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代償の意味

「病はございません」


「……?」


アルカードは椅子に腰掛けたまま、机に降り注ぐ陽光を浴びていた。その報せは、何の前触れもなく、突然彼を打った。


「待て、待て——つまり、レイアはまったく健康だと言うのか?」


「はい。検査は——生体的、魔法的な系統すべて——何も検出されませんでした。症状もございません。属性の乱れもございません。魔法・アイテル由来の呪いもございません」


「では、どうして——?」


「病はないと申し上げました。健康だとは申し上げておりません」


「……?」


「では、何が問題なのだ」


「複雑だ、とだけ申し上げておきましょう。非常に複雑です。とにかく、問題の核心をお話しする前に——陛下は、幽霊というものを信じますか?」


アルカードは肩の力を抜き、椅子の背にもたれかかった。


「この世界においては、な。幽霊は存在する。種類も多い。スケルトン。ゴーストキング。その他もろもろ」


「ふむ」デルタが言った。「【超越霊】と呼ばれるものを、聞いたことは?」


「……?」


アルカードは驚いた。ヴァンパイアは、ほぼ不死の存在だ。古代の知識の蔵書を持ち、彼自身、何世紀にもわたって学んできた。


「そのような概念を耳にするのは、これが初めてだ。それは、一体何なのだ」


デルタ4が窓辺へと歩み出た。


「陛下、幽霊とは霊です。様々な種類がございます。誰かが死んだ後にただ存在し続ける普通のもの——彼らはあの世へは行かず、やがて目的を失うか、迷い彷徨うようになります。恨みを抱くようになったもの——堕落した霊はレイスとなります。スケルトン。グール。ゾンビ。その他もろもろ。ですが——」


「……ですが、何だ」


「ですが、そこからすり抜ける奇妙な現象がございます。時に、霊はこの現世という枠組みそのものを、完全に超越してしまうことがございます。少なくとも、それが我らのマスターの理論です。そして、陛下のご質問にお答えするならば——その種の霊が、なぜか、あなたの娘様に取り憑いております」


アルカードは立ち上がった。様々な感情と懸念が入り混じり、圧倒されていた。


「それを何とかする方法は——」


「まだ話は終わっておりません、陛下」


デルタ4が再び遮り、振り返った。差し込む陽光は助けにはならなかった——アルカードの目に映るのは、光の中に浮かぶ、赤く丸い瞳を持つ暗い人影だけだった。


「陛下——霊があの世へと渡ろうとする時、いくつかの……可能性がございます」


「可能性?」


「四次元的制約というものを、お聞きになったことは——我ら愚かな死すべき者に神が教え給うたものを超えた、あの理論を」


アルカードは目を細めた。


「聞いたことはある。時そのものが壁として作用するという理論だ。境界だ。あの世は、その壁の向こうに存在する。幽霊とは、この現世に囚われた霊で、その絆と執着を打ち破ろうともがいている存在だ」


「では、想像してみてください。霊があの壁を渡ろうとする様を。ほとんどの場合は失敗し、先ほどお話ししたもの——レイス、スケルトン、かつての自分の成れの果てとなります」


彼女は一拍置いた。


「ですが、中には……壊れることも、堕落することもない者がいます。四次元的制約を完全にすり抜け、まったく別の何かへと変わるのです。いわば、星座のような存在。いかなる時にも縛られず。いかなる物理法則にも縛られない」


「星座、か……」


「少なくとも、【クルヴィンの大書】にはそう記されております」


アルカードは凍りついた。


「クルヴィンの大書。あれは古代の記録だ。世界と世界の狭間を旅した、ある放浪者の視点から書かれたものだ。どうやって、それに触れることができた」


「我らには我らのやり方がございます、陛下。ですが、これは一つの説にすぎません」


「……一つ、だと?」


「もう一つの可能性は、より単純で、はるかに不穏なものです。あの壁を渡ろうともせず、そもそも試みることすらしない霊がいます。彼らはただ……その段階そのものを超越してしまうのです。霊であることをやめ、名もなき何かへと変わります。分類もされない。前例もない」


部屋を沈黙が満たした。高い窓の外を雲がゆっくりと流れ、机の上の陽光が移ろっていく。


アルカードは、ゆっくりと椅子に座り直した。指が肘掛けに食い込んだ。


「一体、どうやってそれを突き止めた。わしの知るいかなる学者も、聖職者も、これを記録した者はいない。疫病の仮面をつけた傭兵の一団が、なぜ、そのようなものが存在すると告げに来られるのだ」


デルタ4は答えなかった。ただ、わずかに首を傾げただけだった。


その時、アルカードはそれを感じた。気配。背後にではない。部屋の向こうにでもない。


すぐ隣に。


彼は首を巡らせた。


デルタが、彼の椅子のすぐ横に立っていた。腕を組み、前方を見つめ、無言のまま。まるで、最初からずっとそこにいたかのように。


アルカードの本能が悲鳴を上げた——危険を察知したからではなく、ヴァンパイアである自分が、この男の入室にまったく気づかなかったという、その事実そのものに。


「我らは、それを本で読んだわけではございませんので、陛下」その声は低く、揺るぎなかった。布に包まれたメスのように。「我らは、それを生きたのです」


アルカードは、その仮面を見つめた。その奥の虚ろな瞳は、何も映し返さなかった。


「……お前自身が、それを目撃したというのか?」


デルタは頷かなかった。ただ、そこに立っていた。静かに。


アルカードはゆっくりと息を吐いた。何世紀も生きてきたヴァンパイア。戦を戦い抜いてきた。同胞を弔ってきた。それでも今、自らの館の、自らの椅子に座りながら、彼は久しく感じたことのない何かを感じていた。


不確かさ、というものを。


「それは、そもそも可能なのか」


彼はもはや、幽霊のことを尋ねているのではなかった。


娘が救えるのか、と尋ねていた。


「デルタ、お前が何を生き抜いてきたのか、何をしてきたのか、それはわからん。だが、ただ一言だけ聞かせてほしい。お前は、娘をこれから救うことができるのか? もはやわしは、お前の口から出る途方もない話を、信じるしかない所まで来ている。あの戦の折、わしはお前を見た。お前のような者が、嘘をつくとは思えん。子供が関わっているとなれば、お前のような感情なき者であっても、それは理解できるはずだ」


アルカードは再び立ち上がった。


「レイア——傍から見れば、誰もがあの子を、愛らしい子供だと思うだろう。だが、あの子は子供ではない。あの子の生は、ある一点で循環している。毎年、あの子は五歳になる。ずっと五歳のままだ。毎年だ。何が起きたのかすら、あの子は覚えていない。そして、毎回必ず病に伏せる——苦しみの中を生きている。せめて……せめて、あの子の苦しみを少しでも和らげてやれればと、わしはずっとそう思ってきた」


「娘を救ってくれ、デルタ」


「代償がかかる」


「言ってくれ」


「何かを得るには、すべてを失わねばならない」


「それは、どういう意味だ」


デルタが前に進み出た。光を取り込んでいた窓が、突如として、濃い黒霧に覆われた。部屋は夜のように暗くなった。


「お前にとって最も大切なものを、手放さねばならないという意味だ。お前の命。お前の記憶。お前の存在そのものすら。それらすべてを、俺に差し出せ。俺は、お前の力も、財も必要としない」


「娘は救う。だが、娘はお前を覚えていないだろう。代償は、それだけ単純なことだ」


デルタは取引のために手を差し出した——悪魔ですら結ばないような、ある種の存在に関わる取引を。


「お前だけで十分だ」


アルカードは、何も考えられぬまま、そこに立っていた。何もなかった。彼は自らの民に、その命を捧げてきた。幾星霜、数え切れぬ戦を戦ってきた。


だが、彼はデルタの手を握った。


「必要なことをしてくれ。娘さえ無事であれば、わしはお前に、この命を差し出そう」


その瞬間、アルカードはただ一度、瞬きをした。


黒い霧が晴れた。部屋は空だった。二つの人影——まるで最初からそこにいなかったかのように、消え去っていた。


アルカードだけが、そこに残された。


そして、一つの声が最後にもう一度、響いた。


「よく食べて休んでください、陛下。あなたの健康も、大切ですから」

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