表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/65

52 勇者のバイト生活



 とある食堂にて。

「へいらっしゃいっ!」

 黒髪の男が、客に元気よく挨拶をするが、客は戸惑っていた。

「え?」

「サロ、なんだその挨拶はっ!普通にしやがれっ!」

「さーせん!」


 とある屋台にて。

「はい、おつりね。」

「・・・へっ!?」

「こらサロっ!それは、銅貨じゃねー!こっちが銅貨だ馬鹿野郎!」

「す、すいません・・・」


 とある厨房にて、皿の割れる音が響き渡る。

「何枚目だと思ってる!?」

「すいません!15枚目です!」

「よし、記憶力だけはいいようだ!だったら買い出しに行ってこい!」

「わかりましたー!」



 とある町の大通り。

 俺は、重い荷物を抱えて、バイト先に戻るところだ。慣れないことばかりで、怒られてばかりの俺だが、充実感がある。それでも落ち込みはするが。


「持ちますよ。」

 唐突に声をかけられた俺だが、驚くことはなかった。俺の傍にはいつもサウスがいるのを知っているからだ。護衛と言えば聞こえはいいが、俺は少しだけストーカーを連想してしまって、怖く思っていることは秘密だ。


「これくらい平気だ。だが、ありがとな。」

「いいえ。それにしても、なぜこのように働いているのですか?欲しいものがあるのなら、私が買いましょう。だから、好きなようにお過ごしください。」

 同じようなことを前にも言われた。だから、俺はため息をついて同じ答えを返した。


「これが俺のやりたいことなんだよ。普通に働いてみたかったんだ。」

「本当ですか?」

「本当だ。ま、自分でも変だとは思うけどな。俺、バイトとかしたことなかったし。一応金は稼いでいたけど、普通の仕事をして稼いでいたわけじゃねーしな。」

「どのような仕事をなさっていたんですか?」

 普通の仕事ではないと言ったせいか、サウスが食いついてきた。でも、サウスに説明できるような仕事ではない。いや、いかがわしい仕事というわけではない。


 雑誌とか、カメラとか・・・そういうのが理解できないだろうと思ってな。俺のへたくそな説明を聞いても、混乱するだけだろうし。


 周りがコンビニや居酒屋、ファミレスなどの接客業をやる中、俺はカメラの前で女の理想の王子を演じていた。いや、カメラの前だけではないか。俺は人前では、王子を演じていた。


「詐欺師だな。」

「え?」

「いや、嘘だ何でもない。たぶん、この世界にはない仕事だから、言ってもわからないと思う。俺の住んでいたところとこの世界は、違いがありすぎるからな。」

「それは、残念ですね。それにしても、そこまで私たちの世界とは異なるのでしょうか?」

「そういえば、あまり前世のことは話していなかったな。」

「前世?」

 隣を歩いていたサウスの足が止まったので、俺も止まってサウスを振り返った。


「前世とは・・・つまり。」

「・・・あぁ。俺は、一回死んだんだ。この世界に来る直前に、俺は刺されて死んだ。」

「死んだ・・・それは、もしかして召喚されたことが原因ですか?」

 なぜか汗を流すサウス。暑いのか?今日はそう暑いとは思わないが。


「それは、わからないな。召喚されるために俺は死んだのか、死んだから召喚されたのか。女神もそんなこと言ってなかったし。」

「そうですか。」


 今まで考えたこともなかったが、俺はなぜ死んだのだろうか。

 勇者として召喚されるために死んだのなら、たまったものではないが、おそらくそれは違う気がする。


 俺の死に意味などない気がする。そう、それはこれからの死、魔王と対峙し、魔王に殺されて死ぬのと同じだ。

 俺が死んだって何が変わるというのだ。俺を好きだと言っていた女だって、一時は涙を流すかもしれない。でもいつか忘れ去って、次のいい男にあこがれを抱くんだ。そんなもんだろ?



 でも、もしも死んだことによって召喚されたのなら、俺は幸運だったかもしれないな。なぜなら、生き返って少しの猶予が与えられたのだから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=524269771&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ