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【書籍化】最強守護騎士の過保護が止まりません! ~転生令嬢、溺愛ルートにまっしぐら!?~  作者: 櫻井みこと
魔法学園一年生

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魔の介入

 待ち合わせの場所が通いなれた学園の図書館ということで、ララリは安心しているようだ。

 けれど、セシリアはかえって不安だった。

 もしそこで戦闘になれば、他の生徒を巻き込んでしまう可能性もある。フィンの狙いが何なのかわからない以上、慎重に対応するべきだろう。

 何かあったときにどう動くのか。

 軽く打ち合わせをしてから、フィンの待つ図書室に向かった。

 アルヴィンが先頭に立ち、その背後にセシリアとララリが続く。

 どうやら休日なので、今のところ他の生徒の姿はないようだ。それに安堵しながら、周囲を見渡す。

「ここだよ」

 すると、図書室の奥から声がした。隣にある部屋からのようだ。

(あそこはたしか、特別図書謁見室、だったかしら?)

 特殊な魔法書がおいてあり、教師の許可を得た者しか入れない部屋のはずだ。どうやらフィンは、その特別謁見室でセシリア達を待っているらしい。

 あの場所には、防音魔法が掛かっていると聞く。

 もし図書館に他の生徒が来ても、扉を閉めてしまえば中の話を聞かれることはないだろう。

 まずアルヴィンが先に立ち、続いてセシリア。

 最後にララリが続いた。

 部屋の中は思っていたよりも広く、図書室の半分くらいの大きさはありそうだ。複数の机と椅子が並んでいて、その一番奥にフィンの姿があった。彼は開いていた分厚い本を閉じると、立ち上がってこちらを見た。

「わざわざ来てもらって、すまないね」

 フィンはそう言うと、アルヴィンとセシリア、そして最後に隠れるようにしていたララリを見た。その姿から、以前のような好戦的な雰囲気を感じることはなかった。

「君たちの手を借りるのは不本意なんだけど、どうしても、僕ひとりでは手に負えない問題のようだ。話を聞いてもらえないかな?」

 少し悔しそうにそう話すフィンからは、あの黒い瘴気を感じない。

 戦闘になる可能性さえ考えていたセシリアは、少し拍子抜けしたくらいだ。

 それでも戦わずにすむのなら、その方がいい。

「ええ」

 だからセシリアは、彼の言葉に短く頷くと、近くにある椅子に座り、話を聞く体制を見せる。

 ララリも隣に座ったが、アルヴィンはふたりの背後に立ったままだ。フィンを警戒しているというよりも、守護騎士としての立場から、主の背後を守るようにして立ったのだろう。

 フィンは、そんなアルヴィンにちらりと視線を走らせた。

 だがその視線から感じ取れるのは敵意ではなく、アルヴィンが話を聞いてくれるのかどうか、少し心配しているようにさえ見えた。

 王女よりも強い魔力を持つアルヴィンの力を借りるために、わざわざ主であるセシリアに声をかけたのかもしれない。

 セシリアがアルヴィンを見上げると、彼は軽く頷いた。

 それを見て、どうやら話を聞いてもらえるようだと安堵したフィンは、どこから話そうか、と小さく呟いた。しばらく考え込んだあと、こう語りだした。

「僕はここ最近ずっと、魔族について調べていた」

「魔族?」

「ああ、そうだよ。なぜそんなことをしていたかというと、アレク王太子殿下から頼まれたからだ」

 いきなり魔族という言葉が出てきて驚くも、それがアレクの命令だったと知って、セシリアは複雑な心境になる。

 彼が魔族のことを調べていたのは、その力を手にするためだったのかもしれない。

「アレク様が、どうしてそんなことを」

 悲しげにそう呟くララリに、フィンは答える。

「殿下は、敵を知るために、とおっしゃった。でも、魔族による被害など、ここ数十年起きていない。僕も疑問に思ったよ」

 それでも、アレクに命じられたことなので、フィンは魔法の研究だと言って授業にも参加せずに、この部屋にいたようだ。

「それだけなら、まだよかったんだけど。殿下の名前で、この特別図書謁見室にも入ることができたからね」

 魔族についての報告書をまとめて提出してから、少しずつ奇妙なことが起こり始めたと、フィンは語った。

 友人であり、王太子であるアレクの側近候補であるダニーが、やたらと怒りっぽく、周囲を妬むような言葉を口にするようになった。今までそんな人柄ではなかったことから、フィンはとても驚いたようだ。だがそのうち、自分にも同じようなことが起こり始めた。

 自分よりも強い魔力を持っている者が、強い立場の者が、妬ましくて仕方がない。とにかく強い力が欲しくて仕方がない。

 そして、それもダニーと自分だけに留まらず、他の生徒にも表れはじめているような気がした。

「魔族は人の悪意を好み、それを強めてしまう。魔族のことを調べていて、そんな記述を見たばかりだったから、もしかしたら、と思ってね」

 魔族のことを調べていたアレクが、その悪意に憑りつかれてしまったのではないか。フィンがそう考えたのも、悪意に支配されるようになったのは、彼の身近にいる人間ばかりだったからだ。

 側近候補であるダニー・マゼー。

 同じ立場であるフィン。

 そして、セシリアの兄のユージン・ブランジーニ。

 もしかしたら王女のミルファーもそうかもしれないと、フィンは語った。

「王女殿下は、もっと優しい思いやりのある方だった。ご自分の兄上に、あのような言葉投げかけるようなことはなかったはずだ」

 たしかに彼が名前を出した人達は、セシリアが覚えている限り、ゲームのときと性格がまったく違う。

 魔族の介入によって歪められてしまったのだとしたら、納得できる話だ。

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