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45 魔女の話



 その街には、魔女と呼ばれる魔術師がいた。使える魔術の種類は数知れず、その威力も右に出る者はいないとされ、街の者に畏怖の念を抱かれていた。

 女は強く、だからこそ孤独だった。誰も彼女の隣に立って、同じ目線で語れる者はなく、寂しさを感じていた女は、ただひたすらに魔術を極めた。


 そんな女にも、出会いがあり、ある男と結ばれた。それは、女に守りたいものができた瞬間で、それが女の枷となった。


 いつしか、女は平和を望み、人間を襲う魔王を倒すことに決めた。そのために、勇者一行と共に、旅へ出る。


 その旅の中、女は命を落とし、後悔した。


 もっと生きたかった。もっと、あの人の傍にいたかった。


 その思いは強く、女が魔力の強い人間だったこともあり、蘇ることになった。しかし、それは5年の月日が過ぎ、闇の住人となってのことだ。


 闇の住人、ゾンビなどの類だが、女の姿は腐敗しておらず、その能力に衰えもない。ただ、聖の魔法だけは使えなくなっていた。いや、使えるのだが、本能が危険を感じ取り、使わなくなった。使えばおそらく、死ぬことになるから。


 女は、街を目指した。魔法は、使う度に威力を増し、生前より強くなる彼女の旅を阻むものはいない。半月と経たずに、女は街に着いた。


 そこで、女は絶望する。


 男は死んでいた。病だった。1年前に死んだらしい。なぜ、もっと早くに蘇らなかったのか。それが悔やまれる。


 女は、男の死を聞き、自らの死を望んだ。しかし、それは叶わない。


 闇の住人に、寿命はない。誰かに殺されなければ、死ぬことはない。だが、強くなりすぎた女を殺すことができる者などいるのか?いないだろう。


 なら、自らの手で命を絶つ?


 それは、許されない。生きたくても生きられなかった人々を目の当たりにした女には、そのようなことは絶対にできない。




 死にたくても、その方法を思いつかない女は、ある日、新しい魔王誕生の知らせを聞いた。

 魔王なら、自分を殺せるかもしれない。しかし、女は魔王のもとには行かなかった。もし、それで魔王に勝ってしまったら、誰が自分を殺してくれるのか?その答えを持っていなかったから。


 ただ、死なずに過ごす日々。そこでまた、知らせが届く。勇者が召喚されたと。


 それを聞いた時、女は自分の罪深さを知った。昔、共に旅をした勇者のことを思い出したのだ。勇者は、強い人で、弱音を吐くこともなく、仲間に優しくて気配りのできる男だった。


 その勇者が、誰もいない木陰で泣いていた。それを女は、たまたま見てしまった。

 突然、自分の住む世界から連れ出され、戦いを強要される。それが、どれだけ残酷なことか、愛する男がいる女にはわかった。


 女はまだいい。この戦いは、女にとって、大切な人を守るための戦い。なら、勇者は?



 新しい勇者への罪悪感が芽生える。

 なぜ、女は魔王を倒しに行かなかったのか。女が魔王を倒せば、勇者は召喚されずに済んだのに。


 罪悪感にさいなまれていた女だが、ただ死なずにそこに居続けた。そんな女の前に、勇者が現れる。


 身分を隠していた勇者たちだが、宮廷魔術師ロジの顔を知っていた女は、すぐに連れの若い男が勇者だと見当がつく。ただ、不思議だったのは、その勇者に何の力も感じなかったことだ。


 女は、それが気になり、勇者に近づいた。


 ジュリアという魔術師として、勇者と行動を共にするうち、本当にこの男が勇者なのかと疑問に思った。


 力がない。それは致命的だ。本当に勇者は弱かった。


 だから、女は間違った人物が召喚されたのではないかと思い、もしそうなら自分が代わりに魔王を倒すことにすると決めた。


 しかし、女は力のない勇者サロを、昔の勇者と重ねた。


 強くて優しい勇者。サロとは似ても似つかない。そう思ったのだが、仲間に慕われる姿や自分を犠牲にしても仲間を救おうとする姿は、勇者と思える。


 女は、サロを勇者と認めた。そして、認めた瞬間に救いを彼に求めた。


 でも、それは身勝手なお願いで、すぐに叶えて欲しいというわがままなものだ。



「サロが、死ななくて済むように、私が魔王を倒してあげるのと」


「この男が、生き返るように、私が魔法をかけてあげるの」


「どっちがいいかしら?」



 サロの仲間が死ぬように仕向け、こんな問いかけをする。まさに、闇の住人にふさわしい所業と言えるだろう。でも、もうずっと死なずに頑張ったのだ。だから、許して欲しい。


 女は、サロの答えがわかっていた。だから、何の心配もいらずに、ただそのお答えを待ち、微笑んだ。




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