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勇者タカユキと七人の少女~異世界パンツ英雄譚3~  作者: 月見七春
第五章 悪魔の薬酒、祭りの準備
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第四十七話

 



 館が半壊。補修工事を突貫でしてくれている間の寝場所に悩み、宿を取るべきか悩んだけれど領主の館はいわゆる象徴だから気軽に離れるべきじゃない、という意見が出た。

 これくらいでは動じないのだぜ、という主張をするために館に待機することに。

 そうなると部屋をなくしたクルルとルナ、ナコ、ペロリ、ルカルーと三つ子の寝場所に困る。

 クルルとルナにはクラリスの部屋に。コハナの部屋にルカルーと三つ子を。ペロリはクロリアの部屋に。そして俺はナコと二人で居間を使うことになっている。

 動じてないのはいいんだが、しかしなあ。ルカルーが頭領さんと話すところによれば最低限の復旧には魔界の便利な機材などを使っても最低限半月、基本的には一ヵ月は見て欲しいとのことだった。

 コルリぃ……。

 渋い顔で久々に空へと呼びかけたよ。おい女神ってね。

 程なくして稲光と共に現われた女神は俺たちに後頭部を向けて、ぽちぽちコントローラーを握って操作していた。


「あーもーほんとさー。海外ゲーの3Dだと酔うけど、和ゲーならいけるかと思ったのにさー。カメラぶんぶん振るとまー酔うよねー……」

「これ二人プレイできます?」

「できたらコルリをこき使ってるわー」


 頭痛がするなあ。まったく、こいつらときたら。


「おい! おい! うつってるから! こっちに気づけ、おい!」


 俺の叫び声に女神が何度もこちらにふり返っては前を向いてを繰り返した。何度見なんだ、それは。

 そしてどういう理屈なのかすっとコルリが見える位置に出てきた。カメラ式なの? 投影されてるの? それとも出てきてるの? 今更ツッコミはしないけれども。


「あ、世界樹よろこんでもらえた?」


 のほほんといい笑顔で聞いて、おまえ!


「世界には一本必要だよね。コルリに命じておいたんだけど、育ったー?」


 のんきにコントローラーを持ったままで女神も聞いてきた。

 二人とも、あれだな。ここんところ大きな戦いがないからって地上の監視をさぼってやがるな!


「ご覧の有様だよ!」


 後ろの半壊した館を指し示す。

 眉間に皺を寄せて二人揃って壊れた館を睨む。


「タカユキ、嫁と大げんかしたからって家を壊すのはどうかと思う」

「ちっげえよ!」

「月のものがきてハーレムを許せなくなった誰かの凶行?」


 こわ!


「ないから、そういうのも! そうじゃなくて、お前らにもらった種を植えたらすっげえ育って館を壊したの!」

「育ち過ぎちゃったか……」


 渋い顔で俯く女神(コントローラーは離さない)。


「ごめん!」


 虚空に向かって大声で言うと、すっきりした顔で俺に後頭部を向ける。


「じゃあごめんタカユキ。いま女神は2Bちゃんのレオタードを眺めることに忙しいからまたね」

「おい! おい!」


 すぅーっと消える女神に隣にいたコルリが苦笑いを浮かべていた。


「ごめん。なんか迷惑かけたみたいだね」

「ほんとだよ。まあ……娘の成長に必要なものが取れるからいいんだけどさ」


 咳払いをしてから尋ねる。


「破壊神の様子はどうだ」

「んー。もとの虫かごに戻されて拗ねてるね。久々に暴れたからまあすっきりしてはいるみたいだけど」

「……破壊神が喜ぶ娯楽とか知りません?」

「きみたちの世界を壊すこと」

「そ、それ以外で、なにとぞ」

「悪趣味なこと以外となると……なんだろうな。まあ女神はさっき見た通りゲームとか大好きなんだけどさ。破壊神も女神の対の存在だから、ゲームは無視できないね。あと美味と酒が好きかな」


 ゲーム、か。


「女神はインドアだけど破壊神はめちゃめちゃアウトドア。だから世界を相手に破壊することを遊びにできちゃうわけで」


 ううん……。そんな奴を相手に満足させるゲームを用意するのか。

 どうしたもんか、と悩む俺にコルリは笑って言った。


「きみたちの合戦? あれなんかは気に入ると思うよ。要はバトルだからさ」

「……ふむ」


 ゲームはなんとかなりそう、か。ならば。


「酒とか飯の好みはどうだ?」

「女神は気軽に食べられるものであれば雑に食べるけど」


 うるさいなあ、という女神の声が聞こえる。やれやれ。ファーストフードばっか食ってそうだなあおい。頭が痛いよまったく。


「破壊神は手の込んだ料理が好きだね。酒も魔界の……それこそ悪魔の薬酒クラスのきついのが好きだな」

「前の旅を思い出す名前だな」

「あ、一作目だけでなく二作目もよろしくね?」

「いったいどこに向けたどんな宣伝なんだ……」

「じゃあがんばって、勇者さま」


 笑顔で手を振るコルリがすぅっと消えた。

 目的が鮮明になってきた。それはいい。だが、悪魔の薬酒か。

 少しばかり嫌な予感がするのは、俺だけだろうか。


 ◆


 半壊した館の中でも無事でよかった部屋の一つが執務室だ。

 椅子に座って女神から聞いた情報を伝えると、クロリアが唸った。


「悪魔の薬酒か……また厄介なものを」

「悪魔の薬はお前の姉貴の魔王が作った薬だった。ってことは姉貴が作った酒か?」

「そうともいえるし、そうではないともいえる……ふう」


 俺の問い掛けにクロリアが長い長いため息を吐く。


「代々魔王の一族に伝わる薬の開発。それが悪魔の薬だ。地上へ進出するための進化の秘宝を目指したものだ。けど、悪魔の薬酒は違う」


 そう言って椅子に身体を深々と預けた。

 クロリアの表情は冴えない。


「……面倒ごとになるのか?」

「姉上に頼まなきゃならない」


 ああ。あの魔王にか。俺たちを翻弄して一時は壊滅まで追いやったやり手の魔王様にか……。


「た、頼むだけで済むのか?」

「いいや」


 頭を振ったクロリアははっきりと断言した。


「間違いなく、一騒動が起きる。覚悟しろよ」


 俺に向かって厳しい視線を投げかけた。

 えええええ。なに! なにが俺を待っているの!




 つづく。

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