれる気品がちがうよ」

「……ルナの言うことむつかしいよ」


 問答無用で抱き締めて頬ずりしたい。

 うずうずするけどクロちゃんが離してくれないので、できない。ぐぬぬ。


「ルーちゃんはこわいよね」

「なぐるし」

「レオのあたま、でこぼこしてそう」

「してるかも」


 笑い出しそうになる。何事も無く見守っていられるだろうか。自信なくなってきた。

 二人で歩いているだけで自然と話し出しちゃうんだから、かわいい。

 心配していたみんなの気持ちをよそに、きちんとうまくいっている。

 クラお姉ちゃんがレオにしっかり言い聞かせたことを切っ掛けに、レオががんばっているからだ。普段の意地悪とかしないでいるから、ルナもだんだん安心してきたのかも。

 いいぞいいぞう。


「……ルナも、いつかけっこんすんの?」

「いい人がいたら、するのかも」

「……だれとしたいの?」


 キュン死しそう。レオが精一杯アプローチかけてる。五歳児が。恋の駆け引きしようとしてる……!


「んー。パパみたいな強くてかっこいいひとがいいな」

「……パパ、ママたちにはだらしないよ?」


 あ、ちょっとレオがむすっとした。


「でも、お祭りで活躍するし。国のこといろいろ決めて、すごいよ?」

「お、おれだってすごいもん」

「えー」


 はげる。はげそう。助けを求めるつもりでクロちゃんを見たら、クロちゃんも顔がにやけてた。しょうがないよね。しょうがないよ。

 レオが精一杯背伸びしてるんだもん。五歳児でお兄ちゃんの息子の、女の人とみたらすぐに飛びつくあのレオが。ルナの気をひきたい一心で背伸びしてるんだもん。


「じゃあじゃあ、ちゃんとおつかいして帰ったら、すごいってことにしてよ」


 食い下がったレオ、かあいい。


「んー……ルナにいじわるしないなら、いいよ」


 ルナちょろいように見せかけて策士。もう意地悪すんな、そしたらあたしへの可能性はゼロだぜこのやろー! という主張だ。ちょっとどや顔で言ってるあたりは、クルお姉ちゃんそっくりです。


「っしゃあ!」


 レオのちょろさはお兄ちゃん譲りかも。


「じゃあ……休戦」


 手を差し出しルナに、


「いみわかんないけど……なかよしになるぞ」


 レオが答えた。ああでもレオ、めいっぱい結婚にむけてアプローチしたけどルナに仲良しになる程度にまでライン下げられてるよ! 気づいて!


「ふふふ……ルナの教育にはクルルとコハナと三人で全力を尽くしているからな」


 ルナの計算高さはクロちゃん譲りかな。組み合わさるとろくでもないことになりそうな筆頭の三人だなあ。言ったら後が怖いから言わないけど。

 さあ、あとは帝都に入って服を買うだけ。がんばれ、レオ! もっともっとルナの気持ちをひけますように!




 つづく。

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