2-6 ドレスの寸法
「ジャネット。本当にごめんなさい」
メグは謝罪から始め、昨晩の出来事を私に説明した。
「……メグが話にいったわけじゃないのね」
「もちろんよ。部屋を出て、頭を冷やそうと庭に出たら旦那様に捕まったのよね。びっくりしたわ」
それはびっくりするだろう。
私も同じ立場なら驚く。
「あなたが言っていた旦那様が怖いって意味がわかった気がしたわ。だから全部話しちゃったのよ」
メグは昨晩の出来事を思い出したのか、ちょっと青白い顔をしていた。
これは同情すべきことかもしれない。
きっと、あの胡散臭い笑顔で脅したんだろうなあ。
怖い怖い。
「気持ちはわかる。だから、許してあげる」
「本当。ありがとう」
そう言うと彼女は嬉しそうに私を抱きしめた。
「裏切った形になってごめんなさい。本当」
「うん。わかった。それはいいから。でもわずか一晩で屋敷内のみんなが知るって」
「まあ、前々からみんな気にしていたから。ああ、そうだ。メイド長が会いにくると思うわ。あと、色々と」
「……なんだろうね」
「ものすごい興奮してたわよ。あんなメイド長見たの初めてかもしれない」
「興奮??」
なんだろ。それ。
「それよりも旦那様がお待ちね。早く支度しましょう」
「支度?」
「今日からあなたはマリー様の生まれ変わりとして、この部屋の主なのよ。今はドレスが一枚しかないけど、他にも作るって言っていたわ。マリー様のドレスも少し手直しすれば着れそうだから、手芸の得意な子に頼むわね」
「何か、すごいことになっているんだけど」
「大人しく従っていたほうがいいと思うわ。ジャネット。じゃないと本当に監禁の道かもしれないわ」
「え?そんなことに!」
「昨日の旦那様のことを思い出したら、ありえることよ。だから、屋敷を出るなんてもう考えない方がいいと思う。これは私の助言よ」
メグがえらく真剣な顔をしていて、私はごっくんと唾を飲み込んだ。
☆
髪はメイドの時のような一つ結びではなく、編み込まれ薄く化粧をされた上、この間新調してもらったドレスを身に纏った。
準備万端に整えてから、メグがロンを呼びにいく。
隣の部屋で待っていたのかと思えるほど、彼は部屋にやってきた。
……まさか本当に隣の部屋に待っていたの?
そんなこと聞くのも馬鹿らしく、半ば諦め気味に顔を上げた。
「姉上。やはりそのドレスは似合いますね。寸法もぴったりです」
今気がついたけど、私の体型はマリーと違う。
なのになんで、このドレスは寸法がぴったりなのだろう?
私のメイド服から寸法をとって作ったの?メイド服はゆったりしているから、寸法とかよくわからないと思うけど。
「姉上は以前よりもすこし、ふくよかになっていたので仕立て屋に伝えてよかったです」
「ふくよかって、まあ、確かにマリーよりは太ってるわよ。華奢だったものね」
「そんなこと。姉上は、その以前より、女性的なふくらみが」
「は?」
「旦那様!」
メグがロンを遮ったけど、なんか今聞き捨てならない言葉を聞いた気が。
女性的な膨らみ、それって?!
「姉上。忘れてください。そのドレスを元にもっとドレスを仕立てる予定です。今日は仕立て屋が布地を持ってくるので、好きな布地を選んでくださいね」
「ロン、ちょっと待って。話を流そうとしないで。ドレスの寸法がぴったりなのはやっぱりおかしいわ。なんで私の寸法がきちんとわかったの?」
「それは、あの、姉上を抱きしめた時に」
「え?ジャネット。そんなことに!」
「メグ。違うわよ。ロン、なんでそれでわかるの?おかしくない?」
「大体わかるのです」
「旦那様はさすがですね」
「メグ、そこで感心するのはちょっとおかしいから。ロン、もしかして他の女性にも同じことしてるの?」
「するわけないでしょう?僕も男ですからそれなりに経験はありますが、むやみに抱きしめたりはしません。姉上だから抱きしめただけでそれなりの大きさがわかったのです」
「お、大きさ?」
「旦那様。朝食になさいましょう。ジャネット、マリーナのパンにハムとチーズを挟んでみたのよ。試してみて」
「え?うん。ありがとう。え、ちょっと、流さないで」
「姉上。早く食べてしまいましょう。お茶の時間にお菓子が食べれなくなってしまいます」
お菓子?今日はどこのお菓子かな。
朝食が遅れるとお菓子も食べれなくなるかもしれない。
ロンのお菓子という単語に、私はすっかり惑わされ、結局うやむやにされて朝食時間は終了。彼は珍しく仕事があるからと、逃げるようにいなくなってしまった。




