プロローグ 『やべーやつらの紹介』
その男、悪人顔につき――。
「オラオラオラオラァ!! なに魔物の分際で尻込みしてんだ、キ●玉ついてンのかぁゴラァ!!」
身の丈ほどのグレートソードを軽々と振るい、魔物の群れを相手に切った張ったの大暴れ。
切る、叩く、断つ、潰す。暴力と表現することさえ生ぬるい暴力。
どす黒い返り血を浴びて、大きなキズ痕が走る容貌が残虐に歪む。
その様は誰が呼んだか『黒衣の蛮族』。――名をカイ・グランツ。
その女、悪人顔につき――。
「お掃除お掃除~。はいっ、お~しまい☆」
耳に眉に口に額に、鈍く輝く装飾具。
デコってラメった凶器のような爪先を不規則に振れば、毒々しいまでに派手派手しいサイドテールが可憐に揺れる。
彼女の指先ひとつで、世界が揺れる。世界が揺れれば、魔物の巨体がくずおれる。
彼女のようなものを人は魔法師と呼ぶ。――名をスヴァルジェリヴル、愛称は『ヴル』。
その男、悪人顔につき――。
「やれやれ。相も変わらず愉快な面々で。今回も早く帰ることができそうですね」
長く艶やかな金の御髪をゆるりと束ねて、角枠の眼鏡の反射に知性が宿る。
柔和な微笑み、細められた双眸、物腰柔らかで穏やかな声音。
ひとつひとつは善なる要素、しかしそれだけで塗り固められた容貌は万人が抱く、『胡散臭い』。
杖を振るえば礫が舞う。彼は積み上げた知により世の理を識る者――魔導士デリオラ・ハインケス。
その女、悪人顔につき――。
「あー。うー。あ”あ”あ”ー」
曰く、「おなかすいた」(カイ訳)。
目深に被ったフードの奥に輝く金色の瞳。そのフードは口許さえ覆い隠す。
胸から上は厚着も厚着なのに腹は出す。右脚はソックスなのに左脚はフィッシュネットタイツという珍妙なチグハグさ。
両手に握り込んだ物騒な得物で容赦なく魔物を刻んでいく。――実は”龍の落胤”、リ・ル・ロロララ。
「……この人たち、めっちゃ怖い見た目とそこそこ破綻した人格さえなきゃ一流なんだけどなあ」
彼らに託された依頼、『郊外の農村周辺地域の魔物の掃討』を見届けるべく随行した証人、カイルは遠巻きに4人の傭兵たちの仕事ぶりを眺めて、溜息まじりに呟く。
そう。カイルの独白の通り、彼らは悪人ヅラのやべーやつらだったのだ。




