表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世で弟だった旦那様が超シスコンになっていてどうにか矯正したい。  作者: ありま氷炎
第二章 私はあなたの姉でしたが、今はただのメイドです。
21/34

2-7 メイド長と厨房長


「マリー様。本当に申し訳ありません」


 ロンが部屋を去って、メグが朝食の片付けを終わらせたところで、メイド長のセリーナがやってきた。


「えっと、あの。メイド長。頭を上げてください。お願いですから」

「マリー様。私があの場から離れなければ、マリー様が事故に遭われることもなかったのに。本当に申し訳ありません」


 セリーナは膝を折って頭を下げたまま、そう言葉を続ける。


「セリーナ、やめて。マリーは誰に対しても怒ってないし、今こうしてジャネットとして幸せだから」


 彼女は強いメイド長としてメイドたちを指揮していた。それが首を垂れて謝罪を繰り返すのは見ていて、居た堪れない。

 だって、マリーは本当に誰も恨んでないし、ロンを庇えてよかったとしか思ってないもの。

 私だって記憶を取り戻すまでは、ジャネットとして必死だったけど、今はマリーの記憶を取り戻して思う。

 マリーって幸せな人生だった。

 セリーナがあの場にいなかったのはたまたまなんだから。

 いても事故は防げなかったはず。むしろセリーナが私を庇って死んじゃったりしたら、本当に嫌だ。


「マリー様?」

「セリーナ。私は今ジャネットよ。あなたの部下です。立ってください。マリーは十分幸せだったし、あなたがいたらきっとあなたはマリーを庇ったでしょう?そんなの嫌なのよ。だからね。もう忘れて」

「マリー様……」

「だから、私はジャネットだって」

「本当に、マリー様なのですね。あなたは」

「う、ん。まあ、記憶があるだけなんだけど」

「生まれ変わりなんてあるんですね。こうして戻ってこられて私は嬉しいです。マリー様にしたかったこと、これから沢山しますから」


 きつい、冷たいイメージのあるメイド長の姿はそこにはなく、あの頃のおしゃべりなセリーナがそこにいた。


「セリーナ。あの、だから。いいって。私は今ジャネットだから。それよりも私はメイドの仕事に戻りたいんです。あなたからロンに言ってもらえますか?」

「ジャネット、それは」


 メグがぎょっとして口を挟んできて、セリーナも驚いた顔をしていた。


「私から旦那様に、など言えるわけがありません。大体マリー様は何もしなくてもいいのです。知らなかったとはいえ、仕事をさせてしまい申し訳ありません」

「セリーナ。だから、謝らなくていいから。っていうか、マリーのことは忘れて、ジャネットとして接してね」

「それはできません。あなたはマリー様なのですから」


 セリーナにそう言い切られてしまい、なんだから困ってしまう。

 だから嫌だったのだ。

 まあ、信じてくれたのは嬉しいけど、こういう扱いは本当に困る。

 マリーはすでに死んだ存在なのに。

 今の私はメイドのジャネットだ。


「マリー様。厨房長も会いたいと申しておりました。連れてまいります。きっと喜びますわ」

 

 困惑している私を置き去りにセリーナは意気揚々とそう言うと部屋を出て行ってしまった。


「……なんか頭が痛いんだけど」

「まあ、まあ。メイド長が嬉しそうだったからいいんじゃないの?興奮したメイド長を見たのも初めてだと思ったけど、嬉しそうなメイド長の顔も初めてだったわ」


 メグの言葉に私の気持ちはますます複雑になってしまった。


 その後、セリーナの言葉通り、厨房長も部屋にやってくる。


「ほ、本当にマリー様の生まれ変わりなんですか?」

「……マリーの記憶はあります」


 厨房長はセリーナと違って少し疑っているみたいだった。

 そう、これが普通の反応よ。

 信じてもらえない方が、いい気がする。

 セリーナとかちょっと過剰な気もするし。


「信じるか、信じないかはあなたの自由よ。これまでと同じようにジャネットとして接してほしいの」

「あ。ジャネット」


 メグが何かに気がついたみたいで、呼びかけてきた。 

 え?おかしいところあった。


「その言い方。やっぱりマリー様ですね。旦那様の大好物のこと、話してもないのになんで知っているのかと思っていたけど、マリー様でしたか」


 え?忘れていたけど、ロンはわざわざ厨房長に確認したんだ。

 厨房長も話したか話してないかくらい、覚えてなくてもいいのに。


「この、メイソン。マリー様の大好物の鶏のイチゴジャムかけを今夜は腕によりをかけて作りますから!」

「鶏……イチゴジャム」


 メグが何か遠い目をしたけど、それは知らない。 

 今世で初めてめちゃくちゃ嬉しいけど、そんなに張り切らなくても。


「メイソン。ほら、そんな無理しなくていいから。確か、お父様もお母様もそんなの甘すぎるとかで好きじゃなかったでしょう?」

「ご安心くだせい。大旦那様たちにバターソースがけにいたしますから!」

「バターソース……」


 メグ、繰り返さなくてもいいから。

 ほら、バターソースは普通でしょう?


「お昼は時間がないので、我慢していただくことになりますが、夕食を楽しみにされてください!」


 胸をバンと叩き、メイソンは言い切った。

 そういえば、こんな熱い人だった。

 ジャネットとして何回か会話していたけど、どっしり落ち着いていた感じに変わったと思ったのになあ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ